ときの忘れものでは昨年末12月24日のクリスマス・イブ(メカスさんのお誕生日)に
【ジョナス・メカスの生誕100年記念上映会】を開催しました。
あまり知られていないプログラムを用意したのですが、皆さんに楽しんでいただけたようです。

さて15回目を迎える「恵比寿映像祭2023」が、2023年年2月3日(金)~2月19日(日)の15日間(※月曜を除く)、東京都写真美術にて開催されます。

私たちが日常目にする映像技術である、写真、映画、ヴィデオやアニメーション。これら映像表現のテクノロジーは、19世紀以降、大きく発展し、今日では高解像度のイメージや、より長時間の映像を処理することができるようになりました。映像技術は、より高精細で、より情報量の多いイメージを作ることを目指して発展してきたと言っても良いかもしれません。
技術には、一般化されて広く共有され、定着していくという側面がありますが、共有されるための規範は、誰が、いつ、どのように決めるのでしょうか?今当たり前に見ている高精細の映像が、100年後にどのようなリアリティとして受け止められるのかは誰も予測できません。歴史を振り返ったとき、技術が思いがけない要素として働いていた、ということを発見することがあります。例えば、高解像度の映像の中に、あえて手作りの感触を含めることで、臨場感を高めるなど、時にアーティストの表現は、そうした技術の対話の中から生み出され、思いもよらない発見をする可能性を持っています。
恵比寿映像祭2023では、「テクノロジー?」というテーマを通して、多種多様な映像表現の実践を検証し、アートと技術との対話の可能性を考察していきます。(恵比寿映像祭2023 HPより引用)

恵比寿映像祭のプログラムの一つとして、3日間、ジョナス・メカスのスペシャル上映会が開催されます。
[ジョナス・メカス生誕百年記念 スペシャル上映会]
ジョナス・メカス―3章のフィルム・プログラム
日時:2月4日(土)15:00- | Q&A:イネサ・ブラシスケ、ルーカス・ ブラシスキス[日英逐次通訳付]
2月10日(金)15:00-
2月19日(日)11:00-
会場:東京都写真美術館 1F ホール
料金:1,500円(前売) 1,800円(当日)
※詳細は「チケット」ページをご覧ください。

Sc_1a_-Award-Presentation-to-Andy-Warhol-_dummyジョナス・メカス《アンディ・ウォーホルの授賞式》1964年/12分
東京都写真美術館蔵

スペシャル上映の詳細は以下の通りです。

ジョナス・メカスの映画作品に新しい角度からアプローチし、彼の映画制作をアメリカの前衛芸術の広い文脈の中で明らかにすることを目的とし、3つの章を設けた。メカスの知的、組織的、 そして経営的な活動、さらに芸術としての映画を見る新しい習慣を育むことへの献身、および、映画制作者に刺激を与えた多様なコンテクストを紹介する。
ゲスト・プログラマー:イネサ・ブラシスケ、ルーカス・ ブラシスキス

第1章 歴史を記述すること、歴史へ記述されること:ニューヨーク前衛の記録とポートレイト
ジョナス・メカスの映画用語は自伝的で、フィクションとドキュメンタリーの両方を結び付け、個人的な経験と彼の時代の社会文化的風景を融合させている。アンディ・ウォーホルのスタジオ「ファクトリー」、アメリカの劇団「リヴィング・シアター」、フルクサスの創始者ジョージ・マチューナスなど、戦後芸術の最も重要な出来事やニューヨークの前衛芸術シーンの伝説的な人物を記録した作品は、非常に大きな歴史的価値を持つ。それだけでなく、メカスは、前衛映画の基盤の創設者、批評家、オーガナイザーという立場で、彼自身も戦後アメリカのアートシーンの中心人物となり、仲間の映画作家たちのカメラに収められた。
ジョナス・メカス《アンディ・ウォーホルの授賞式》 Jonas MEKAS, Award Presentation to Andy Warhol
1964年/12分/サウンド
東京都写真美術館蔵

ジョナス・メカス《ゼフィーロ・トルナー、あるいはジョージ・マチューナス(フルクサス)の生活風景》 Jonas MEKAS, Zefiro Torna, or, Scenes from the life of George Maciunas (Fluxus)
1992年/35分/英語[日本語字幕付]/配給:The Film-Makers’ Cooperative

ストーム・デ・ハーシュ《Newsreel: Jonas in the Brig》 Storm de HIRSCH, Newsreel: Jonas in the Brig
1964年/5分/サイレント/配給:The Film-Makers’ Cooperative

ギデオン・バックマン《Jonas》 Gideon BACHMANN, Jonas
1968年/32分/英語 [日本語字幕付]

