小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」第52回

何回か前のこちらのブログで『ブックセラーズ・ダイアリー』という本を取り上げました。それを読んだときの忘れもの亭主、綿貫さんが「面白かった!ああいうのをこのブログでも書いて欲しい!」と無茶なことを言うので、あのクオリティーは出せないまでも(だって最初の数ページ読めばわかる、鋭くお客も身内切って捨てる如何にもイギリス流のブラックユーモアですから。)自分なりの日記のようなものを書いていきたいと思います。
この一ヶ月間「どんなふうにしようかなぁ」と考えていたのですが、あれこれ考えた結論は「実際に日記を書くしかないな」というものでした。
ですが、生まれてこの方、日記というものは書こうと思ったことがない。3日続いたことはないのです。学校の絵日記も最終日にまとめてやっていたクチなので、本当に続くかどうか。いや、しかもそれをブログで公開せよ、とのこと。綿貫さん、なんて罪つくりなお願いをしてくれたんだ…。
そもそも私の日常は、日記にするほど、代わり映えのする毎日でもなく、日々、本を買って磨いて出すだけ。本のことなら多少いうことはあるものの、ほかについてはやってみなけりゃわからない。結果えんえんと同じようなことを言ってばかりいる、メリーゴーランドのような日記になってしまいそうです。いやメリーゴーランドは華やかで楽しそうだから、ちょっと違うかも。なんだろう回転寿司?ときどき店主の気まぐれで2皿くらい流れてくる回転寿司のようなブログになってしまいそうです。ごめんなさい。
さて、実際の日記スタイルは次回からにして、今回は先月やらせてもらった面白い買取の話を。というより古本屋の業(ごう)のような話です。
あれは暇な土曜日のことでした。「今日は人が来ないなぁ。」とレジでぼんやりしていると、電話が鳴りました。出ると先日少し持ち込みで買取させてもらったお客さん。持ってきていただいたいろんな本の中に一冊、明治の本が入っていたのです。「こんな古い本が出てきたらまたご連絡ください」と言っていたのを覚えてくださっていて、「押入れの納戸の奥を開けたら古いものが出てきた」とのこと。今日が暇だったのはこのためだったか!と神に感謝し、いそいそと店を閉めて出かけていきました。(この日閉店中にご来店いただいた方、ごめんなさい。)
行ってみると、お引越しの準備中ということであらゆるところにものが積み上げられてんやわんやのご様子。出してきてもらったものを見ていると、ご家族の方が「もう何もないと思うんですが、物が多くて。」とおっしゃいます。
「もし良ければ中を見てもいいですか?」と聞くと「いや、いいですけど…。ほんと大変だと思いますよ?」とのこと。いやいや、こちらはそこに本があれば、できることはなんでもします。
実際に押し入れの奥の奥に入り込み、埃まみれになりながら、本、古写真などなどを「おお!」とか「いいっすねー!」と、アドレナリンを放出しながら、テンション高くいろんなものを掘り出していく私。それを見ながらだんだん引いていくおうちの皆さん。「いや、何がいいのかわかりません…」と言いながらも、その後、各部屋を見せてくださいました。
結果その後、数日にわたって伺い、本のみならず、食器なども買取させていただきました。(以外に、ピピッとくるものはなんでも書います。)
「こういう何が出てくるかわからない家の買取がいちばん楽しいんですよ!」と真っ黒になった手と髪で言い放った、若干失礼なコメントに「え、ええ…」と頷いてくれたおうちの方々。感謝申し上げます。
来月からは、こういう古本屋の「日常」と、これまでのような若干の本の紹介を、日記風に書いていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。
(おくに たかし)
●小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」は毎月5日の更新です。
■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。
●宮崎県立美術館で開催中の「生誕110年記念 瑛九ーQ Ei 表現のつばさ」は本日が最終日です。お近くの方、ぜひお出かけください。

会期=2021年10月23日~12月5日
瑛九
*毎月17日のブログで、担当学芸員の小林美紀さんのエッセイ「宮崎の瑛九」連載中
*11月6日のブログで尾立麗子による内覧会のレポートを掲載しました。
●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会(Web展)を開催し、美術書の編集事務所としても活動しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。

