今週のおすすめ作品・桂ゆき《虎の威を借る狐》

今週のおすすめ作品は松本竣介が編集・刊行した雑誌『雜記帳』にも挿画を寄せていた桂ゆきの版画作品《虎の威を借る狐》です。

katsura_01 (1)
《虎の威を借る狐》
1956年
リトグラフ
38.8×55.8cm
Ed.100
サインあり

作品が制作された経緯については、久保貞次郎先生のエッセイをご覧ください。

「虎の威を借りる狐」(一九五五年)三十号は占領軍の威力のかげにかくれて日本国民を圧迫する司法官、役人、政治家をやじったものであろう。かの女はこのテーマが気に入りらしく、一九五七年にかの女としては最初の石版画にこのテーマを選んだ。油彩と石版のちがいは、グロテスクな頭の虎の胴体が、油よりも版画ではずっと細く、長くなり、しっぽも細く長くつき立ち、虎の体に乗る狐が黒いまるのなかに、白く浮き出ている点である。こうして大衆的な石版画では主題の意味をいっそう共感されるようにえがかれている。
久保貞次郎「桂ゆきの仕事」(1980年)より抜粋)


作品の詳細については下記アドレスまで「件名」「お名前」「連絡先(住所)」とご用件を記入してご連絡ください。
info@tokinowasuremono.com
お電話でのご連絡も受け付けております。
03-6902-9530

桂ゆき(1913-1991)  Katsura Yuki
東京生まれ。本名は桂雪子。東京府立第五高女に入学、両親の勧めで池上秀畝に日本画を学ぶが、卒業後は中村研一や岡田三郎助に師事、油彩を学ぶ。アカデミックな絵画に不満を持ちアヴァンギャルド洋画研究所に学ぶ。1935年海老原喜之助の勧めで銀座・近代画廊で当時まだ日本で紹介されていなかったコラージュによる個展を開く。二科展に入選。1938年吉原治良、山口長男、斎藤義重、峰岸義一ら二科会の前衛画家による研究団体・九室会の創立に参加した。戦後は1946年三岸節子らと女流画家協会を創立。1956年渡仏し、パリを拠点に欧州、中央アフリカを旅する。ニューヨークに3年ほど滞在し、1961年帰国。1962年『女ひとり原始部落に入る アフリカ・アメリカ体験記』を出版、翌年毎日出版文化賞を受賞した。1966年第7回現代日本美術展で最優秀賞を受賞。
戦前からコルク、新聞紙、レース等のコラージュによる前衛的な作品を発表し、戦後には痛烈な社会風刺とユーモアを含む制作を展開。三岸節子らとともに戦前と戦後を繋ぐ女性芸術家のパイオニア的存在であり、既成概念にとらわれず、自由な制作を求め前衛美術運動の中心的画家の一人として活躍した。

「ポートレイト/松本竣介と現代作家たち」展
2025年4月16日(水)~4月26日(土)11:00-19:00 ※日・月・祝日休廊
377_a出品作家:松本竣介、野田英夫、舟越保武、小野隆生、靉嘔、池田満寿夫、宮脇愛子+マン・レイ、北川民次、ジャン・コクトーほか

松本莞さんが『父、松本竣介』(みすず書房刊)を刊行されました。ときの忘れものでは莞さんのサインカード付本書を頒布するとともに、年間を通して竣介関連の展示、ギャラリートークを開催してゆく予定です。
『父、松本竣介』の詳細は1月18日ブログをお読みください。
ときの忘れものが今まで開催してきた「松本竣介展」のカタログ5冊も併せてご購読ください。
画家の堀江栞さんが、かたばみ書房の連載エッセイ「不手際のエスキース」第3回で「下塗りの夢」と題して卓抜な竣介論を執筆されています。
1200-hyoshi著者・松本莞
父、松本竣介
発行:みすず書房
判型:A5変判(200×148mm)・上製
頁数:368頁+カラー口絵16頁
定価:4,400円(税込)+梱包送料650円

●ときの忘れものの建築は阿部勤先生の設計です。
建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com 
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
photo (2)