佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」第34回

関西滞在中に「アジア」あるいは「インド」について考えたこと

10月後半は大阪、関西にしばらく滞在していた。Under 35 Architects exhibition 2019という若手建築家の展覧会に出展するためである。

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Under 35 Architects exhibition 2019での展示風景。内容の詳細については以下リンクを。
https://korogaro.net/archives/1411
https://korogaro.net/archives/1408

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展示に関する解説文。数年の自分が関わったいくつかのプロジェクトにある文脈を定めることを試みている。


搬入出を自分でやらなければならず、途中東京に帰ってくるのも煩わしかったので、そのまま関西に滞在しようと決めたら、いくつかのトークやイベントに誘っていただき、結果として普段、福島や東京にいるよりもはるかに多くの人と会うことができた。
そうして訪れた場所の一つが、滋賀県立大学である。10月23日、同大学の川井操先生に呼んでいただき、氏の担当講座「アジア建築史」と、学生による企画の「DANWASHITSU」という講演イベントにて話をさせていただいた。
アジア建築史の講座では、「20世紀初頭のアジアについて」と題して、R・タゴールと岡倉天心それぞれの活動を中心に、学校というある種の共同体(講義では「New Community」と言い表した)が持ち得た創作表現に関する可能性について話した。

20191107佐藤研吾4「アジア建築史」講座にて。(写真は川井操さんから)

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講義冒頭のスライド。話をする時には毎回、講義に関連するであろう何らかの言葉を掲げみることにしている。話をする度にその言葉はアップデートしている。


そんな学校という人の集まり方に関心を向けたのは、およそ5年前にインド・バローダの建築学校「Vadodara Design Academy」にてデザイン・ワークショップを開催したことが始まりであった。
「はるばるインドの学校に自分は行っているのか」と自問自答を続けるも、もちろん答えめいた考えはなかなか出てこない。そんな時に知ったのが、ベンガルで小さな私塾を始めていた詩人R・タゴールと、日本美術院設立前にインドにやってきて『The Ideals of the East』を著した岡倉天心の存在であった。彼らの活動の一端を学び、倣いながら、自分が(彼らの時代からおよそ100年が経ったあとの)インドで何をすれば良いのだろうかと思案した。当然その答えは出てこない。が、引き続き暗中模索しているところである。
一年か二年前頃から、いくつかのところに呼んでもらって自分の話、講義をする機会が増えた。テーマを与えられることもあれば、自分が自由に話す主題を決めるときもあったが、必ずと言ってよいほど毎回、R・タゴールと岡倉天心の活動には触れるようにしていた。彼らの活動をどのように言い表すことができるか、そして彼らの現代的な意義(創作に関する可能性)を示すことを毎回のトークで試みていたのである。
一年前の9月には京都国立近代美術館で開催された「バウハウスへの応答」展の関連企画として、話をする機会をいただき、ドイツ・ワイマールのバウハウスと、タゴールが創設したインド・シャンティニケタンの学校の共時性を紹介した。
講演会「シャンティニケタンから建築とデザインを考え、学び、作る」

また、そこにさらに岡倉天心の日本美術院と、宮沢賢治の羅須地人協会を並べることで、20世紀初頭(第一次世界大戦前後の)の、世界同時多発的に教育運動=New Communityが要請される状況を概観しようとした。が、到底うまく描写できたとは言い難く、今後も引き続き考究が必要なのだが、一方で、それらいくつかの「学校」の先例への応答はやはり、「学校」をする、作ることによってなされるべきという考えも持っている。極小規模ではあるが、そんな試みを先月、福島県大玉村で開催した「荒れ地のなかスタジオ」などで続けている。
「荒れ地のなかスタジオ / In-Field Studio」は、おそらく次回は来年、再びインドで開催するだろう。(今年末は東京での喫茶店「喫茶野ざらし」の開業に向けた準備、そして来年始は福島大玉村の自宅兼事務所の整備をやっている予定なので、おそらくはそれ以降に。)
先の大阪の展覧会「U-35展」、そして今月11月から開催される東京のGAギャラリーで開催される「PLOT展」に出展している、インド・コルカタの住宅プロジェクト「G先生の家計画」の実施も含めて、インドでの活動を続けていきたいと思っている。

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東京のGA Galleryにて今月から開催される展覧会「PLOT 設計のプロセス」展に出展しています。
[GA JAPAN 2019 PLOT 設計のプロセス展]
会期:2019年11月2日(土)~2020年2月2日(日)
休館期間:2019年12月28日(土)~2020年1月7日(火)
休館期間を除き、会期中無休
開館時間:12:00-18:30
入場料:600円[前売券,団体10名以上=500円]
場所:GAギャラリー 〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷3-12-14
最寄駅:東京メトロ副都心線北参道駅徒歩2分/JR代々木駅徒歩10分
さとう けんご

佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。

◆佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。

●本日のお勧め作品は、佐藤研吾 です。
sato-30佐藤研吾 Kengo SATO
《かたちの構築試行》
2018年
印画紙
15.5×15.5cm
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