「東京大学教養学部美術博物館」改造計画案をめぐって
(『群像』2023年7月号掲載「特報」を抜粋・一部修正)
田中純
磯崎新は一九七九年に東京大学教養学部美術博物館(現・東京大学大学院総合文化研究科・教養学部 駒場博物館)で、《空洞としての美術館I・II》や《ヴィッラ・シリーズ》をはじめとするシルク・スクリーン作品による個展を開催している(ギャラリー「ときの忘れもの」のサイトでオープニングの模様などの記録が公開されている)。
この展覧会に際し、磯崎は同博物館の改造計画案を構想し、オリジナル図面三枚(俯瞰図および一階と二階の平面図)を同博物館に寄贈しており、個展でもそれらが展示された。このうちの俯瞰図と一階平面図は現在も駒場博物館に所蔵されていることが先頃判明している。現代版画センターの協力を得てこの磯崎展を企画した横山正・東京大学名誉教授によれば、個展のあとに磯崎アトリエから要請があり、二階平面図のみはアトリエに返却されたとのことである。
磯崎による計画案では、一階に美術博物館収蔵品の小展示室および収蔵庫が並び、二階中央部は広い展示室とされている。俯瞰図によれば、その奥のさらに半階上がったレヴェルに、マルセル・デュシャン《彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも(通称・大ガラス)》レプリカ(東京ヴァージョン)の専用展示室がある。この東京ヴァージョンは横山氏が中心になって一九七九年当時に制作中であり、翌年完成することになるものである。磯崎は壁面に大きな開口部をひとつだけ設け、オリジナルを所蔵するフィラデルフィア美術館における《大ガラス》の展示(当時)に近づけている。全展示空間の中央を貫く軸線上の二箇所には立方体フレームが配置され、磯崎による建築的署名になっている。
これらの図面は一九七九年の磯崎展以外の場で展示されたことも、雑誌に掲載されたこともないものと思われる。上記「ときの忘れもの」サイトの写真でも、何枚かの背景にわずかにその一部が確認できるのみである。そのため、磯崎の「間」展を基軸とする下記のシンポジウム開催にあたり、きわめて限定された日時ではあるが、駒場博物館の許可・協力を得て、オリジナル図面二枚が会場付近に展示される予定である。
・磯崎新「東京大学教養学部美術博物館」改造計画案・オリジナル図面展示
日時:2023年7月8日(土)13~17 時
場所:東京大学駒場キャンパス・21KOMCEE East 地下 K011 入り口付近通路
・関連シンポジウム
「「間」のポエティクスをめぐって」(表象文化論学会大会シンポジウム)
日時:2023年7月8日(土)13 時 30 分~16 時 15 分
場所:東京大学駒場キャンパス・21KOMCEE East 地下 K011
パネリスト:松井茂(情報科学芸術大学院大学・基調講演)、石井美保(京都大学)、原瑠璃彦(静岡大学)、田中純(東京大学・司会およびコメンテイター)
無料・事前予約不要
問い合わせ先:表象文化論学会第 17 回大会実行委員会
E-mail kikaku@repre.org
URL http://www.repre.org/
*下記画像は1979年6月東京大学教養学部美術博物館で開催された「磯崎新展」に展示された改造計画案・オリジナル図面3点です。

同展に東京大学教養学部美術博物館改造計画案が3点展示された
なお、この展示のために無料で配付する資料集が作成されます。
内容(予定)
・磯崎新「東京大学教養学部美術博物館」改造計画案・俯瞰図および1階平面図
東京大学大学院総合文化研究科・教養学部 駒場博物館蔵。
・田中純「「東京大学教養学部美術博物館」改造計画案をめぐって」
・個展開催に寄せた磯崎新の自筆テクスト
「磯崎新展」(東京大学教養学部美術博物館、1979 年)パンフレットより。
・「磯崎新展」オープニング(1979 年 6 月 5 日)写真
ギャラリー「ときの忘れもの」サイトより。
http://blog.livedoor.jp/tokinowasuremono/archives/53136953.html
・横山正「磯崎新展と東大の美術博物館」
「Print Communication 版画センターニュース」、No.49(1979 年 8 月 1 号)、現代版画セン
ター、1979 年、2-6 頁。
*画廊亭主敬白
雑誌『群像』で磯崎新論(シン・イソザキろん)を連載されている東大の田中純先生から、先日以下のようなメールをいただきました。
<貴ギャラリーのサイトにオープニングの記録写真などが公開されている、1979年、駒場美術博物館における磯崎新展に関連し、お願いがあってメールを差し上げます。
