東京都美術館の企画展「フィン・ユールとデンマークの椅子」の内覧会に行ってきました。
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本展企画の学芸員・小林明子さん、東海大学名誉教授の織田憲嗣さん(学術協力)、京都工芸繊維大学助教の多田羅景太さん(学術協力)の展示解説にも参加しました。
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東京都美術館は2010年に改修を行った際、館内にフィン・ユールなど北欧の椅子や照明を取り入れたそうです。言われてみれば、館内の照明も珍しい形をしており、ロビーの椅子や監視員の椅子までもお洒落な北欧の家具でした。なんと贅沢な備品なのでしょう。それがきっかけとなり、本展が企画されたそうです。
本展出品の椅子などの家具は、椅子の研究家でもある織田憲嗣さんが半世紀に亘って集めた織田コレクションです。現在、織田コレクションは北海道東川町に保管されており、町内の文化施設「せんとぴゅあ」で一部展示されているそうです。
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フィン・ユールの椅子は「彫刻のような椅子」と評されており、美しい曲線と有機的なフォルムが印象的で、色の配色も北欧らしく落ち着きがあり、名品ばかりでため息がでます。
その他、ラケットチェアやハープチェアなど、ユーモアのあるデンマークの椅子もありました。
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デンマークの椅子やテーブルに触れたり座ったりする体験コーナーがありました。私はハンス・ウェグナーの《Yチェア》を愛用していますが、珍しい椅子に座る機会はめったにないと、座り心地を確かめました。フィン・ユールの《チーフテンチェア》は座面が広く角度があり、背もたれも大きいので、椅子に包まれているような感覚で自然と体を委ねてしまいます。
デンマークは世界一幸せな国と言われているのは、このような豊かなデザインの家具が一般的に普及していることも関係しているのかもしれませんね。一度デンマークなど北欧を訪ねてみたいものです。

帰りに、国立西洋美術館に寄ってきました。
国立西洋美術館は2020年10月から2022年4月の約1年半休館し、前庭の復原工事を行ないました。
今まで、通りからは建物のほとんどが見えなかった記憶ですが、生垣などがとりはらわれ、今まであったことすら気付かなかった オーギュスト・ロダンの《考える人》も通りから見えて、開けた印象を受けました。S__91742230
常設展では、大成建設コレクションで「調和にむかって:ル・コルビュジエ芸術の第二次マシン・エイジ ― 大成建設コレクションより」が開催されています。
上野に行かれる方は、東京都美術館と国立西洋美術館をはしごすることをお勧めします。
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おだち れいこ

●「フィン・ユールとデンマークの椅子
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フィン・ユールとデンマークの椅子
会期=2022年7月23日(土)~10月9日(日)
会場=東京都美術館 ギャラリーA・B・C
北欧の国デンマークは、デザイン大国として知られます。
とりわけ1940年代から 60年代にかけて、デンマークでは歴史に残る優れた家具が生み出されました。
デンマークのデザイナーのなかでも、フィン・ユール(1912-1989)は、ひときわ美しい家具をデザインしたことで知られます。優雅な曲線を特徴とするその椅子は、「彫刻のような椅子」とも評されます。当時の家具デザイナーたちの多くが家具の専門学科や家具工房の出身であるのに対し、フィン・ユールは美術史家になることを夢見ながらもアカデミーで建築を学び、建物の設計やインテリアデザインにたずさわるなかで家具デザインを手がけました。身体を抽象化したようなやわらかなフォルムは座って心地よいばかりで なく、彫刻作品にも似た静謐な存在感を放ち、建築や美術、あるいは日用品と濃密に響き合いながら、空間の調和を生み出す役割をも果たしているようです。
本展は、デンマークの家具デザインの歴史と変遷をたどり、その豊かな作例が誕生した背景を探るとともに、モダンでありながら身体に心地よくなじむフィン・ユールのデザインの魅力に迫る試みです。椅子のデザインにはじまり、理想の空間を具現した自邸の設計や、住居や店舗、オフィスのインテリアデザインまで、フィン・ユールの幅広い仕事を紹介します。椅子という、あらゆる日常を支える身近な家具にあらためて光を当てる本展が、新しい生活を模索する私たちが快適に生きるためのヒントを見つける機会となれば幸いです。

●「調和にむかって:ル・コルビュジエ芸術の第二次マシン・エイジ ― 大成建設コレクションより
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■大成建設コレクションで「調和にむかって:ル・コルビュジエ芸術の第二次マシン・エイジ ― 大成建設コレクションより
会期:2022年4月9日(土)~9月19日(月・祝)
会場:国立西洋美術館 新館1階 第1展示室
本展はスイスに生まれフランスで活躍した建築家にして画家、ル・コルビュジエ(1887-1965)の晩年の絵画と素描をご紹介します。それらは、彼の初期とは全く異なる新たな環境から生まれた新しい芸術でした。第二次世界大戦による荒廃やその後も続いた冷戦による脅威から、機械万能主義を謳った戦前の彼の芸術傾向、いわゆる第一次マシン・エイジ(機械時代)は再検証を迫られ、ル・コルビュジエはモダニストとしての信条を貫きながらも、人間の感情や精神的必要性に寄り添いながら社会の要求に答えていかねばならないと考えるようになりました。以前は単に幾何学的な動物とみなされた人間の生活に、詩的感興を吹き込まんとしたのです。彼が国立西洋美術館の本館(1959年開館)を設計したのは、まさにそうした知的環境においてであり、彼はこの建物を通じて新たな時代にふさわしい新たな理想を表現しようとしました。
そうした考え方に基づき、ル・コルビュジエの絵画も初期のピュリスム様式から大きく異なる方向へ展開します。1930年代半ばより、彼は骨や貝殻、そして人体など、自然界の形象と厳格な幾何学的構図の融合を目指し、開いた手や複数の顔を持つ牡牛などのモチーフがちりばめられ構成される独自の象徴世界を構築しました。それは第二次マシン・エイジ(機械時代)と呼びうるもので、人間と機械、感情と合理性、そして芸術と科学の調和を目指したのです。とりわけ開いた手は、与える/受け取るという相互関係を象徴するもので、この時代の彼の制作のエンブレムとなりました。
本展示は、世界有数のル・コルビュジエのコレクションを所蔵する大成建設株式会社からの寄託作品を中心に、《牡牛XVIII》のような大作と、制作の過程を示す約10点の素描による合計約20点(展示替含め約30点)から構成されます。この芸術家の円熟期の絵画制作の展開を辿ることができる、貴重な機会となるでしょう。なお素描作品は会期半ば(6/27)で展示替えをします。本展はロバート・ヴォイチュツケ(国立西洋美術館リサーチ・フェロー)が企画しました。

●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。阿部勤が設計した個人住宅だった空間で企画展の開催、版画のエディション、美術書の編集等を行なっています(WEBマガジン コラージ2017年12月号18~24頁の特集参照)。
JR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