ジョナス・メカス展(予約制/WEB展)
会期=2020年8月28日[金]―9月12日[土]


※アポイント制にてご来廊いただける日時は、火曜~土曜の平日12:00~18:00となります。
※観覧をご希望の方は前日までにメールにてご予約ください。

ジョナス・メカスさんがニューヨークの自宅で亡くなったのは昨2019年1月23日、前年暮れに96歳のお誕生日を迎えたばかりでした。
不意に訪れた死去の報に私たちは茫然としました。
なにかぽっかり胸の中に穴があいたような、もうあの暖かな笑顔に会えないと思うと心細さがつのりました。

激動の20世紀を生き抜いたメカスさんは1922年12月24日、人口わずか100人ほどの寒村に生まれました。
故郷リトアニアは、ソ連、ドイツに相次いで占領され、メカスさん自身も強制収容所そして難民キャンプを転々とする生活を経て1949年、アメリカに亡命します。リトアニアでは詩人そして新聞や文学雑誌の編集に携わっていましたが、渡米後、言葉も通じないブルックリンで機械工や清掃員などの仕事をする傍ら、一台の16ミリ・カメラを手にします。自分の住む場所やリトアニア系移民の日々の生活を日記のように撮り始めます。

日常的な記録の断片を集積し、再構成する独特のスタイル「日記映画」の創始者であり、独特の言葉の響きをもつナレーションや、選択された音楽の効果、それらが相まって醸し出されるメランコリックでノスタルジックな映像は、新しい映像表現を求めていた若い人々に大きな影響を与えます。
戦後アメリカのインディペンデント映画や実験映画をリードし、それらの上映の場をつくることに尽力します。さらにそれらの収集・保存を目的とした「アンソロジー・フィルム・アーカイブス」設立に情熱を傾け、亡くなるまで館長として奮闘されました。

私たちがメカスさんに巡り合い、初めて日本にお招きしたのは1983年ですが、以来、展覧会、上映会、版画のエディションなど、メカス芸術の紹介に努めてきました。

版画センタージョナス・メカス展原美術館01PICT00141983年12月1日「アメリカ現代版画と写真展ージョナス・メカスと26人の仲間たちー」原美術館オープニングにて。左から、靉嘔、綿貫不二夫、木下哲夫、ジョナス・メカス。

初来日の折の版画制作がきっかけで、メカスさんが1980年代以降、精力的にとりくんだのが自身が撮影した16mmフィルムから数コマを選び、写真として焼きつける「フローズン・フィルム・フレームズ 静止した映画」と呼ばれる仕事です。

今回追悼の心をこめて展示するのは初期版画と、写真作品の約20点です。
案内状に掲載した「this side of paradise」シリーズの元になった映像は、1960年代末から70年代始め、ジョン・F・ケネディの未亡人であったジャッキー・ケネディに請われ、子息のジョン・ジュニアやキャロラインと従姉弟たちに映画を教えていた時期に撮影されたフィルムです。
悲劇的な父親の死からまだ間もないころ、父親のいない暮らしに慣れるまでの、心の準備が少しでも楽にできるよう、子供たちが何かすることをみつけてやりたいと考えたジャッキーが、子供たちに美術史を教えていたピーター・ビアードを通じて、メカスさんに頼んだのでした。
アンディ・ウォーホルから借り受けたモントークの古い家で、ジャッキーとその家族、メカスさん、週末にはウォーホルやビアードが加わり、皆で過ごした夏の日々の、ある時間、ある断片が作品には切り取られています。

 「それは友と共に、生きて今ここにあることの幸せと歓びを、いくたびもくりかえし感ずることのできた夏の日々。楽園の小さなかけらにも譬えられる日々だった。」   ジョナス・メカス

久しぶりのメカス作品の展示ですが、コロナウイルス禍の日々、ご無理のない範囲でご覧いただけたら幸いです。WEB展では、メカスさんと親交が深い木下哲夫さん(翻訳家、メカス日本日記の会メンバー)にインタビューをした映像を公開しますので、どうぞお楽しみください。

案内状掲載の作品。サウスハンプトンを散歩中、岩の上で休んでいたジョン・ケネディ Jr.をジョー・ダレッサンドロが背負って歩く写真。
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《Dallesandro (star of several of Warhol movies... carries John Kennedy jr., South Hampton beach. 1971》
1972(Printed in 1999)
Type-C Print
イメージサイズ49.1x32.4cm
シートサイズ50.7x40.7cm
Ed.10  Signed



1983年の初来日時に現代版画センターとジョナス・メカス展実行委員会との共同エディションとして、シルクスクリーン7点を制作しました。
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《セルフ・ポートレイト
ラコステ(サド侯爵の城)の日蔭にて》
1983年
シルクスクリーン(刷り:岡部徳三)
37.0×51.0cm
Ed.75  signed

同じくシルクスクリーン。
15
《ウーナ・メカス5才 猫とホリス(母)の前で ヴァイオリンの稽古 1979》
1983年
シルクスクリーン(刷り:岡部徳三)
53.0×37.5cm
Ed.75  Signed



チバクロームプリントの作品。チバクロームは、1963年にイギリスの写真用品メーカー、イルフォード社によって開発され、「チバクロームペーパー」の名で商品化された印画紙です。発売以来、その鮮やかな発色と色の耐久性で、たちまち人気商品となりましたが、2004年に破産しチバクロームペーパーは製造中止、その技法も過去のものとなってしまいました。
04
《ひまわり》
2009年
CIBA print
35.4×27.5cm
signed


同じくチバクロームで、今回のWEB展VTRでインタビューさせていただくメカス日本日記の会の木下哲夫さんが被写体となっています。
06
《木下哲夫》
2009年
CIBA print
35.4×27.5cm
signed

モントークで過ごすアンディー・ウォーホルの写真。
08
《Andy Warhol at Montauk, 1971》
2000年
C-print
30.5×20.2cm
Ed.10  signed

2005年10月4回目の来日、ときの忘れものの個展オープニングにて。
2005年メカス展
2005年10月サインするメカス青山時代のときの忘れもの二階でサインするメカスさん。


◆ときの忘れものでは「ジョナス・メカス展」を開催します(アポイント制/WEB展)。
会期=2020年8月28日[金]―9月12日[土]*日・月・祝日休廊
mekas dm 3
昨2019年1月23日に96歳で亡くなったジョナス・メカスさんが1980年代から精力的に取り組んだ<フローズン・フィルム・フレームズ=静止した映画>シリーズに焦点をあて写真、版画など20点を展観します。
※アポイント制にてご来廊いただける日時は、火曜~土曜の平日12:00~18:00となります。
※観覧をご希望の方は前日までにメールにてご予約ください。

●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。