ART BASEL HONG KONG 2019で瑛九展を開催
27日にプレビュー、明日31日まで開催されているアートバーゼル香港2019には、35の国と地域から242軒のギャラリーが参加しています。ときの忘れものは今回初めて出展し「瑛九展」を開催しています。
(因みに242軒のうち初参加は21軒。ポーラ・クーパー、ペース、ガゴシアンなど世界中の大画廊がひしめく中で、10%のニューフェイスがないと客に飽きられると主催事務局は考えているのでしょう。つまり今年出展できても来年は20軒は落とされるらしい、狭き門ですね。)
2019年3月26日 宮崎日日新聞朝刊
瑛九の生前、没後を通じて今回が海外での初個展です。
海外で作品(特にフォトデッサン)を発表することは瑛九の夢でした。
生前から没後、海外での作品発表歴を簡単にご紹介します。
●1953年3月ニューヨーク
アメリカの有力写真展「トップス・イン・フォトグラフィー展」に瑛九のフォトデッサン5点が出品されました。
<僕も遂に米国から大きな申込みがやってきました。多分父上からそのことに就てはお聞き下さったでしょう。家内が父上へ手紙を書きましたから僕からは詳しく申上げません。
僕は今度こそ僕にとって絶好のチャンスだと思ってゐます。おそらく、僕の一生のうちで最も大きな事件となるでしょう。・・・
(1953年3月9日 兄の杉田正臣宛 瑛九書簡より)>
瑛九自らアメリカに作品(フォトデッサン)を送って、実現した海外での発表と思われますが、
2015年05月23日のブログをご参照いただきたいのですが、詳細は不明です。今後の研究課題です。
生前の海外展は上記一回だけと思われます。
以下は私たちが把握している没後の海外展の記録です。
●1980年4月~8月アメリカ・カリフォルニア
現在、埼玉県立近代美術館で特別展示されている瑛九の点描大作「田園」を所蔵者の加藤南枝さんが自らアメリカに運んで企画し、カリフォルニア州の大学などいくつかの会場で「田園」の<ライトデッサン展>を開催しました。


掲載したのはそのときの加藤さんの手作りの記録集です。
クリックすると拡大されて読みやすくなります。
記録集によれば、開催日程は以下のようなものでした。
1980年4月11日~13日:加藤氏のスタジオで展示(バークリー、カリフォルニア)
1980年4月19日:KALAインスティテュートのS.C.R.A.P.フェスティバルに参加(バークリー、カリフォルニア)
1980年5月1日~4日:インターダダ’80展に参加(ユカイア、カリフォルニア)、パラスホテルで展示
1980年5月9日:アート・グリップに参加(サンフランシスコ)
1980年8月13~15日(予定):アースラ・ピーターのスタジオで三日間展示
●1986年12月9日~1987年3月2日パリ ポンピドゥー・センター
海外の大規模な美術館で瑛九の作品が展示された初めての展覧会は「前衛芸術の日本 1910-1970展 Japon des Avant-gardes 1910-1970」でした。総合コミッショナーはマルセイユの総美術館館長(展覧会準備中にポンピドゥー・センターから異動)ジェルマン・ヴィアットと美術史家高階秀爾(現在は大原美術館館長)でした。
瑛九は「赤の中の小さな白」(1937年 油彩、東京国立近代美術館所蔵)はじめ、デッサン4点、フォトデッサン8点、コラージュ2点の計15点が出品されました。


美術、写真、映像、建築、工芸、デザイン、ファッションなどの日本における1910年から1970年までの歴史的展開を、700点以上の作品、資料によって提示し、 戦前と戦後の前衛芸術の連続性と断絶を一望した画期的な展覧会でした。上掲は二分冊・厚さ4.5cmの超弩級のカタログ。
同カタログ136~137ページ

