『幸せな人生からの拾遺集』アンコール上映によせて

井戸沼紀美

8月15日、またしてもジョナス・メカスさんの映画を上映させて頂けることになりました。今年の3月に上映会を企画した際、すぐにチケットが売り切れてしまったことをうけてのアンコール上映です。作品は『幸せな人生からの拾遺集』。メカスさんの代表作というと、大体の場合、始めに名前が挙がるのは『リトアニアへの旅の追憶』や『ウォールデン』かと思いますが、私は『幸せな人生からの拾遺集』も、そのラインナップに含まれるべき作品だと感じています。68分という決して長くない作品ですが、半生を振り返るようなメカスさんのナレーションも含め、彼のこれまでの「日記映画」の集大成とも言える内容なのではないでしょうか。

加えて今回は素敵なゲストの方々もいらっしゃいます。1人目は今年5月から展覧会『DEAR JONAS MEKAS -僕たちのすきなジョナス・メカスー』を企画された岡本零さん。わたしの知る日本人の中で、近年もっとも頻繁にメカスさんに会いに行っておられる方で、当日は岡本さんがジョナス・メカスと息子のセバスチャンを映した9分の映像『A night with Jonas & Sebastian Mekas』も上映させていただきます。2人目は2013年に『第39回木村伊兵衛写真賞』を受賞された写真家の森栄喜さん。今年1月まで開催されていた展覧会『小さいながらもたしかなこと』で紹介されていた彼の映像作品の、「日記」のようなシーンの重なりやその詩情にメカスさんを思い出さずにはいられず、今回のトークをオファーしてみました。実際のところ森さんは、これまでメカスさんの映像に触れてはいないようですが、彼が過去の連載のなかで綴った文章にはハッとさせられる部分があったので、下記に(勝手に)引用してみます。


「青年が存在しているからこそ、世界にピントが生まれ、すべての色と音が立ち上がり溢れ出る。まるで初恋のように、そのあまりにも鮮やかな光景を目に焼きつけながら、痛いほどの眩しさを全身に浴びている。髪に、まつげの先に、頬に、肩に舞い落ちる桜と遠くに見える老詩人。私は彼に舞い降りて、彼の感覚と眼差しをひとり勝手に夢想する。」
森栄喜『Letter to my son(4)』2018年8月17日掲載分より
https://dokushojin.com/article.html?i=4058

今年3月の上映や展示が、1月にこの世を去ったメカスさんを弔うような機会だったと考えると、8月15日の上映は、まるで新盆のような機会だなと感じます。平日ではございますが、たくさんの方にいらしていただけましたらとても嬉しいです。

ジョナス・メカスの映画『幸せな人生 からの拾遺集』アンコール上映のご案内
期日:2019年8月15日(木)19:35開場/19:45開演
会場:アップリンク吉祥寺
料金:一般1,800円 会員1,500円
【上映後トークあり】ゲスト:森栄喜(写真家)、岡本零(『A night with Jonas & Sebastian Mekas』撮影)

ジョナス・メカス「幸せな人生からの拾遺集」(上映時間:68分)

*『肌蹴る光線 ―あたらしい映画―』は、上映機会の少ない傑作映画を発掘し、広めることを目的とした上映会です。洋邦や、制作年を問わない柔軟な選定を目指し、アップリンク渋谷、京都・誠光社を拠点に開催しています。これまでにビー・ガン(中国)、清原惟(日本)、テレンス・ナンス(アメリカ)、ジョナス・メカス(アメリカ)の作品をそれぞれ紹介してきました。
今回はその番外編として、昨年の冬に上映した際、即日チケットが売り切れてしまったジョナス・メカスの映画『幸せな人生からの拾遺集』を1日限り、アンコール上映します。当日は2012年にNYでジョナス・メカスと息子のセバスチャン・メカスを映した9分の映像『A night with Jonas & Sebastian Mekas』も同時上映。アフタートークゲストに写真家の森栄喜さんと『A night with Jonas & Sebastian Mekas』撮影者の岡本零さんをお迎えします。
1月に逝去したジョナス・メカスにとって新盆となる8月15日、吉祥寺でお待ちしています。
上映作品①
『幸せな人生からの拾遺集』(2012年/68分/英語/DVD上映)*日本語字幕無し・字幕紙資料配布
上映作品②
『A night with Jonas & Sebastian Mekas』(2012年/9分/英語/DVD上映)
トーク出演
森栄喜(写真家)、岡本零(『A night with Jonas & Sebastian Mekas』撮影)

企画者:井戸沼紀美
1992年生まれ、都内在住。明治学院大学卒。これまでに手掛けたイベントに『ジョナス・メカスとその日々をみつめて』(2014年)、『ジョナス・メカス写真展+上映会』(2015年)がある。
協力:メカス日本日記の会

*画廊亭主敬白
メカスさんが亡くなってなんだか心細い日が続いているのですが、各地で上映会や展覧会が頻繁に開かれています。
先日、知り合いの編集者Fさんからいただいたメールに思いがけずもリトアニアのメカス展の案内写真が添付されていました。
ビリニュスのメカス展<6月17日~21日までリトアニアのビリニュスに行っていました。(中略)美しく修復された旧市街を歩いていたときにメカス展の広告塔を見つけ、思わず写真を撮りました。帰国の日だったので、ギャラリーには行けませんでしたが。国が落ち着いたため、この数年、渡米したリトアニア人たちが戻ってきているそうで、70代のオペラ歌手や60代のピアニストにも会いました。きっとメカスも故郷に戻りたかったことでしょうね。(Fさんより)>

●本日のお勧め作品はジョナス・メカスです。
ジョナスメカス_22_John_is_filming_Tina_ジョナス・メカス
John is filming Tina, his cousin. Montauk, Aug. 1972
1972年 (Printed in 1999)
Type-Cプリント
イメージサイズ:49.3x32.5cm
シートサイズ :50.7x40.7cm
Ed.10  サインあり
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