この展覧会に際して、同博物館の改造計画案が磯崎さんによって制作され、図面が3枚寄贈されました。企画者の横山正先生によると、2階平面図のみは磯崎アトリエのご希望で返却なさったとのことです。残り2枚は現・駒場博物館に所蔵されていることが判明し、その後、あらたに額装するなどして、展示可能な状態になりました。
ほとんど未公開のこの2枚の図面については、7月に東京大学駒場キャンパスで開催される表象文化論学会大会における「間」展に関わるシンポジウムと合わせて、一日限定(7/8午後)ではありますが、その会場付近に展示したいと思います。(中略)
今回の展示にあたっては、経緯を紹介する簡単な配付資料を作成する予定です。貴サイトにも画像のある横山先生執筆の記事(この号のバックナンバーを所有しております)のほか、1979年の個展に際して磯崎さんが執筆したテクストなどが中心になります。(以下略)>
亭主の趣味で昔の記録をボツボツとブログにあげているのですが、たまに読んでくださる方もおり、思わぬ展開となることもあり、嬉しい限りです。
このたび東大に保存されていた磯崎先生のドローイングが実に44年ぶりに一日限定で展示されます。
44年前の「磯崎新展」
会期:1979年6月5日~7月6日
会場:東京駒場・東京大学教養学部美術博物館
主催:東京大学教養学部美術博物館
協力:現代版画センター

~~~~~~~~~
●ジョナス・メカスの映像作品27点を収録した8枚組のボックスセット「JONAS MEKAS : DIARIES, NOTES & SKETCHES VOL. 1-8 (Blu-Ray版/DVD版)」を販売しています。
映像フォーマット:Blu-Ray、リージョンフリー/DVD PAL、リージョンフリー
各作品の撮影形式:16mmフィルム、ビデオ
制作年:1963~2014年
合計再生時間:1,262分
価格等については、3月4日ブログをご参照ください。
●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。阿部勤が設計した個人住宅だった空間で企画展の開催、版画のエディション、美術書の編集等を行なっています(WEBマガジン コラージ2017年12月号18~24頁の特集参照)。
JR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊
(『群像』2023年7月号掲載「特報」を抜粋・一部修正)
田中純
磯崎新は一九七九年に東京大学教養学部美術博物館(現・東京大学大学院総合文化研究科・教養学部 駒場博物館)で、《空洞としての美術館I・II》や《ヴィッラ・シリーズ》をはじめとするシルク・スクリーン作品による個展を開催している(ギャラリー「ときの忘れもの」のサイトでオープニングの模様などの記録が公開されている)。
この展覧会に際し、磯崎は同博物館の改造計画案を構想し、オリジナル図面三枚(俯瞰図および一階と二階の平面図)を同博物館に寄贈しており、個展でもそれらが展示された。このうちの俯瞰図と一階平面図は現在も駒場博物館に所蔵されていることが先頃判明している。現代版画センターの協力を得てこの磯崎展を企画した横山正・東京大学名誉教授によれば、個展のあとに磯崎アトリエから要請があり、二階平面図のみはアトリエに返却されたとのことである。
磯崎による計画案では、一階に美術博物館収蔵品の小展示室および収蔵庫が並び、二階中央部は広い展示室とされている。俯瞰図によれば、その奥のさらに半階上がったレヴェルに、マルセル・デュシャン《彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも(通称・大ガラス)》レプリカ(東京ヴァージョン)の専用展示室がある。この東京ヴァージョンは横山氏が中心になって一九七九年当時に制作中であり、翌年完成することになるものである。磯崎は壁面に大きな開口部をひとつだけ設け、オリジナルを所蔵するフィラデルフィア美術館における《大ガラス》の展示(当時)に近づけている。全展示空間の中央を貫く軸線上の二箇所には立方体フレームが配置され、磯崎による建築的署名になっている。
これらの図面は一九七九年の磯崎展以外の場で展示されたことも、雑誌に掲載されたこともないものと思われる。上記「ときの忘れもの」サイトの写真でも、何枚かの背景にわずかにその一部が確認できるのみである。そのため、磯崎の「間」展を基軸とする下記のシンポジウム開催にあたり、きわめて限定された日時ではあるが、駒場博物館の許可・協力を得て、オリジナル図面二枚が会場付近に展示される予定である。
・磯崎新「東京大学教養学部美術博物館」改造計画案・オリジナル図面展示
日時:2023年7月8日(土)13~17 時
