5月12日に京都市立芸術大学で開催されたコンサート「変異するノーテーション」に出席するため、京都に行ってきました。
久しぶりの京都だったので、京セラ美術館、ロームシアター京都(前川國男建築)、ギャラリーも2軒まわって(中村潤展と、柳澤紀子先生と野田哲也先生ら四人展)、本日のメインイベントのコンサートへ。
公演前に塩見允枝子先生のお姿が見えたので声をかけると、丁寧に新作について解説いただきました。居合わせた作曲家の女性が「塩見さん筆が早いですよね、行き詰まることないんですか?」と聞くと「行き詰まるときは大体根本に原因があるの。全部捨ててやり直す。」とさらっと仰っており、潔くてかっこ良かったです。
演奏会のタイトルにある「ノーテーション」は記譜法という意味で、今回のコンサートは一般的な五線譜だけでなく、概念的な図形楽譜や、テキストの指示書のような楽譜を演奏するというものでした。
これは橋爪皓佐さんが主宰するアンサンブルの「ロゼッタ」が毎回テーマを設けて作品公募した作品を上演するという公演の一環で、世界各地にノーテーションというテーマで作品を公募したところ、57曲の応募があり、その中から、フルクサスの代表作家・塩見允枝子先生、作曲家の寺内大輔さんはじめ、ロゼッタや野営地らによって7作品を選出したそうです。塩見先生と寺内さんの作品合わせて計9演目が14時~17時の3時間におよび演奏され、大コンサートでした。会場には今回演奏されたさまざまなスタイルの楽譜も展示されていました。

第一部
1. shape(dream) M.A. Tisesnga
2. Attraction for Four Milan Gustar
3. Sorry! Sorry! Sorry! Sorry! John Franek
第二部
1. 訥 矢野かおる
2. No Time Too Loose Francesc Llompart
3. ルールズ 寺内大輔
第3部
1. Open Daria Baiocchi
2. Erosion Study Max Wabderman
3. 春の夜の天宮 塩見允枝子
プログラムはコンサートが終わった後に配るということで、演奏中は何が表現されているか、一体どんなルール(楽譜)で奏でられているのか推測しながら、神経を尖らせ、聴覚と視覚をフル回転させて集中して聴きました。あちこちから鳴る音を全て拾って、脳の中が大変なことになりましたが、オーケストラなどのコンサートとは全く異なる、素晴らしいコンサート体験でした。
橋爪皓佐さんが一曲終わるごとにその作品がどのような楽譜だったのか、どういう解釈をして奏者が演奏したのか説明してくださり、私自身も答え合わせをしながら聞きました。
例えば、「Attraction for Four」は、チェコの作曲家からテキストのノーテーションが届き、演奏の明確な指示は与えられていないため、奏者たちがテキストを読み解いて演奏を考えたそうです。奏者側に解釈の余地が与えられているため、正解がないといいます。
「No Time Too Loose」は楽器を持ってアイマスクをした3人が、楽器を鳴らしたり、「No Time Too Loose」と声を発したり、立ったり座ったり、アイマスクを取ったりしました。あるルールに則って相互に動いているのは明確なのですが、途中から複雑になり、どんな法則なのだろうと考えながら私も前のめりになっていました。「ノー・タイム・ノー・ルーズは、音の要素間の関係構造を比喩的に提案するグラフィックスコアです。解釈は自由ですが、一連のパラドックスを解決する必要があります。」(プログラムより抜粋)と書かれてあり、各奏者がどう動くかは決まりはあるものの即興らしいので、奏者たちもいつ終わるのかがわからないそう。結局20分ほどの演奏となり、奏者たちも驚いていました。たいへん面白い作品でした。
大トリの塩見允枝子先生の新曲《春の夜の天宮(てんきゅう)》をロゼッタと野営地の方が奏でました。塩見先生は、橋爪さんの活動にエールを送る意味で新作をつくったそうです。
3手のピアノ、バリトン、ギター、マンドリン、打楽器による演奏で、キーワードは星座。紐をヒュンヒュンと回す音、ピアノ奏者2人が向き合って互いに手を合わせ鳴らすカスタネットの音、星座を読み上げる声音、透明な薄いボードを細かく揺らすバタバタ音、音がゆっくりと混ざり合ってリズムが生まれ心地よいところで静かな鐘の音で終わる、美しい演奏でした。塩見先生の作品はまるで壮大な物語を感じ、展開も目まぐるしく、釘付けでした。奏者の方の息のぴったり合った、気持ち良さそうに演奏する姿も感動的でした。