何回か前のこちらのブログで『ブックセラーズ・ダイアリー』という本を取り上げました。それを読んだときの忘れもの亭主、綿貫さんが「面白かった!ああいうのをこのブログでも書いて欲しい!」と無茶なことを言うので、あのクオリティーは出せないまでも(だって最初の数ページ読めばわかる、鋭くお客も身内切って捨てる如何にもイギリス流のブラックユーモアですから。)自分なりの日記のようなものを書いていきたいと思います。
この一ヶ月間「どんなふうにしようかなぁ」と考えていたのですが、あれこれ考えた結論は「実際に日記を書くしかないな」というものでした。
ですが、生まれてこの方、日記というものは書こうと思ったことがない。3日続いたことはないのです。学校の絵日記も最終日にまとめてやっていたクチなので、本当に続くかどうか。いや、しかもそれをブログで公開せよ、とのこと。綿貫さん、なんて罪つくりなお願いをしてくれたんだ…。
そもそも私の日常は、日記にするほど、代わり映えのする毎日でもなく、日々、本を買って磨いて出すだけ。本のことなら多少いうことはあるものの、ほかについてはやってみなけりゃわからない。結果えんえんと同じようなことを言ってばかりいる、メリーゴーランドのような日記になってしまいそうです。いやメリーゴーランドは華やかで楽しそうだから、ちょっと違うかも。なんだろう回転寿司?ときどき店主の気まぐれで2皿くらい流れてくる回転寿司のようなブログになってしまいそうです。ごめんなさい。
さて、実際の日記スタイルは次回からにして、今回は先月やらせてもらった面白い買取の話を。というより古本屋の業(ごう)のような話です。
あれは暇な土曜日のことでした。「今日は人が来ないなぁ。」とレジでぼんやりしていると、電話が鳴りました。出ると先日少し持ち込みで買取させてもらったお客さん。持ってきていただいたいろんな本の中に一冊、明治の本が入っていたのです。「こんな古い本が出てきたらまたご連絡ください」と言っていたのを覚えてくださっていて、「押入れの納戸の奥を開けたら古いものが出てきた」とのこと。今日が暇だったのはこのためだったか!と神に感謝し、いそいそと店を閉めて出かけていきました。(この日閉店中にご来店いただいた方、ごめんなさい。)
行ってみると、お引越しの準備中ということであらゆるところにものが積み上げられてんやわんやのご様子。出してきてもらったものを見ていると、ご家族の方が「もう何もないと思うんですが、物が多くて。」とおっしゃいます。
「もし良ければ中を見てもいいですか?」と聞くと「いや、いいですけど…。ほんと大変だと思いますよ?」とのこと。いやいや、こちらはそこに本があれば、できることはなんでもします。
実際に押し入れの奥の奥に入り込み、埃まみれになりながら、本、古写真などなどを「おお!」とか「いいっすねー!」と、アドレナリンを放出しながら、テンション高くいろんなものを掘り出していく私。それを見ながらだんだん引いていくおうちの皆さん。「いや、何がいいのかわかりません…」と言いながらも、その後、各部屋を見せてくださいました。
結果その後、数日にわたって伺い、本のみならず、食器なども買取させていただきました。(以外に、ピピッとくるものはなんでも書います。)
「こういう何が出てくるかわからない家の買取がいちばん楽しいんですよ!」と真っ黒になった手と髪で言い放った、若干失礼なコメントに「え、ええ…」と頷いてくれたおうちの方々。感謝申し上げます。
来月からは、こういう古本屋の「日常」と、これまでのような若干の本の紹介を、日記風に書いていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。
(おくに たかし)
●小国貴司のエッセイ「かけだし本屋・駒込日記」は毎月5日の更新です。
■小国貴司 Takashi OKUNI
「BOOKS青いカバ」店主。学生時代より古書に親しみ、大手書店チェーンに入社後、店長や本店での仕入れ・イベント企画に携わる。書店退職後、新刊・古書を扱う書店「BOOKS青いカバ」を、文京区本駒込にて開業。
●宮崎県立美術館で開催中の「生誕110年記念 瑛九ーQ Ei 表現のつばさ」は本日が最終日です。お近くの方、ぜひお出かけください。

会期=2021年10月23日~12月5日
瑛九
*毎月17日のブログで、担当学芸員の小林美紀さんのエッセイ「宮崎の瑛九」連載中
*11月6日のブログで尾立麗子による内覧会のレポートを掲載しました。
●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会(Web展)を開催し、美術書の編集事務所としても活動しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
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