場所:東京大学駒場キャンパス・21KOMCEE East 地下 K011 入り口付近通路
・関連シンポジウム
「「間」のポエティクスをめぐって」(表象文化論学会大会シンポジウム)
日時:2023年7月8日(土)13 時 30 分~16 時 15 分
場所:東京大学駒場キャンパス・21KOMCEE East 地下 K011
パネリスト:松井茂(情報科学芸術大学院大学・基調講演)、石井美保(京都大学)、原瑠璃彦(静岡大学)、田中純(東京大学・司会およびコメンテイター)
無料・事前予約不要
問い合わせ先:表象文化論学会第 17 回大会実行委員会
E-mail kikaku@repre.org
URL http://www.repre.org/
*下記画像は1979年6月東京大学教養学部美術博物館で開催された「磯崎新展」に展示された改造計画案・オリジナル図面3点です。


なお、この展示のために無料で配付する資料集が作成されます。
内容(予定)
・磯崎新「東京大学教養学部美術博物館」改造計画案・俯瞰図および1階平面図
東京大学大学院総合文化研究科・教養学部 駒場博物館蔵。
・田中純「「東京大学教養学部美術博物館」改造計画案をめぐって」
・個展開催に寄せた磯崎新の自筆テクスト
「磯崎新展」(東京大学教養学部美術博物館、1979 年)パンフレットより。
・「磯崎新展」オープニング(1979 年 6 月 5 日)写真
ギャラリー「ときの忘れもの」サイトより。
http://blog.livedoor.jp/tokinowasuremono/archives/53136953.html
・横山正「磯崎新展と東大の美術博物館」
「Print Communication 版画センターニュース」、No.49(1979 年 8 月 1 号)、現代版画セン
ター、1979 年、2-6 頁。
*画廊亭主敬白
雑誌『群像』で磯崎新論(シン・イソザキろん)を連載されている東大の田中純先生から、先日以下のようなメールをいただきました。
<貴ギャラリーのサイトにオープニングの記録写真などが公開されている、1979年、駒場美術博物館における磯崎新展に関連し、お願いがあってメールを差し上げます。
この展覧会に際して、同博物館の改造計画案が磯崎さんによって制作され、図面が3枚寄贈されました。企画者の横山正先生によると、2階平面図のみは磯崎アトリエのご希望で返却なさったとのことです。残り2枚は現・駒場博物館に所蔵されていることが判明し、その後、あらたに額装するなどして、展示可能な状態になりました。
ほとんど未公開のこの2枚の図面については、7月に東京大学駒場キャンパスで開催される表象文化論学会大会における「間」展に関わるシンポジウムと合わせて、一日限定(7/8午後)ではありますが、その会場付近に展示したいと思います。(中略)
今回の展示にあたっては、経緯を紹介する簡単な配付資料を作成する予定です。貴サイトにも画像のある横山先生執筆の記事(この号のバックナンバーを所有しております)のほか、1979年の個展に際して磯崎さんが執筆したテクストなどが中心になります。(以下略)>
亭主の趣味で昔の記録をボツボツとブログにあげているのですが、たまに読んでくださる方もおり、思わぬ展開となることもあり、嬉しい限りです。
このたび東大に保存されていた磯崎先生のドローイングが実に44年ぶりに一日限定で展示されます。
44年前の「磯崎新展」
会期:1979年6月5日~7月6日
会場:東京駒場・東京大学教養学部美術博物館
主催:東京大学教養学部美術博物館
協力:現代版画センター

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●ジョナス・メカスの映像作品27点を収録した8枚組のボックスセット「JONAS MEKAS : DIARIES, NOTES & SKETCHES VOL. 1-8 (Blu-Ray版/DVD版)」を販売しています。

各作品の撮影形式:16mmフィルム、ビデオ
制作年:1963~2014年
合計再生時間:1,262分
価格等については、3月4日ブログをご参照ください。
●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。阿部勤が設計した個人住宅だった空間で企画展の開催、版画のエディション、美術書の編集等を行なっています(WEBマガジン コラージ2017年12月号18~24頁の特集参照)。
JR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊
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