杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」第103回
住民投票
九月下旬に、スイスのグラウビュンデン州で計画している民間防衛訓練センターの住民投票がありました。日本では馴染みのないプロセスですが、州が関わっているプロジェクトでは設計コンペを行い、基本設計と工事金額の見積もりが終わった時点で議会での投票があり、それを通過すると最後に住民投票があります。
僕たちのケースでは、昨年の七月からプロジェクトをスタートさせ、昨年末までに工事金額の上限を設定し、今年の3月に州議会を通したところ。九月の今までの約半年間、「待ちの期間」がありました。
老朽化した既存の民間防衛訓練センターの建て替えということもあって、議会では全会一致の賛成で通過したものの、それでも住民投票で可決されるだろうか。と心配していたところもあります。というのも、入札直前というところまでプロジェクトを進めていながらも、ストップせざるを得ないケースはあるからです。有名なものでは、2007年に住民投票で否決されてしまった、バーゼルのカジノがありますし、同じ時期に行われたチューリッヒの幼稚園では、工事費が高いということもあって、否決されてしまいました。税金を使って公共施設を建てる場合には最後にそれぞれの住民にも決定権があるのです。

結果を言えば、77%で可決されました。学校関係の施設は80%くらいで可決される傾向があるので、平均くらいでしょうか。それでも20%の住民は必要ないと考えていると思うと、しっかり進めていかなければ。と身を引き締める思いです。
これから分離発注の入札に入っていきます。今後の進展もまた更新していこうと思っています。
(すぎやま こういちろう)
■杉山幸一郎 SUGIYAMA Koichiro
日本大学、東京藝術大学大学院にて建築を学び、在学中にスイス連邦工科大学に留学。2014年から2021年までアトリエピーターズントー。現在、スイス連邦工科大学チューリッヒ校で設計を教える傍ら、建築設計事務所atelier tsuを共同主宰。2022年1月ときの忘れものにて初個展「杉山幸一郎展スイスのかたち、日本のかたち」を開催、カタログを刊行。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。
・ 杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。
●本日のお勧め作品は杉山幸一郎と若林奮です。
杉山幸一郎
《Line & Fill 77》
2020年
水彩
29.7×21.0cm
サインあり
若林奮
〈新100線〉No.56「1995年5月20日」
木・彩色、真鍮製
H3.7xD10.5cm
Signed
※『若林奮―1989年以後』展カタログ(発行:東京新聞 1997年)P.85掲載
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
*画廊亭主敬白
本日10月10日は若林奮(1936年1月9日 - 2003年10月10日)先生の命日です。
若林先生がカウンターと内装を手掛けたバー・ラジオに初めて行ったのは1983年11月4日の深夜でした。この日は千駄ヶ谷のGAギャラリーの開館記念「磯崎新展」のオープニングでした。磯崎先生と二川幸夫さんが慰労にと連れてってくれたのが近くのバー・ラジオでした。以来、亭主は機会があれば若林先生の作品をコレクションしてきました。ラジオのご主人尾崎さんからもいくつか譲っていただきました。2003年秋に展覧会を計画し、若林先生のおからだの具合が悪いことも存じ上げず、電話で開催の許可をいただきました。「よろしくお願いします」とかすれ声の電話が今でも耳に残っています。直後に亡くなられて、思いがけずも「追悼 若林奮銅版画展」となってしまい、2003年10月24日~11月8日に開催した展覧会には若林先生を慕う多くの皆さんが来廊されました。
●松本竣介展の図録を刊行しました(1,100円+送料250円)。
『松本竣介展』図録
発行:ときの忘れもの
発行日:2024年10月4日
サイズ:25.7×18.2cm
カラー 24P
図版:松本竣介作品13点
執筆:弘中智子(板橋区立美術館学芸員)
大谷省吾(東京国立近代美術館副館長)
編集・デザイン:柴田卓
価格:1,100円(税込) 送料:250円
●パリのポンピドゥーセンターでブルトンのシュルレアリスム宣言100年を記念して「シュルレアリスム展」が開催されています(~2025年1月13日まで)。ときの忘れものは同展に協力し瀧口修造のデカルコマニーを貸し出し、出展しています。展覧会の様子はパリ在住の中原千里さんのレポート(10月8日ブログ)をお読みください。
カタログ『SURREALISME』(仏語版)を特別頒布します。
サイズ:32.8×22.8×3.5cm、344頁 22,000円(税込み)+送料1,500円