今回の楽譜は五線譜だけではないので、正解がなく、奏者が独自の解釈で奏でるというものでした。奏者の解釈の仕方が違えば、何通りもの表現があるということになり、今回聴いた演奏は二度と聞けないということです。
演奏を聴きながら、どこからか聞こえてくる観客の咳やお腹が鳴る音、ガサゴソとする動く音までもが演奏なのか?と聴覚が敏感になっており、ジョン・ケージの4分33秒って改めてどんな感じだったのだろうと思いました。
来年、ときの忘れもので「塩見允枝子×フルクサス」展を開催予定です。楽しみにお待ちください。
(おだち れいこ)
●『塩見允枝子+フルクサス』展カタログ限定版(365部)
・塩見允枝子/作品点数:30点 図版点数:46図 挿図:12図(日英)
・フルクサス/9作家・作品点数:28点 図版点数:47図
(ジョージ・マチューナス、ナム・ジュン・パイク、靉嘔、斉藤陽子、アレン・ギンズバーグ、ジョナス・メカス、ヨーゼフ・ボイス、マース・カニングハム、ジョン・ケージ)
執筆:塩見允枝子「フルクサスの回想」「主要作品解説」
体裁:サイズ24.0cm×16.0cm、110頁、日本語・英語併記
発行:ときの忘れもの
・限定版(365部) 3,300円 送料250円
●本日のお勧め作品はジョン・ケージです。
ジョン・ケージ"Fontana Mix(Orange/Tan)"
1982年 シルクスクリーン、紙、フィルム3枚組
刷り:岡部徳三 56.7x76.5cm Ed.97 Signed
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●取り扱い作家たちの展覧会情報(5月ー6月)は5月1日ブログに掲載しました。
ときの忘れものの建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS ときの忘れもの
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
久しぶりの京都だったので、京セラ美術館、ロームシアター京都(前川國男建築)、ギャラリーも2軒まわって(中村潤展と、柳澤紀子先生と野田哲也先生ら四人展)、本日のメインイベントのコンサートへ。
公演前に塩見允枝子先生のお姿が見えたので声をかけると、丁寧に新作について解説いただきました。居合わせた作曲家の女性が「塩見さん筆が早いですよね、行き詰まることないんですか?」と聞くと「行き詰まるときは大体根本に原因があるの。全部捨ててやり直す。」とさらっと仰っており、潔くてかっこ良かったです。
演奏会のタイトルにある「ノーテーション」は記譜法という意味で、今回のコンサートは一般的な五線譜だけでなく、概念的な図形楽譜や、テキストの指示書のような楽譜を演奏するというものでした。
これは橋爪皓佐さんが主宰するアンサンブルの「ロゼッタ」が毎回テーマを設けて作品公募した作品を上演するという公演の一環で、世界各地にノーテーションというテーマで作品を公募したところ、57曲の応募があり、その中から、フルクサスの代表作家・塩見允枝子先生、作曲家の寺内大輔さんはじめ、ロゼッタや野営地らによって7作品を選出したそうです。塩見先生と寺内さんの作品合わせて計9演目が14時~17時の3時間におよび演奏され、大コンサートでした。会場には今回演奏されたさまざまなスタイルの楽譜も展示されていました。

