スタッフSの海外ネットサーフィン No.73
「The Citi exhibition Manga マンガ」
British Museum


 読者の皆様こんにちは。たまに雨こそ降るものの、基本晴れか曇りで六月も末まで来てしまい、夏の水不足が心配な、ついでに既に全力稼働が続くねぐらのエアコン代を考えると電気代の請求も心配なスタッフSこと新澤です。

 今回紹介させていただくのは日本が世界に誇る視覚文化として発展著しい「マンガ」を題材として、世界屈指の博物館である大英博物館が取り組んだ企画展、「The Citi exhibition Manga マンガ」です。ちなみに「」の中に英語と並んでマンガとカタカナが入っていますが、これは公式でもこうなっています。開催は5月23日から8月26日と、まだ2ヶ月残っています。

20190626_manga01テーマが多様であること、ダイバーシティを体現する作品であることなどから本展のキービジュアルに選ばれた、野田サトルの「ゴールデンカムイ」/ (c)Satoru Noda / SHUEISHA

 日本人にしてみれば最早日常に溶け込んで特別意識することもないマンガ文化ですが、英国では未だに幼児向けという見方が根強く、大人を購買層とするようなマンガは専門的かつマニアックな書店でなければ手に入りません。そんな英国に置いてマンガをより良く理解して親しんでもらおうと企画されたのが、今回の「The Citi exhibition Manga マンガ」となります。

20190626_manga00会場風景。正面に見えるのは今年3月に閉店した東京・神保町の書店、コミック高岡の店内写真パネル。

 展覧会は6つのエリアに分けられており、マンガについて何も知らない来場者でもマンガがどのように誕生し、発展して今日の隆盛を誇るようになったのかや、日本のマンガ独自のコマ割りや効果音等の読み取り方、他国にはあり得ない多岐に渡るジャンル(「孤独のグルメ」のような、話としては登場人物が出先で飯を食べるだけ、などという作品は恐らく日本でなければ誕生しなかっただろうし、ジャンルとして成立しなかっただろうと思います)をおおまかに紹介し、来場者に見合った作品を紹介することでマンガという分野に興味を持たせる試みがなされています。展覧会の最後には、スマートフォンで撮った写真をマンガ風に加工できるフォトスポットも用意されており、来場者に興味を持ってもらい、マンガという文化を受け入れてほしいという熱意に溢れています。

20190626_manga02制作されてから130年以上が経ち、国外での展示は今回が最後だと言われている河鍋暁斎の「新富座妖怪引幕」(早稲田大学坪内博士記念演劇博物館蔵)

 展示されている作家・作品も幅広く、マンガの先祖とも言われる「北斎漫画」の葛飾北斎、17mにも及ぶ「新富座妖怪引幕」を描いた19世紀の絵師・河鍋暁斎、マンガの神様と呼ばれる「鉄腕アトム」の手塚治虫、マンガ史を語る上では外せない「ねじ式」のつげ義春、日本のマンガを世界に広げた「DRAGON BALL」の鳥山明、最も多く発行された単一作者によるコミックシリーズとしてギネスブック記録に認定された「ONE PIECE」の尾田栄一郎などの大御所以外にも50作家、70作品あまりの原画や関連資料、商品が出展されています。
 展示の内容はマンガの原画や関連資料だけではなく、会場である大英博物館が舞台となっている、星野之宣の「宗像教授異考録・大英博物館の大冒険」は電子書籍版がダウンロード可能になっており、マンガに馴染みの薄い来場者にも地元を結び付けることによって興味を持ちやすいように工夫がされています。

20190626_manga03 同館で初となる英訳版のマンガ「Professor Munakata's British Museum Adventure」(British Museum Press)として出版された星野之宣の「宗像教授異考録・大英博物館の大冒険」。同シリーズの中でも評価が高く、ファンも多い。

 昨今では会社経営のイロハまでもがマンガ化されている日本ですが、身近なものだからこそ、その歴史や発展を改めて見る機会というのは中々ない機会です。また、マンガ初心者以外にも、「SLAM DUNK」、「バカボンド」、「リアル」で有名な井上雄彦の大判描き下ろしの原画3点が制作されるなど、マンガファンにも見所のあるイベントになっています。

 今年の夏にロンドンにおられる方は、是非お出かけになって外から見た日本文化をご体験下さい。

しんざわ ゆう

展覧会公式ページ(英語)

公式宣伝動画


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