1月27日は福井県勝山市の医師・中上光雄先生の命日です。
亡くなられたのは2015年1月27日、享年88、ちょうど10年前になります。
奥様の中上陽子さんとともに1974年からの私たちの最も古い顧客であり、文字通りのパトロンでした。

新合成
ヴィッラ Vol.3 NAKAGAMI HOUSE》シルクスクリーン、中上邸 1階平面図

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1999年10月「磯崎新展」中上邸イソザキホール
前列中央の帽子姿が磯崎新先生、その右が荒井由泰さん、左が中上光雄先生
磯崎先生の数少ない住宅建築の傑作です。
その詳細については、磯崎アトリエOBの稲川直樹さんの連載エッセイ「磯崎新の住宅建築と勝山の二作品」(全5回)をお読みください。

豪雪地帯で、家を新築するにあたり私どもが少しお手伝いをして磯崎新先生に設計をお願いしました。1983年2月に中上邸イソザキホール」が竣工し、中上先生ご夫妻亡き後もご遺族によって建物は維持され、地域の文化センター的な役割も担っています。

稲川直樹さま_中上邸1
中上邸イソザキホール(福井県勝山市 撮影:稲川直樹)

⑤-3 93舟越桂氏とともに1993年10月「舟越桂展」
左から中上陽子さん、舟越桂先生、中上光雄先生


20141114135013_3_600中上邸イソザキホールにて、綿貫不二夫、磯崎新
1999年



そのコレクションは瑛九、オノサト・トシノブに始まり、磯崎新、難波田龍起、泉茂、元永定正、野田哲也、岡本太郎、木村利三郎、丹阿弥丹波子、吉原英雄、関根伸夫、小野隆生、舟越桂、北川健次、土屋公雄など多くの作家を招き展覧会を企画開催されました(瑛九以外の上記作家は全て中上邸に招かれています)。
私たちを応援してくださったご夫妻のご冥福を祈るとともに、長年のご恩に深く感謝します。

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中上邸 ホール内観(撮影:稲川直樹)、展示されているのは中上コレクション

いままで中上先生と福井県勝山のコレクター運動についてはたびたびこのブログでも紹介してきました。
2015年1月4日のブログ:福井県立美術館で「福井の小コレクター運動とアートフル勝山の歩み―中上光雄・陽子コレクションによる―」

2015年1月17日のブログ:北陸の里に現代美術の輪 その後――荒井由泰

2015年1月19日のブログ:野田哲也「残るのは文化である」

2015年1月22日のブログ:「台所なんて要りませんから

2015年1月24日のブログ:いざ雪の北陸へ

2015年1月30日のブログ:石原輝雄「現代美術と磯崎建築~北陸の冬を楽しむツアー」に参加して

2015年1月31日のブログ:浜田宏司「現代美術と磯崎建築~北陸の冬を楽しむツアー」に参加して

2015年2月2日のブログ:酒井実通男「現代美術と磯崎建築~北陸の冬を楽しむツアー」に参加して


50年代に光を当てるという事――北川健次
 ドイツ文学者の種村季弘氏が私に面白い話をしてくれた事があった。「60年代のあの熱気ある現象の事を後追いのように面白いと語る人は多いが、本当に面白くて意味があるのは、それが形になる前の黎明期について語ることの方が深い意味があると思う。その事を誰も気付いていない」と。三島由紀夫がその眼識を高く評価していた種村氏だけに、その彗眼には鋭いものがある。
 その種村氏の眼差しをそのままに50年代の美術の状況に向けると、50年代に久保貞次郎・北川民次・そして瑛九たちによって立ち上げられた「創造美育運動」そしてそれにつながる「小コレクター運動」という運動の事が見えてくる。後の版画隆盛の基となった胚種的な美術の啓蒙運動である。そしてその運動を具体的に支えた土地が福井であり、1970年代からはその精神と理念を理解して支えた中上光雄氏という具体的な存在が浮かび上ってくる。
 勝山にある、磯崎新設計によるモダンなその中上邸で私の個展が開催されたのは2006年の事であった。70年代の中期から作家活動を始めた私は、その運動を伝説的には知っていたが、池田満寿夫氏からその頃の話を伺い、また実際に中上邸を訪れて、瑛九をはじめとする氏のコレクションの質の高さを知るにつれ、50年代にあった運動の事が眼前のリアルな姿として、ありありと見えて来たのであった。
 現代の美術の状況は実に薄く浅い迷走へと向かいつつあるが、その今に在って、50年代を中心とする中上氏のコレクションに光を当て、意味を見出そうとする本展の試みには、後に更に語られるであろう、深い意味があるように私には思われるのである。
きたがわ けんじ(美術家・美術評論)
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2006年 中上邸でのギャラリートークにて、右・北川健次

*北川先生のエッセイは下記カタログより再録。

NC_cover_600『福井の小コレクター運動とアートフル勝山の歩み展―中上光雄・陽子コレクションによる―』カタログ
2015年
中上邸イソザキホール運営委員会(荒井由泰、中上光雄、中上哲雄、森下啓子)発行
執筆:西村直樹(福井県立美術館学芸員)、荒井由泰(アートフル勝山の会代表)、野田哲也(画家)、丹阿弥丹波子(画家)、北川健次(美術家・美術評論)、綿貫不二夫(ときの忘れもの)
デザイン:北澤敏彦、高橋千瑛(DIX-HOUSE)
頒価:1,100円
*ときの忘れもので扱っています。

出品作家:北川民次瑛九オノサト・トシノブ泉茂吉原英雄靉嘔池田満寿夫難波田龍起、岡本太郎、元永定正、木村利三郎、丹阿弥丹波子、磯崎新野田哲也関根伸夫小野隆生舟越桂、北川健次、土屋公雄

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野田哲也
Diary : April 7th '96 in Boston
シルクスクリーン、木版
52.5x87.0cm
Ed.20
1996
サインあり
『野田哲也 全作品 III 1998-2000』レゾネNo.384

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●ときの忘れものの建築は阿部勤先生の設計です。
建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com 
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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