●ときの忘れものの建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
住民投票
九月下旬に、スイスのグラウビュンデン州で計画している民間防衛訓練センターの住民投票がありました。日本では馴染みのないプロセスですが、州が関わっているプロジェクトでは設計コンペを行い、基本設計と工事金額の見積もりが終わった時点で議会での投票があり、それを通過すると最後に住民投票があります。
僕たちのケースでは、昨年の七月からプロジェクトをスタートさせ、昨年末までに工事金額の上限を設定し、今年の3月に州議会を通したところ。九月の今までの約半年間、「待ちの期間」がありました。
老朽化した既存の民間防衛訓練センターの建て替えということもあって、議会では全会一致の賛成で通過したものの、それでも住民投票で可決されるだろうか。と心配していたところもあります。というのも、入札直前というところまでプロジェクトを進めていながらも、ストップせざるを得ないケースはあるからです。有名なものでは、2007年に住民投票で否決されてしまった、バーゼルのカジノがありますし、同じ時期に行われたチューリッヒの幼稚園では、工事費が高いということもあって、否決されてしまいました。税金を使って公共施設を建てる場合には最後にそれぞれの住民にも決定権があるのです。

結果を言えば、77%で可決されました。学校関係の施設は80%くらいで可決される傾向があるので、平均くらいでしょうか。それでも20%の住民は必要ないと考えていると思うと、しっかり進めていかなければ。と身を引き締める思いです。
これから分離発注の入札に入っていきます。今後の進展もまた更新していこうと思っています。
(すぎやま こういちろう)
■杉山幸一郎 SUGIYAMA Koichiro
日本大学、東京藝術大学大学院にて建築を学び、在学中にスイス連邦工科大学に留学。2014年から2021年までアトリエピーターズントー。現在、スイス連邦工科大学チューリッヒ校で設計を教える傍ら、建築設計事務所atelier tsuを共同主宰。2022年1月ときの忘れものにて初個展「杉山幸一郎展スイスのかたち、日本のかたち」を開催、カタログを刊行。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。
・ 杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。
●本日のお勧め作品は杉山幸一郎と若林奮です。

《Line & Fill 77》
2020年
水彩
29.7×21.0cm
サインあり

〈新100線〉No.56「1995年5月20日」
木・彩色、真鍮製
H3.7xD10.5cm
Signed
※『若林奮―1989年以後』展カタログ(発行:東京新聞 1997年)P.85掲載
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
*画廊亭主敬白
本日10月10日は若林奮(1936年1月9日 - 2003年10月10日)先生の命日です。
若林先生がカウンターと内装を手掛けたバー・ラジオに初めて行ったのは1983年11月4日の深夜でした。この日は千駄ヶ谷のGAギャラリーの開館記念「磯崎新展」のオープニングでした。磯崎先生と二川幸夫さんが慰労にと連れてってくれたのが近くのバー・ラジオでした。以来、亭主は機会があれば若林先生の作品をコレクションしてきました。ラジオのご主人尾崎さんからもいくつか譲っていただきました。2003年秋に展覧会を計画し、若林先生のおからだの具合が悪いことも存じ上げず、電話で開催の許可をいただきました。「よろしくお願いします」とかすれ声の電話が今でも耳に残っています。直後に亡くなられて、思いがけずも「追悼 若林奮銅版画展」となってしまい、2003年10月24日~11月8日に開催した展覧会には若林先生を慕う多くの皆さんが来廊されました。
●松本竣介展の図録を刊行しました(1,100円+送料250円)。

発行:ときの忘れもの
発行日:2024年10月4日
サイズ:25.7×18.2cm
カラー 24P
図版:松本竣介作品13点
執筆:弘中智子(板橋区立美術館学芸員)
大谷省吾(東京国立近代美術館副館長)
編集・デザイン:柴田卓
価格:1,100円(税込) 送料:250円
●パリのポンピドゥーセンターでブルトンのシュルレアリスム宣言100年を記念して「シュルレアリスム展」が開催されています(~2025年1月13日まで)。ときの忘れものは同展に協力し瀧口修造のデカルコマニーを貸し出し、出展しています。展覧会の様子はパリ在住の中原千里さんのレポート(10月8日ブログ)をお読みください。
カタログ『SURREALISME』(仏語版)を特別頒布します。
サイズ:32.8×22.8×3.5cm、344頁 22,000円(税込み)+送料1,500円

●ときの忘れものの建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

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