<迷走写真館>一枚の写真に目を凝らす 第81回
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4人の少年が大きな岩の前に立っている。
みんなの頭の高さがそろっているが、右から2番目の子どもは腰を屈めているので、それを伸ばせばほかの子どもよりも頭ひとつ分くらい大きそうだ。
顔つきも彼がいちばん大人っぽく、年長らしいと想像する。
左端の少年の両手は、この年長の彼の腕にかけられ、彼の身を前に押し出そうとしている。
右端にも、おなじように片手を腕にかけている少年がいるが、その子の右手に握られているのがナイフのように見えてドキッとする。
足をV字に開いて舌なめずりをし、視線をカメラに向けて挑発的な表情をしているさまがなにやら不穏だ。
3人の後ろ側には、顔は笑っているが、手は下さず、傍観している子どもがいる。
いずれにせよ4人とも裸足なのが目をひく。
きっと外に出るときは履物を履くという習慣がなく、またその必要も感じていないのだろう。
うち3人はズボン姿で、年長の少年だけが腰布を巻いている。
柄はチェックで、シャツもおなじくチェック模様。
ほかの子どもたちの、ありあわせのものを身に着けたような服装とは一線を画しているし、横分けにしたヘアースタイルもおしゃれな印象で、ちょっと色気づいてきた年頃なのかもしれない。
年長の彼は3人にからかわれているのか、そそのかされているのか、
どちらでもあるようだが、ともかくちょっと腰が引けてしまうような状況下にいるのである。
あっちみろよ、やだよ、いいじゃない、はずかしいよ。
カメラマンに協力して彼を説得しようとする年少の3人。
レンズの目が自分たちではなく、年長の彼にむけられているのを彼らはわかっている。
もちろん本人だってそれを知っているのだ。
岩がごつごつして、荒れ地のようだ。
右手に木が生えているが、梢には葉がいちまいもない。
あたり一面が霧に覆われ、日の光が薄い高地のように感じる。
ニンゲン臭さが浄化された、生き物の気配が途絶えたような風景。
そこに裸足でばらばらと現れた少年たちは、稚拙で、本質的な駆け引きを繰り広げる。
それぞれの振る舞いに、ニンゲンの性格の基本パターンが見てとれる。
大竹昭子(おおたけあきこ)
●掲載写真のタイトル、クレジット、技法 (撮影データ)
「サバイバルキッズ」 ©黒田康夫
1977年 インド・アッサム州・チェラパンジー ニコンF2・20mmレンズ・トライX400フィルム
●作家紹介
黒田康夫(くろだ・やすお)
1948年岩手県盛岡市生まれ 1970年立教大学経済学部卒業
主な写真展として
1982年「孤独園 インドを巡りて」新宿ニコンサロン
1996年 写真集「智慧の海-インド・チベット写真紀行 」/日貿出版社
1999年「MUMBAI」エッグギャラリー
2004年「メディアと干渉作用」再春館ギャラリー
2019年「Selfie Performance」表参道画廊
●展覧会のご紹介
黒田康夫写真展 <1969年~1998年>のアジアを遡る
会期:2019年10月8日(火)~13日(日)
AM9:00-PM5:00(入場4:30まで)
初日PM1:00から 最終日PM3:00まで 休館日なし
会場:青梅市立美術館1階市民ギャラリー
〒198-0085 青梅市滝ノ上町1346-1 JR青梅駅より徒歩8分
連絡先:080-2208-8392(黒田)
●本日のお勧め作品は植田正治です。
植田正治「無題」
1978年頃
ゼラチンシルバープリント、木製パネル
イメージサイズ: 52.0×80.0cm
パネルサイズ: 61.7×89.9cm
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。

4人の少年が大きな岩の前に立っている。
みんなの頭の高さがそろっているが、右から2番目の子どもは腰を屈めているので、それを伸ばせばほかの子どもよりも頭ひとつ分くらい大きそうだ。
顔つきも彼がいちばん大人っぽく、年長らしいと想像する。
左端の少年の両手は、この年長の彼の腕にかけられ、彼の身を前に押し出そうとしている。
右端にも、おなじように片手を腕にかけている少年がいるが、その子の右手に握られているのがナイフのように見えてドキッとする。
足をV字に開いて舌なめずりをし、視線をカメラに向けて挑発的な表情をしているさまがなにやら不穏だ。
3人の後ろ側には、顔は笑っているが、手は下さず、傍観している子どもがいる。
いずれにせよ4人とも裸足なのが目をひく。
きっと外に出るときは履物を履くという習慣がなく、またその必要も感じていないのだろう。
うち3人はズボン姿で、年長の少年だけが腰布を巻いている。
柄はチェックで、シャツもおなじくチェック模様。
ほかの子どもたちの、ありあわせのものを身に着けたような服装とは一線を画しているし、横分けにしたヘアースタイルもおしゃれな印象で、ちょっと色気づいてきた年頃なのかもしれない。
年長の彼は3人にからかわれているのか、そそのかされているのか、
どちらでもあるようだが、ともかくちょっと腰が引けてしまうような状況下にいるのである。
あっちみろよ、やだよ、いいじゃない、はずかしいよ。
カメラマンに協力して彼を説得しようとする年少の3人。
レンズの目が自分たちではなく、年長の彼にむけられているのを彼らはわかっている。
もちろん本人だってそれを知っているのだ。
岩がごつごつして、荒れ地のようだ。
右手に木が生えているが、梢には葉がいちまいもない。
あたり一面が霧に覆われ、日の光が薄い高地のように感じる。
ニンゲン臭さが浄化された、生き物の気配が途絶えたような風景。
そこに裸足でばらばらと現れた少年たちは、稚拙で、本質的な駆け引きを繰り広げる。
それぞれの振る舞いに、ニンゲンの性格の基本パターンが見てとれる。
大竹昭子(おおたけあきこ)
●掲載写真のタイトル、クレジット、技法 (撮影データ)
「サバイバルキッズ」 ©黒田康夫
1977年 インド・アッサム州・チェラパンジー ニコンF2・20mmレンズ・トライX400フィルム
●作家紹介
黒田康夫(くろだ・やすお)
1948年岩手県盛岡市生まれ 1970年立教大学経済学部卒業
主な写真展として
1982年「孤独園 インドを巡りて」新宿ニコンサロン
1996年 写真集「智慧の海-インド・チベット写真紀行 」/日貿出版社
1999年「MUMBAI」エッグギャラリー
2004年「メディアと干渉作用」再春館ギャラリー
2019年「Selfie Performance」表参道画廊
●展覧会のご紹介
黒田康夫写真展 <1969年~1998年>のアジアを遡る

AM9:00-PM5:00(入場4:30まで)
初日PM1:00から 最終日PM3:00まで 休館日なし
会場:青梅市立美術館1階市民ギャラリー
〒198-0085 青梅市滝ノ上町1346-1 JR青梅駅より徒歩8分
連絡先:080-2208-8392(黒田)
●本日のお勧め作品は植田正治です。

1978年頃
ゼラチンシルバープリント、木製パネル
イメージサイズ: 52.0×80.0cm
パネルサイズ: 61.7×89.9cm
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●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
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