尾崎森平のエッセイ「長いこんにちは」第2回
祖父の版画作品の他にもう一つ、強く影響を受けたものがある。それはテレビゲーム『ドラゴンクエスト・シリーズ』だ(正確にいえばスーパーファミコン版「ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁」です)。
ご存知『ドラゴンクエスト・シリーズ』は日本のRPGゲームの代名詞のような作品で、勇者(主人公)が魔王に支配された世界に平和をもたらすため、魔王を倒すべく旅をしながら並み居るモンスターと闘ってはレベルを上げていき、最後に宿敵の魔王との決戦を迎える…というようなゲーム。第一作目がファミリーコンピュータのソフトとして1986年に発売されて以来今日に至るまで、常に少年たちに夢を与え続けているゲームだ。子供のおねだりに折れ、しぶしぶ買い与えた親の世代には、きっとテレビゲームなど子供だましと映ったに違いない。しかし、僕ら子どもはそう単純にこのゲームを捉えてはいなかったと。少なくとも、僕はそうだった。
このゲームは“もうひとつの現実”で、つまり二重生活のようなものだった。ランドセルを下ろし、テレビの前に座り、カセットの底にフーフーと息吹きかける呪い(まじない)をし(これ、今の子ども達には分からないかもなぁ…)電源を入れる。すると目の前には“もうひとつの現実”が現れる。そこには世界を救うべく勇者としての僕がいる。僕は町々を訪ね、武器や防具を新調し、モンスターと戦っては人々を救い、経験を積み、着実に魔王の住処へと歩みを進めていくという日常があった。あの荒いドットの世界の空気の匂いを嗅ぐことさえできたし、無言のキャラクター達の嘆きや笑い声を聞くことができた。それだけ真に入れ込んでいたのだ。
当時のゲームは今日のゲームとは比較にならないほどデータの容量が小さく、そういった制限の中での制作側の創意工夫も僕にとっては魅力だった。例えば同じ絵柄のモンスターでも、物語を進めていくと色と名前を変えて別のモンスターとして再登場したり、町やお城もゲーム内の世界が夜になると夜の色に変わり、昼間の世界とは違った姿となったり。そう、それはまさに僕のルーツである版画と同じで、色版の色を変えてカラーバリエーションを増やす発想と同じであり、後に僕がクロード・モネの絵を好きになるのも、モニター画面のように絵の表面をフラットに塗るのも、同じ絵柄で昼夜と色違いで作るのも、この幼い頃のデジタル体験によるものだったんだなぁと、ゲームをすっかりやらなくなった今になってやっと気がつく僕も、容量が小さいようです。
あ、そうだ!!大事なお知らせがありました。
このブログが掲載される今月25日(金)から、東京は中央区新富町にあるRED AND BLUE GALLERYで個展を開催します。詳しくは下記のギャラリーのホームページにアクセスしてください。
お待ち申し上げております。
http://www.redandblue.jp/
作品名:田舎の生活
制作年:2012年
サイズ:606×910×32mm
素材:パネル、キャンバス、アクリル絵の具
作品名:田舎の生活(夜)
制作年:2012年
サイズ:606×910×32mm
素材:パネル、キャンバス、アクリル絵の具
(おざき しんぺい)
■尾崎森平 Shinpey OZAKI
1987年仙台市生まれ 。岩手大学教育学部芸術文化課程造形コース卒業。現代の東北の景色から立ち現れる神話や歴史的事象との共振を描く。2016年「VOCA 2016 現代美術の展望ー新しい平面の作家たち 」大原美術館賞 。平成27年度 岩手県美術選奨。2019年4月ときの忘れもの「Tricolore2019―中村潤・尾崎森平・谷川桐子展」に出品。
ホームページ https://shinpeywarhol.wixsite.com/ozaki-shinpey
◆尾崎森平のエッセイ「長いこんにちは」は毎月25日の更新です。
●今日のお勧め作品は、尾崎森平です。
尾崎森平 Shinpey OZAKI
《昨日の世界》
2018年
アクリル、キャンバス、パネル
サイズ:144.5x163.5cm
サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
祖父の版画作品の他にもう一つ、強く影響を受けたものがある。それはテレビゲーム『ドラゴンクエスト・シリーズ』だ(正確にいえばスーパーファミコン版「ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁」です)。
ご存知『ドラゴンクエスト・シリーズ』は日本のRPGゲームの代名詞のような作品で、勇者(主人公)が魔王に支配された世界に平和をもたらすため、魔王を倒すべく旅をしながら並み居るモンスターと闘ってはレベルを上げていき、最後に宿敵の魔王との決戦を迎える…というようなゲーム。第一作目がファミリーコンピュータのソフトとして1986年に発売されて以来今日に至るまで、常に少年たちに夢を与え続けているゲームだ。子供のおねだりに折れ、しぶしぶ買い与えた親の世代には、きっとテレビゲームなど子供だましと映ったに違いない。しかし、僕ら子どもはそう単純にこのゲームを捉えてはいなかったと。少なくとも、僕はそうだった。
このゲームは“もうひとつの現実”で、つまり二重生活のようなものだった。ランドセルを下ろし、テレビの前に座り、カセットの底にフーフーと息吹きかける呪い(まじない)をし(これ、今の子ども達には分からないかもなぁ…)電源を入れる。すると目の前には“もうひとつの現実”が現れる。そこには世界を救うべく勇者としての僕がいる。僕は町々を訪ね、武器や防具を新調し、モンスターと戦っては人々を救い、経験を積み、着実に魔王の住処へと歩みを進めていくという日常があった。あの荒いドットの世界の空気の匂いを嗅ぐことさえできたし、無言のキャラクター達の嘆きや笑い声を聞くことができた。それだけ真に入れ込んでいたのだ。
当時のゲームは今日のゲームとは比較にならないほどデータの容量が小さく、そういった制限の中での制作側の創意工夫も僕にとっては魅力だった。例えば同じ絵柄のモンスターでも、物語を進めていくと色と名前を変えて別のモンスターとして再登場したり、町やお城もゲーム内の世界が夜になると夜の色に変わり、昼間の世界とは違った姿となったり。そう、それはまさに僕のルーツである版画と同じで、色版の色を変えてカラーバリエーションを増やす発想と同じであり、後に僕がクロード・モネの絵を好きになるのも、モニター画面のように絵の表面をフラットに塗るのも、同じ絵柄で昼夜と色違いで作るのも、この幼い頃のデジタル体験によるものだったんだなぁと、ゲームをすっかりやらなくなった今になってやっと気がつく僕も、容量が小さいようです。
あ、そうだ!!大事なお知らせがありました。
このブログが掲載される今月25日(金)から、東京は中央区新富町にあるRED AND BLUE GALLERYで個展を開催します。詳しくは下記のギャラリーのホームページにアクセスしてください。
お待ち申し上げております。
http://www.redandblue.jp/

制作年:2012年
サイズ:606×910×32mm
素材:パネル、キャンバス、アクリル絵の具

制作年:2012年
サイズ:606×910×32mm
素材:パネル、キャンバス、アクリル絵の具
(おざき しんぺい)
■尾崎森平 Shinpey OZAKI
1987年仙台市生まれ 。岩手大学教育学部芸術文化課程造形コース卒業。現代の東北の景色から立ち現れる神話や歴史的事象との共振を描く。2016年「VOCA 2016 現代美術の展望ー新しい平面の作家たち 」大原美術館賞 。平成27年度 岩手県美術選奨。2019年4月ときの忘れもの「Tricolore2019―中村潤・尾崎森平・谷川桐子展」に出品。
ホームページ https://shinpeywarhol.wixsite.com/ozaki-shinpey
◆尾崎森平のエッセイ「長いこんにちは」は毎月25日の更新です。
●今日のお勧め作品は、尾崎森平です。

《昨日の世界》
2018年
アクリル、キャンバス、パネル
サイズ:144.5x163.5cm
サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
コメント