同カタログ138~139ページ。
このカタログは古本屋でも高額ですが、日本の20世紀前衛芸術研究には欠かせない基本文献です。
●2014年9月24日~29日 韓国ソウル
ソウルのCOEX HALL で開催されたアートフェア「KIAF(The 13th Korea International Art Fair)」に、ときの忘れものが出展し、瑛九の油彩1点を出品展示しました。
●2016年5月20日~5月23日 韓国・釜山
プサンのBEXCO で開催されたアートフェア「ART BUSAN 2016(INTERNATIONAL ART FAIR 2016 KOREA)」に、ときの忘れものが出展し、瑛九の油彩「手」(現在は埼玉県立近代美術館所蔵)と、吹きつけ作品(紙)の計2点を出品展示しました。
●2017年12月5日~12月10日 アメリカ・マイアミ
マイアミのOne Miami Herald Plaza で開催されたアートフェア「ART MIAMI 2017」にときの忘れものが出展し、瑛九のフォトデッサン3点を出品展示しました。
●2018年3月8日~3月11日 アメリカ・ニューヨーク
ニューヨークのPier 36 で開催されたアートフェア「art on paper 2018」にときの忘れものが出展し、瑛九のフォトデッサン3点を出品展示しました。
そして今回、初の海外個展が実現しました。
●2019年3月27日~31日 香港
香港のConvention & Exhibition Centreで開催中の「ART BASEL HONG KONG 2019」にときの忘れものが出展し「瑛九展」を開催。油彩7点、フォトデッサン10点の計17点を出品しています。
ART BASEL HONG KONG 2019ときの忘れものブースナンバー:3D27
公式サイト:https://www.artbasel.com/hong-kong/
『第28回 瑛九展』(アートバーゼル香港)図録
2019年 ときの忘れもの
B5版 36頁 作品17点、参考図版27点掲載
執筆:大谷省吾(東京国立近代美術館)
編集:尾立麗子(ときの忘れもの)
デザイン:岡本一宣デザイン事務所
翻訳:Polly Barton、勝見美生(ときの忘れもの)
<東京・駒場にある「ときの忘れもの」から瑛九の海外初個展カタログを頂戴した。気合の入ったカタログと云うのは、これですね。大谷省吾さんのテキストも素晴らしいが、図案のつながりもよろしいです。開催中のアート・バーゼル香港(会期3月27-31日)で購入チャンスを逸した人たち(ほとんど売れてしまったと聞くから)が、悔しがりながら、すみずみまでカタログを読むのは間違いない、「欲しいな、他にどんなのがあるの」と ---巻末の「ときの忘れもの」で開催された案内状の絵柄を見ながら画廊の長い道のりの先に、瑛九が望んだ果実が実っているのだと思った。通算すると今回が28回目の瑛九展と云う。このように売り物をまとまって拝見する機会は、この先もあるのだろうか。
(石原輝雄さんのブログより)>
上記の海外展の記録は、私たちが把握しているものだけです。
これ以外にも海外で作品が展示されてきたこともあるはずです。今後は専門研究者の力を借りて詳しい記録を調査したいと考えています。
●瑛九の資料・カタログ等については1月11日ブログ「瑛九を知るために」をご参照ください。
埼玉県立近代美術館では「特別展示:瑛九の部屋」で120号の大作「田園」を公開、「瑛九と光春―イメージの版/層」では山田光春の新収蔵作品とともに、40点以上の油彩、フォトデッサン、版画他を展示しています(4月14日まで)。
宮崎県立美術館でも<瑛九 -宮崎にて>で120号の大作「田園 B」などを展示しています(4月7日まで)。
●ときの忘れものは〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。
*日・月・祝日は休廊。
27日にプレビュー、明日31日まで開催されているアートバーゼル香港2019には、35の国と地域から242軒のギャラリーが参加しています。ときの忘れものは今回初めて出展し「瑛九展」を開催しています。
(因みに242軒のうち初参加は21軒。ポーラ・クーパー、ペース、ガゴシアンなど世界中の大画廊がひしめく中で、10%のニューフェイスがないと客に飽きられると主催事務局は考えているのでしょう。つまり今年出展できても来年は20軒は落とされるらしい、狭き門ですね。)


海外で作品(特にフォトデッサン)を発表することは瑛九の夢でした。
生前から没後、海外での作品発表歴を簡単にご紹介します。
●1953年3月ニューヨーク
アメリカの有力写真展「トップス・イン・フォトグラフィー展」に瑛九のフォトデッサン5点が出品されました。
<僕も遂に米国から大きな申込みがやってきました。多分父上からそのことに就てはお聞き下さったでしょう。家内が父上へ手紙を書きましたから僕からは詳しく申上げません。
僕は今度こそ僕にとって絶好のチャンスだと思ってゐます。おそらく、僕の一生のうちで最も大きな事件となるでしょう。・・・
(1953年3月9日 兄の杉田正臣宛 瑛九書簡より)>
瑛九自らアメリカに作品(フォトデッサン)を送って、実現した海外での発表と思われますが、
2015年05月23日のブログをご参照いただきたいのですが、詳細は不明です。今後の研究課題です。
生前の海外展は上記一回だけと思われます。
以下は私たちが把握している没後の海外展の記録です。
●1980年4月~8月アメリカ・カリフォルニア
現在、埼玉県立近代美術館で特別展示されている瑛九の点描大作「田園」を所蔵者の加藤南枝さんが自らアメリカに運んで企画し、カリフォルニア州の大学などいくつかの会場で「田園」の<ライトデッサン展>を開催しました。



