杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」第107回

二人展

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制作工房

今年の初夏に≪ギャラリーときの忘れもの≫で予定している展覧会。僕にとって二回目となる今回の展示は、家具職人のSerge Borgmannとの二人展となります。

2022年に行った初めての個展≪スイスのかたち、日本のかたち≫ではLine & Fill (線と面)をテーマに平面から立体までを制作・展示しました。

当時、いくつかの立体作品は、僕一人では制作できない精度が求められるものがありました。そこで、スイスで知り合った家具職人であるSerge Borgmannとコンセプトを記したスケッチ、小さな模型をもとに話し合い、細部を調整しながら制作を依頼しました。

それは全てを自分で制作できないという点で、どちらかというと建築を作ることに近いものでだったと思っています。

一般的には、建築も設計士が全体の構想を考えながら図面を引き、模型や3Dモデルなどを製作しながら検討を重ね、例えば縮尺1/500といった小さなスケールから、実物のスケールへと少しずつスケールをステップアップしながら、抽象的なアイデアを具体的な寸法に落としこんでいきます。その過程で、小さなスケールでは考える必要がなかった細部が段々と顕になっていき、具体的にどう作られるかを考えることなしには、デザインの決定ができません。その際、設計する人と制作する人が設計図というコミュニケーションツールをもとに作業のバトンタッチをしていく。

そうしてできた建築は、アイデアの元を考えた、設計をした人が著者となるわけですが、実際にはもっと多くの人たちの小さな決定によって、全体のアイデアが強くなっているのだと僕は思います。

そんな背景もあって、僕は今回の展示はSergeとの二人展として行いたい。それは、僕自身では構想できても、作品として強度のあるものを制作する技術と知識が僕一人では十分でないこと。また、構想と制作は一方方向に流れているのではなく、常にトライアンドエラーしながら行き来し、発展していくものであること。その過程では僕でさえも、職人にはない制作上のアイデアが生まれる瞬間があること。このような事実を考えると、やはり二人展として制作展示するのが理にかなっている。と思いました。そして、その考えを、ときの忘れものの方々と共有することができ、とても嬉しく思っています。

展示するモノたちは、目下、制作中です。その過程や協働者のSerge Borgmannについては、追って紹介していきたいと思います。

杉山幸一郎 SUGIYAMA Koichiro
日本大学、東京藝術大学大学院にて建築を学び、在学中にスイス連邦工科大学に留学。2014年から2021年までアトリエピーターズントー。現在、スイス連邦工科大学チューリッヒ校で設計を教える傍ら、建築設計事務所atelier tsuを共同主宰。2022年1月ときの忘れものにて初個展「杉山幸一郎展スイスのかたち、日本のかたち」を開催、カタログを刊行。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。

・ 杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。

●本日のお勧め作品は杉山幸一郎です。
sugiyama-museum01a"Museum 01"
2019年
MDF、アルミ
55.0x18.0x25.0cm
Ed.1
サインあり
制作は家具職人Serge Borgmannと協働
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。


●ときの忘れものの建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com 
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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