「刷り師・石田了一の仕事」

第12回「AI(あい)はとこしえ キャンバス刷り」


A) 京セラ美術館での「草間彌生・版画の世界」が4月25日から始まったようですね。

Ⅰ)松本市美術館(2022年)では350点ほど展示されていましたが、
  京セラでは、前期と後期で展示替えのようです。
なんと、休館日の1日だけで全作品を入れ替えるとのことです。驚きました。
モノクロの100号キャンバス「愛はとこしえ LOVE-FOREVER」全50点の内、
今回は前期に10点、後期に10点だけのようです。

2006年、ニューヨークのロバートミラーギャラリーでの展覧会に間に合わせて
36点を制作したのがスタートです。(のちに50点が1セットに)
全部で6セット刷ったことになります。

A) 20年近く前になりますから、作業の写真を見ても、皆さんお若いですね。

Ⅰ)100号より一回り大きな156×190㎝の木枠にキャンバス生地を張り、
  チタニュウムホワイトを4度塗って、146×185㎝のシートにします。
  このキャンバス生地は、草間さんがドローイングで使っていたのと同じものです。

100号(130×162㎝)の絵をスムーズに刷るには、
前後に余裕のあるサイズ170×230㎝の版を使い、三人掛りで刷ります。
キャンバス地の場合は、強い圧が必要となるので、スキージの真ん中にもう一人
「用心棒」立松智君が加わります。
三位一体のバランスが刷りの出来を左右するのです。

A) 確か、この刷りの様子は2007年にドキュメンタリー映画になりましたね。
  
I )「草間彌生 わたし大好き」ですね、DVDもありました。
工房での撮影は(ヤラセではなく)、一発勝負の本刷りの最中でした。
カメラマンが作業の動線上に立ちはだかるので、
私たちはドケメンタリーと呼んでいましたよ。

1
モノクロ写真撮影:田中正子


2
木枠5個で、キャンバス650枚ほど張った事になります。
釘やガンタッカーは回収が難しく、散らかるとキケンなので、
ワッシャー付きドリルネジで止めています。


3
刷り終わった直後の版。
布テープのストライプは、刷り台上に乗る「用心棒」の
足場の滑り止めです。


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この状態で刷り台から運び、乾かします。


5
ピンホールなどの点検・修整作業。
手前が「群衆」というタイトル。目が967個あります。
向こう側のタイトルは「1000の目」ですが、実際は1767の目があります。
このくらい平気で数えることが出来なければ、草間さんの作品は作れませんよ。(笑)


6
5枚を1巻きにして梱包し、10本の箱で弁天町へ向かいます。

(いしだ りょういち)

■石田了一(いしだ りょういち)
シルクスクリーン刷り師・石田了一工房主宰
1947年北海道根室生まれ、1970 年美學校で岡部徳三氏に師事。
1971年、宇佐美圭司展(南画廊)で発表された<ボカシの 40 版>の版画で
工房をスタート。これまでにアンディ・ウォーホル、安藤忠雄、磯崎新、
草間彌生、熊谷守一、倉俣史朗、桑山忠明、五味太郎、 菅井汲、関根伸夫、
田名網敬一、寺山修司、鶴田一郎、萩原朔美、
毛綱毅曠、元永定正、脇田愛二郎、脇田和 他 ,
様々なジャンルのアーティストのシルクスクリーン作品を手掛ける。

●連載「刷り師・石田了一の仕事」は毎月3日の更新です。
次回は6月3日を予定しています。どうぞお楽しみに。

●本日のお勧め作品は草間彌生です。
171.Rain_in_the_Evening_Glow (3)《夕映えの雨》
1992年
シルクスクリーン
52.5×45.5cm
Ed.75
サインあり
※レゾネNo.171(阿部出版 2005年新版)
作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。


「草間彌生 版画の世界―反復と増殖―」
2025年4月25日-2025年9月7日
前期:4月25日(金)~6月29日(日)/後期:7月1日(火)~9月7日(日)
会場:京都市京セラ美術館[ 新館 東山キューブ ]

●GW中の営業日について
ときの忘れものの休廊日は下記となります。
4月29日(火・)「昭和の日」
5月3日(土・)「憲法記念日」
4日(日・)「みどりの日」
5日(月・)「こどもの日」
6日(火)振替休日
※4月30日(水)~5月2日(金)は通常営業

◆「2025コレクション展2/瀬木愼一旧蔵作品他
会期:2025年5月7日(水)~5月10日(土) 11:00-19:00
collection2_表面瀬木愼一先生(1931~2011)は、1950年代から岡本太郎、花田清輝らの「夜の会」に参加、海外美術の紹介やテレビ東京の「開運!なんでも鑑定団」に出演するなど、幅広い批評活動を展開し、美術市場の調査・研究にも積極的に携わり、他の批評家にはない独自の存在感を発揮されました。瀬木先生のもとには必然的に多くの作品が集まり、貴重な資料群は没後に国立新美術館に収蔵されています。
今回、瀬木先生とU氏の旧蔵コレクションを4日間のみの特別価格にて頒布します。
瀬木先生自身が制作された珍しい陶芸作品などもあり、是非この機会に皆様のコレクションに加えていただければ幸いです。詳しい出品内容は5月4日ブログに掲載しました。
出品作品:宮脇愛子、岡本一平、望月菊磨、草間彌生谷川晃一、吹田文明、吉仲太造、吉田勝彦、利根山光人、脇田愛二郎、松崎真一、針生鎮郎、橋場信夫、筆塚稔尚、井上公雄、鶴岡義雄、篠原有司男、山高登、大沢昌助吉原英雄、岩渕俊彦、藤森静雄、元永定正磯辺行久、永井勝、村瀬雅夫、中村義孝、平塚運一、オノサト・トシノブ、瀬木愼一、 ナイマン、サミュエル・マーティン、J.F.ケーニング、Julius Bissier、Jean Deyrolle、他

●ときの忘れものの建築は阿部勤先生の設計です。
建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com 
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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