今年の美術界の話題の最たるものは2月にオープンしたアーティゾン美術館でしょう。
2015年5月から休館していたブリヂストン美術館が新館名で再開し、開館記念展「Steps Ahead: Recent Acquisitions 新収蔵作品展示」は度肝を抜く規模とレベルでした。

若い頃、都内にいくつもまだ美術館が存在していなかった時代、青木繁、セザンヌ、モネなどの実物を見られるのはブリヂストン美術館だけでした。
いわば日本の洋画の黎明期と、印象派の名品を集めた亭主にとっては教科書のような美術館でした。
松本竣介「運河風景」今回の展示の第一室「藤島武二の《東洋振り》と日本、西洋の近代絵画」では懐かしいブリヂストン時代の名作群に再会できました。
出口の右壁に青木繁の「海の幸」(重文)、左壁には松本竣介の「運河風景」。

第二室以降は打って変わってアーティゾン美術館の新たな名作群。
いつから、密かに(?)20世紀美術の第一級の名作をこんなにも集めていたのかと、ただただ驚くばかりでした。
クレーの名品を一挙に20数点蒐集だけでも凄いのですが、ジャン・メッツァンジェ、カンディンスキー、マチス、ミロ、ヘレン・フランケンサーラ―、エレン・デ・クーニング、マルセル・デュシャンジョセフ・コーネル、イサム・ノグチ、ジャン・デュビュッフェ、ヴォルス、ザオ・ウーキー、アレクサンダー・コールダー、モーリス・エスターブ、マン・レイなどなど、これでもかというほどの新収蔵作品の数々。
日本の現代美術もハンパではありません。田中信太郎、瀧口修造、福島秀子、山口勝弘元永定正、村上三郎、オノサト・トシノブ、ためいきの出るような名作ばかりです。
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ここかしこに置かれた倉俣史朗の椅子もお見逃しなく(多くは実際に座れます)。
IMG_6226倉俣史朗《ガラスのベンチ》(1986)

アーティゾンの新収蔵作品展の会期は9月5日まで、残り4日です。未見の方、ぜひお見逃しなきように。

松本竣介はアーティゾン美術館で1943年の「運河風景」が出品されていますが、茨城県筑西市のしもだて美術館でも1944年の「りんご」が展示されていると知ったのはつい最近でした。

「板橋区立美術館・豊島区所蔵 池袋モンパルナス―画家たちの交差点―」展
会期:2021年8月7日(土)~9月26日(日)
※緊急事態宣言が出ているため8月20日(金)から9月12日(日)まで臨時休館中です
会場:しもだて美術館
〒308-0031 筑西市丙372番地 
電話番号:0296-23-1601 ファックス番号:0296-23-1604
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展覧会概要
8月7日から、一般財団法人地域創造の助成による令和2・3年度市町村立美術館活性化事業 第21回共同巡回展として、「板橋区立美術館・豊島区所蔵 池袋モンパルナス―画家たちの交差点―」を開催します。
1920年代以降、池袋界隈には日本各地から上京した芸術家たちが集い、いくつかの「アトリエ村」と呼ばれる一画が形成されていました。そこでは、芸術家同士の交流が盛んに行われ、切磋琢磨しながら新たなアートシーンが生み出されていきました。他にはない独自の雰囲気を醸し出していたその様子は、パリの芸術家の街になぞらえて「池袋モンパルナス」と呼ばれています。
本展では、池袋モンパルナスに関連した1920年代から1940年代を象徴する作品を生み出した画家をはじめ、当時流行していたフォービスムやシュルレアリスム絵画を試みる画家、戦後にこの地で制作した画家など、会派を越えた様々な画家を紹介します。
また、このアトリエ村の住人でもあった、筑西市出身で文化勲章を受章した洋画家 森田茂の当館所蔵作品も紹介します。
展覧会は瀬戸市美術館、酒田市美術館に巡回します。
瀬戸市美術館 2021年10月2日(土)~11月14日(日)
酒田市美術館 2021年11月20日(土)~2022年1月10日(月・祝)

8月7日開催予定だった「アドバイザーによるギャラリートーク」は、感染症拡大のため中止となりましたが弘中智子(板橋区立美術館)先生のトークが予定されていました。
こちらのブログもお読みください。
ブログ2018年3月23日『弘中智子のエッセイ「東京⇆沖縄 池袋モンパルナスとニシムイ美術村」について』

ときの忘れものの夏休みが終わり、いよいよ本日から秋の営業開始です。
英気を養ったスタッフたちがさっそく取り組むのは明日3日から始まる「生誕110年 第30回瑛九展 フォト・デッサンと型紙」です。
今回は久しぶりにカタログも刊行しますので、どうぞお楽しみください。

●本日のお勧めは松本竣介難波田龍起です。
matsumoto-33松本竣介 Shunsuke MATSUMOTO
《人物(W)》
紙にペン、水彩
イメージサイズ: 22.0x16.0cm
シートサイズ:26.8x18.2cm

nambata-56難波田龍起 Tatsuoki NAMBATA
《作品》
1995.8.25
油彩、紙、ペン
16.7x12.2cm
サインあり
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください


●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会Web展)を開催し、美術書の編集事務所としても活動しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。