第一部
1. shape(dream) M.A. Tisesnga
2. Attraction for Four Milan Gustar
3. Sorry! Sorry! Sorry! Sorry! John Franek
第二部
1. 訥 矢野かおる
2. No Time Too Loose Francesc Llompart
3. ルールズ 寺内大輔
第3部
1. Open Daria Baiocchi
2. Erosion Study Max Wabderman
3. 春の夜の天宮 塩見允枝子
プログラムはコンサートが終わった後に配るということで、演奏中は何が表現されているか、一体どんなルール(楽譜)で奏でられているのか推測しながら、神経を尖らせ、聴覚と視覚をフル回転させて集中して聴きました。あちこちから鳴る音を全て拾って、脳の中が大変なことになりましたが、オーケストラなどのコンサートとは全く異なる、素晴らしいコンサート体験でした。
橋爪皓佐さんが一曲終わるごとにその作品がどのような楽譜だったのか、どういう解釈をして奏者が演奏したのか説明してくださり、私自身も答え合わせをしながら聞きました。
例えば、「Attraction for Four」は、チェコの作曲家からテキストのノーテーションが届き、演奏の明確な指示は与えられていないため、奏者たちがテキストを読み解いて演奏を考えたそうです。奏者側に解釈の余地が与えられているため、正解がないといいます。
「No Time Too Loose」は楽器を持ってアイマスクをした3人が、楽器を鳴らしたり、「No Time Too Loose」と声を発したり、立ったり座ったり、アイマスクを取ったりしました。あるルールに則って相互に動いているのは明確なのですが、途中から複雑になり、どんな法則なのだろうと考えながら私も前のめりになっていました。「ノー・タイム・ノー・ルーズは、音の要素間の関係構造を比喩的に提案するグラフィックスコアです。解釈は自由ですが、一連のパラドックスを解決する必要があります。」(プログラムより抜粋)と書かれてあり、各奏者がどう動くかは決まりはあるものの即興らしいので、奏者たちもいつ終わるのかがわからないそう。結局20分ほどの演奏となり、奏者たちも驚いていました。たいへん面白い作品でした。
大トリの塩見允枝子先生の新曲《春の夜の天宮(てんきゅう)》をロゼッタと野営地の方が奏でました。塩見先生は、橋爪さんの活動にエールを送る意味で新作をつくったそうです。
3手のピアノ、バリトン、ギター、マンドリン、打楽器による演奏で、キーワードは星座。紐をヒュンヒュンと回す音、ピアノ奏者2人が向き合って互いに手を合わせ鳴らすカスタネットの音、星座を読み上げる声音、透明な薄いボードを細かく揺らすバタバタ音、音がゆっくりと混ざり合ってリズムが生まれ心地よいところで静かな鐘の音で終わる、美しい演奏でした。塩見先生の作品はまるで壮大な物語を感じ、展開も目まぐるしく、釘付けでした。奏者の方の息のぴったり合った、気持ち良さそうに演奏する姿も感動的でした。

今回の楽譜は五線譜だけではないので、正解がなく、奏者が独自の解釈で奏でるというものでした。奏者の解釈の仕方が違えば、何通りもの表現があるということになり、今回聴いた演奏は二度と聞けないということです。
演奏を聴きながら、どこからか聞こえてくる観客の咳やお腹が鳴る音、ガサゴソとする動く音までもが演奏なのか?と聴覚が敏感になっており、ジョン・ケージの4分33秒って改めてどんな感じだったのだろうと思いました。
来年、ときの忘れもので「塩見允枝子×フルクサス」展を開催予定です。楽しみにお待ちください。
(おだち れいこ)
●『塩見允枝子+フルクサス』展カタログ限定版(365部)

・フルクサス/9作家・作品点数:28点 図版点数:47図
(ジョージ・マチューナス、ナム・ジュン・パイク、靉嘔、斉藤陽子、アレン・ギンズバーグ、ジョナス・メカス、ヨーゼフ・ボイス、マース・カニングハム、ジョン・ケージ)
執筆:塩見允枝子「フルクサスの回想」「主要作品解説」
体裁:サイズ24.0cm×16.0cm、110頁、日本語・英語併記
発行:ときの忘れもの
・限定版(365部) 3,300円 送料250円
●本日のお勧め作品はジョン・ケージです。

1982年 シルクスクリーン、紙、フィルム3枚組
刷り:岡部徳三 56.7x76.5cm Ed.97 Signed
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●取り扱い作家たちの展覧会情報(5月ー6月)は5月1日ブログに掲載しました。

〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS ときの忘れもの
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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