第2章 カメラを持った遊歩者(フラヌール)
1965年、ジョナス・メカスがフルクサスのメンバーである日本人アーティスト、塩見允枝子に送ったカードには、「ジョナス・メカスは立ち止まっていた」と書かれている。メカスは塩見のインストラクション(指示)を用いた世界的なイヴェントシリーズ〈空間的な詩(Spatial Poem)〉(1965-75)に招待され参加した。このシリーズのふたつ目のイヴェント《Direction Event》(1965)で、塩見は1965年10月15日午後10時(グリニッジ標準時)に、人々が移動したり、向かう方向を同時に記録しようとした。前述のカードに記されたメカスの回答には短い「静止」が含まれているが、むしろ、彼の作品を特徴づけるのは、静止よりも旅、分散、接続性であり、まさに彼の生活の一形態であった。
メカスの人生とキャリアは地理的な移動によって大きく特徴づけられている。メカスは、おそらく最も有名な作品群において、強制移住というトラウマ的な体験に由来する実存的状態としてのホームレス(行き場のない状態)の感覚を捉え、ニューヨークのリトアニア移民のコミュニティを筆頭に、避難民の生活を撮影したのである。移動性は彼の映画作品全体にとって、実に不可欠なものだった。メカスと共に日々、街中や都市、大陸を移動した彼の16mmフィルムカメラ「Bolex」によるイメージは、数年後に一本の日記映画としてまとめられていく。そしてメカスは旅をした。友人を訪ねるためだけでなく、経営やキュレーターとしての役割を果たすという、あまり表に出ない理由のためでもあった。そして旅というテーマが浮き彫りにされ、つまり〈旅の歌〉と呼ばれる一連の紀行映画の題材となったのである。

ジョナス・メカス《Williamsburg, Brooklyn》 Jonas MEKAS, Williamsburg, Brooklyn,
2003年/15分/サイレント/配給:The Film-Makers’ Cooperative

ジョナス・メカス《カシス》 Jonas MEKAS, Cassis
1966年/4分30秒/サウンド/配給:The Film-Makers’ Cooperative

ジョナス・メカス《旅の歌》 Jonas MEKAS, Travel Songs
1967-1981年/25分/英語[日本語字幕付]|配給:The Film-Makers’ Cooperative

ジョナス・メカス《Song of Avignon》 Jonas MEKAS, Song of Avignon
1998年/5分/英語[日本語字幕付]

ジョナス・メカス《富士山への道すがら、わたしが見たものは…》 Jonas MEKAS, On My Way to Fujiyama, I Saw...
1996年/25分/英語

第3章 時間とまなざしの動き:マリー・メンケン監督作品特集上映
戦後のニューヨークの前衛映画界は、ほとんどが男性優位の環境だった。1970年代にアンソロジー・フィルム・アーカイヴズが企画した「エッセンシャル・シネマ・レパートリー」には、女性監督の作品はわずかだという悪評もある。しかし、ジョナス・メカスが新天地のニューヨークで出会ったマヤ・デレンやシャーリー・クラーク、ストーム・デ・ハーシュといった、すでにアメリカの前衛映画界で監督やオーガナイザーとして活躍していた優れた女性作家たちは、いずれも彼の職業人生と映画的感性に影響を残すことになる。なかでも、画家から映画監督に転身したマリー・メンケンはNYアンダーグラウンドの伝説的存在で、メカスら多くの前衛映画作家に多大な影響を与えた人物である。1962年、チャールズ劇場でメンケンの作品を観たあと、メカスは『ヴィレッジ・ヴォイス』のコラムで以下のように述べた。「現実主義者は建物の正面、輪郭、街、木しか見ない。メンケンはそこに時間とまなざしの動きを見ている。彼女は木に心の動きを見る。彼女はそれらを通して、またそれらを超えて見ている。彼女は見たものすべてを視覚的に記憶しているのだ」。
マリー・メンケン《Glimpses of the Garden》 Marie MENKEN, Glimpses of the Garden
1957年/4分/サウンド/配給:The Film-Makers’ Cooperative

マリー・メンケン《Notebook》 Marie MENKEN, Notebook
1962年/10分/サイレント/配給:The Film-Makers’ Cooperative

マリー・メンケン《Go Go Go》 Marie MENKEN, Go Go Go
1964年/サイレント/11分30秒/配給:The Film-Makers’ Cooperative

マリー・メンケン《ライツ》 Marie MENKEN, Lights
1966年/サイレント/6分30秒/配給:The Film-Makers’ Cooperative

マリー・メンケン《Sidewalks》 Marie MENKEN, Sidewalks
1966年/サイレント/6分30秒/配給:The Film-Makers’ Cooperative

ジョナス・メカス《サーカス・ノート》 Jonas MEKAS, Notes on the Circus
1966年/12分/サウンド/配給:The Film-Makers’ Cooperative

メカス映画を知っている方も知らない方も、是非この機会にご覧ください。
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●本日のお勧め作品はジョナス・メカスです。
メカス「京子」シルク
ジョナス・メカス Jonas MEKAS
京子の7才の誕生日(オノ・ヨーコの愛娘) 1970
1983年
シルクスクリーン(刷り:岡部徳三)
36.5×24.0cm
Ed.75 サインあり
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2005年メカス展リトアニア大使館員
ジョナス・メカスさん(左)
2005年10月ときの忘れものの個展オープニングにて。

DSCF09626002005年 青山のときの忘れものにて

DSCF51326002006年 NYのメカスさんのご自宅にて