クリックすると拡大されて読みやすくなります。
記録集によれば、開催日程は以下のようなものでした。
1980年4月11日~13日:加藤氏のスタジオで展示(バークリー、カリフォルニア)
1980年4月19日:KALAインスティテュートのS.C.R.A.P.フェスティバルに参加(バークリー、カリフォルニア)
1980年5月1日~4日:インターダダ’80展に参加(ユカイア、カリフォルニア)、パラスホテルで展示
1980年5月9日:アート・グリップに参加(サンフランシスコ)
1980年8月13~15日(予定):アースラ・ピーターのスタジオで三日間展示
●1986年12月9日~1987年3月2日パリ ポンピドゥー・センター
海外の大規模な美術館で瑛九の作品が展示された初めての展覧会は「前衛芸術の日本 1910-1970展 Japon des Avant-gardes 1910-1970」でした。総合コミッショナーはマルセイユの総美術館館長(展覧会準備中にポンピドゥー・センターから異動)ジェルマン・ヴィアットと美術史家高階秀爾(現在は大原美術館館長)でした。
瑛九は「赤の中の小さな白」(1937年 油彩、東京国立近代美術館所蔵)はじめ、デッサン4点、フォトデッサン8点、コラージュ2点の計15点が出品されました。


美術、写真、映像、建築、工芸、デザイン、ファッションなどの日本における1910年から1970年までの歴史的展開を、700点以上の作品、資料によって提示し、 戦前と戦後の前衛芸術の連続性と断絶を一望した画期的な展覧会でした。上掲は二分冊・厚さ4.5cmの超弩級のカタログ。


同カタログ138~139ページ。
このカタログは古本屋でも高額ですが、日本の20世紀前衛芸術研究には欠かせない基本文献です。
●2014年9月24日~29日 韓国ソウル
ソウルのCOEX HALL で開催されたアートフェア「KIAF(The 13th Korea International Art Fair)」に、ときの忘れものが出展し、瑛九の油彩1点を出品展示しました。
●2016年5月20日~5月23日 韓国・釜山
プサンのBEXCO で開催されたアートフェア「ART BUSAN 2016(INTERNATIONAL ART FAIR 2016 KOREA)」に、ときの忘れものが出展し、瑛九の油彩「手」(現在は埼玉県立近代美術館所蔵)と、吹きつけ作品(紙)の計2点を出品展示しました。
●2017年12月5日~12月10日 アメリカ・マイアミ
マイアミのOne Miami Herald Plaza で開催されたアートフェア「ART MIAMI 2017」にときの忘れものが出展し、瑛九のフォトデッサン3点を出品展示しました。
●2018年3月8日~3月11日 アメリカ・ニューヨーク
ニューヨークのPier 36 で開催されたアートフェア「art on paper 2018」にときの忘れものが出展し、瑛九のフォトデッサン3点を出品展示しました。
そして今回、初の海外個展が実現しました。
●2019年3月27日~31日 香港
香港のConvention & Exhibition Centreで開催中の「ART BASEL HONG KONG 2019」にときの忘れものが出展し「瑛九展」を開催。油彩7点、フォトデッサン10点の計17点を出品しています。

公式サイト:https://www.artbasel.com/hong-kong/

2019年 ときの忘れもの
B5版 36頁 作品17点、参考図版27点掲載
執筆:大谷省吾(東京国立近代美術館)
編集:尾立麗子(ときの忘れもの)
デザイン:岡本一宣デザイン事務所
翻訳:Polly Barton、勝見美生(ときの忘れもの)
<東京・駒場にある「ときの忘れもの」から瑛九の海外初個展カタログを頂戴した。気合の入ったカタログと云うのは、これですね。大谷省吾さんのテキストも素晴らしいが、図案のつながりもよろしいです。開催中のアート・バーゼル香港(会期3月27-31日)で購入チャンスを逸した人たち(ほとんど売れてしまったと聞くから)が、悔しがりながら、すみずみまでカタログを読むのは間違いない、「欲しいな、他にどんなのがあるの」と ---巻末の「ときの忘れもの」で開催された案内状の絵柄を見ながら画廊の長い道のりの先に、瑛九が望んだ果実が実っているのだと思った。通算すると今回が28回目の瑛九展と云う。このように売り物をまとまって拝見する機会は、この先もあるのだろうか。
(石原輝雄さんのブログより)>
上記の海外展の記録は、私たちが把握しているものだけです。
これ以外にも海外で作品が展示されてきたこともあるはずです。今後は専門研究者の力を借りて詳しい記録を調査したいと考えています。
●瑛九の資料・カタログ等については1月11日ブログ「瑛九を知るために」をご参照ください。
埼玉県立近代美術館では「特別展示:瑛九の部屋」で120号の大作「田園」を公開、「瑛九と光春―イメージの版/層」では山田光春の新収蔵作品とともに、40点以上の油彩、フォトデッサン、版画他を展示しています(4月14日まで)。
宮崎県立美術館でも<瑛九 -宮崎にて>で120号の大作「田園 B」などを展示しています(4月7日まで)。
●ときの忘れものは〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。阿部勤設計の新しい空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。
*日・月・祝日は休廊。
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