「奈義町現代美術館・岡山ツアーその2」

先日(といってももう昨年の話しになってしまいましたが)「奈義町現代美術館・岡山ツアーその1」のレポートをお届けしましたが、2日目のツアーのご報告です。

【ツアー行程】
2024年11月14日(木)~15日(金) 1泊2日
●1日目:岡山空港ー奈義町現代美術館ー岡山市街泊
●2日目:吉備津神社―岡山西警察署―旧閑谷学校―岡山駅

岡山には国宝建築が2つあります。一つは「吉備津神社」、もう一つは「閑谷学校」です。
また、磯崎新さん設計の「岡山西警察署」もあるので、2日目は3つの建築を見に行きました。

まずは「吉備津神社」へ。現在の本殿・拝殿は今から約600年前の室町時代、将軍足利義満の時代に約25年の歳月をかけて再建されたそうです。 
IMG_3108
左側が本殿、右側が拝殿で、本殿に拝殿がTの字に結合しているような形をしています。
IMG_3116
なんともまぁ勇ましく威厳のあるお姿。建築様式は「比翼入母屋造」というそうです。
IMG_3105
屋根の上の破風が2つに分かれているのを「千鳥破風」と呼ぶらしく、大建築なので破風が1つだとあまりにも大きくなり過ぎるため、2つに分けているそう。本殿の屋根は茅葺き屋根ではなく桧皮で、拝殿は瓦屋根だそうです。
IMG_3114
垂木の間隔が狭く、また肘木と呼ぶ屋根を支える組物も何重にもなっており、重い屋根をしっかりと支えています。先端が銅で装飾されているのは木が腐るのを防ぐためとか。
IMG_3124
屋根の四隅がキューンと天に向かって伸び、見惚れるほど凛々しいですね。さすが国宝です。
IMG_3118
吉備津神社には全長360mにもおよぶ廻廊があります。自然の地形そのままに一直線に建てられているので、結構アップダウンがありました。気持ちの良い散歩道。
IMG_3121
虹梁という湾曲した梁が使われており、湾曲した梁は強度あるそうです。


吉備津神社から車で15分ほどで、奈義町現代美術館とほぼ同じ時期に設計された磯崎新さん設計の「岡山西警察署」(1996年完成)があります。
IMG_3129
クリエイティブTOWN岡山というプロジェクトの一環で、コミッショナーである岡田新一さんに指名され、警察署を設計しました。磯崎さん設計の唯一の警察署だそうです。
IMG_3147

IMG_3132
ピロティ部分の巨大な柱は本数が多く、まるで檻のよう。
IMG_3134
ピロティの柱は室内まで伸びています。
IMG_3138
事務スペースの椅子やテーブルも磯崎さんのデザイン。
IMG_3140
警察署の方にご許可をいただき、ロビーと外観を案内していただきました。
対照的な2つのボリュームをガラスの廊下で繋いでいます。格子状になっている建物は警察署の窓口など事務スペースで、黒い方は取調室などがあることから閉鎖的な建物になっています。格子状に使われている外壁の石は、岡山の御影石「万成石」だそうです。
IMG_3144
ナビゲーターによると、この建物はジュゼッペ・テラーニとピエトロ・リンジェリのアンビルド建築ダンテウム(ローマに建設される予定だった、報告書が残っている)の引用ではないかとのこと。テラーニはダンテウムの構成として神曲の寓意として考えており、地獄、煉獄、楽園の空間を構成していたそうで、磯崎さんももしかしたら、警察署のピロティ部分を楽園、事務スペースを煉獄、取調室などを地獄と考えていたのかもしれませんね。

さて、次は高速道路を利用して車を45分ほど走らせ、備前市中部にある「旧閑谷学校」に到着。
IMG_3152

IMG_3153
閑谷学校は、岡山藩主の池田光政が1670年に設立した世界最古の庶民のための公立学校(藩立)で、地方のリーダーを養成する学校として7歳から~20歳までの30~60人の子供が通ったそうです。
朝7時から夜の10時まで勉強するように定められ(休憩時間はたったの2時間)、習字や素読(経書を正確にひたすら読む)を行なっていたそうです。
通学した子供の中には大原美術館の創設者・大原孫三郎もいます。敷地内には、講堂や池田光政が祀られている閑谷神社、資料館などありました。
IMG_3160
入母屋造りの講堂は、国宝であり、屋根は備前焼瓦です。
IMG_3171
IMG_3162

床は拭き漆でピカピカ。通気性なども考えられ、造りがしっかりしているので木が腐らないし、いい材料を使っていることもあり、歴史に学ぶことは多いなと改めて感じました。
備前焼の瓦は変形しやすいので漏水することもあり、昔の人の知恵で漏水対策がきちんとなされていました。
IMG_3154
二本の楷の木も紅葉しており見事で、ちょうどいい季節でした。
IMG_3175
敷地を囲んでいる石築塀は石垣の上が蒲鉾型に削られており、切石も隙間なく積み上げられ、先人たちの優れた技術を見ることができます。

今回はときの忘れもののお客様とともに伝統的な日本建築2つと磯崎新建築を2つ観るという貴重な体験ができ、またナビゲーターの方がいらっしゃったので、ただなんとなく建物を見るのではなく、見るべきポイントを抑えながら、解説をきいて学ぶことができました。
また今年も建築ツアーを企画したいと思います。

おだち れいこ

●本日のお勧め作品は磯崎新です。
磯崎新FOLLY1
磯崎新 Arata ISOZAKI "FOLLY-SOAN 1" 1984年 木版
イメージサイズ:54.0×74.0cm
シートサイズ:57.0×76.0cm
Ed.50 Signed(*現代版画センターエディション)

磯崎新FOLLY2
磯崎新 Arata ISOZAKI "FOLLY-SOAN 2" 1984年 木版
イメージサイズ:30.0×37.2cm
シートサイズ:57.0×76.0cm
Ed.50 Signed(*現代版画センターエディション)

磯崎新FOLLY3
磯崎新 Arata ISOZAKI "FOLLY-SOAN 3" 1984年 木版
イメージサイズ:46.5×19.5cm
シートサイズ:57.0×76.0cm
Ed.50 Signed(*現代版画センターエディション)
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください


2月5日(水)の営業時間は17:00までとなります。
何卒ご理解いただけますと幸いです。

●パリのポンピドゥーセンターでブルトンのシュルレアリスム宣言100年を記念して「シュルレアリスム展」が開催されていますが、本日最終日を迎えます。
ときの忘れものは同展に協力し瀧口修造のデカルコマニーを貸し出し、出展しています。展覧会の様子はパリ在住の中原千里さんの詳細なレポート(全4回)をお読みください。
カタログ『SURREALISME』(英語版、仏語版は売り切れ)を特別頒布しています。
サイズ:32.8×22.8×3.5cm、344頁 22,000円(税込み)+送料1,500円
IMG_8014

●ときの忘れものの建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com 
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
photo (9)