2001年10月〜12月の展覧会
弊廊「ときの忘れもの」の2001年 10月〜の企画展・常設展のご案内を申し上げます。 

[ 磯崎新展]
会期…………2001年10月12日(金)〜 10月27日(土)11:00〜19:00 日曜・月曜・祝日は休廊
概要…………今年5月、「北京金融方城」と名付けられた北京市金融街の都市計画コンペで一位に選ばれた建築家磯崎新は、まさしく世界を飛び回り、さまざまな都市を訪れ、そこに新たな空間を生み出し続けています。また、次々に出版される書籍や、月刊誌での対談シリーズなど、建築という枠組みを超え、分野を問わず縦横無尽に駆け抜け、明解に解きあかしていくさまは、驚嘆すべきものがあります。建築が思考をパワー(力)に変換したものだとすれば、ドローイングや銅版、シルクという平面上で描きだされるのは、気配や宿りとでも言えるでしょうか。世界のあちらこちらで、都市や建築を、息するようにドローイングし続けてきた磯崎新。今回は、銅版画、未発表手彩作品を出品いたします。現在10年がかりの連刊画文集『百二十の見えない都市』を制作中です。
磯崎新(いそざき あらた)………1931年大分県生まれ。1961年東京大学大学院博士課程修了。1963  年磯崎新アトリエ設立。建築の実作のみならず、歴史、芸術、文化への深い洞察に支えられた評 論執筆や、版画制作、ヨーロッパ巡回「間展」の企画構成など国際的な活躍を続け、1999年には フィレンツェ・ウフィッツイ美術館新玄関の設計者に選ばれた。『空間へ』『建築の解体』など著 書多数。建築代表作=大分県立図書館、つくばセンタービル、ロサンゼルス現代美術館、ティー ム・ディズニー・ビルディング、秋吉台国際芸術村、静岡県コンベンション・センター グラン シップ、なら100年会館、オハイオ21世紀科学技術センター 等。
 版画代表作=《ヴィッラ》《還元》《内部風景》《銅版画集 栖十二》《闇・霧・影》
「チャールズ・レニー・マッキントッシュ/ヒル・ハウス」1998年
銅版・手彩色 15×10cm Ed.8
「フランク・ロイド・ライト/アリス・ミラード邸」1999年
銅版 15×10cm Ed.15
[ 北郷悟彫刻展くり返される呼吸―日常]
会場…………ときの忘れもの  (東京都港区南青山3-3-3 TEL 03-3470-2631)
      ギャラリーせいほう(東京都中央区銀座8-10-7 TEL 03-3573-2468)
会期…………2001年11月5日(月)〜 11月17日(土)
      11:00〜19:00 日曜のみ休廊(本企画展は月曜も開廊)
概要…………「自分のなかにあるかたちをずっと追い掛けて、自分のなかに存在する人間像を絞り出」し、彫刻のかたちを追究する、北郷悟の新作展です。本展覧会は、版画掌誌第4号刊行を記念し、ギャラリーせいほうと、ときの忘れものの2会場で同時開催され、同じコンセプトで展示表現されます。展示についての北郷悟のコメントを紹介します。
1. テーマ 「《意識と存在》を制作題材とした彫刻による空間表現。《日常》を主題とし、2つの視点から表現を試みた展覧会となる。」
2. 空間について 「ギャラリーせいほうでは、主題によるテーマコンセプトで空間表現され、ときの忘れものにおける住宅的ギャラリーでは、生活時間の中での表現を目的とした、彫刻の空間を模索する展示となる。」
3. 作品について 「人間の《日常》に流れる意識に存在する《時間の積層》をテーマとして制作を続けている。《くり返される呼吸》をメインタイトルとし、自分と他の関係や人が歩んだ歴史の上に積層された時間など、《今》と《ゆくえ》について作品を発表する。」

 1996年秋より文化庁派遣在外研修員としてイタリアに留学した北郷は、帰国して発表した新制作協会展おいて、「あらためて、現代に具象を追及する意味を見い出し、新しい具象性を探る意欲を示した」と評価され、具象彫刻の作家として確かな歩みを進めています。テラコッタという手法による等身大の塑像など、人間を具現化する表現を重ねてきた北郷悟ですが、最近では、彫刻をとりまく空間を含めた作品へと展開しつつあります。イメージによって手法をかえ、空間をつくりあげ、ひとつの言葉を成立させようとしています。
 今回の企画展では、「日常」をテーマにし、異なる空間をもつ2つの画廊を同時に使うことで、日常のなかでの彫刻のもつ空間とはいかなるものか、を見極めようとしています。ときの忘れものの展示では、ギャラリーの内部と外の庭の空間がつながるかたちで、鉄板状のテーブルを置き、作品が配置され、外と内を含めた空間構成が行われる予定になっています。「テーブルを置くことによってひとつの空間がどのように変わるか、時代的な空間、意識的な精神空間の両方を交錯するような空間をつくりたい」と北郷は述べています。テラコッタ、コンピュータによるロストワックス鋳造のブロンズ、ドローイング、版画掌誌に向けて制作された初の銅版作品等を展示します。 
北郷悟(きたごう さとる)………1953年いわき市に生まれる。1977年 東京造形大学彫刻科卒業。 1979年東京芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。1984年新制作協会会員。1991年新潟大学助 教授。1996年文化庁在外研修、イタリア・ミラノ・ブレラアカデミア美術学校。1997年より東京 芸術大学助教授。◆1979,80, 82 新制作展/新作家賞受賞。1981 現代美術選抜展(文化庁)。1983  天展(奈良天理ビエンナーレ)/大賞受賞。1990 通産省グッドデザイン賞受賞。1987,88 銀座み ゆき画廊で個展。1991,1993,1998 銀座ギャラリーせいほうで個展。◆パブリックコレクション文 化庁、東京芸術大学、新潟大学、福島市、いわき市、遠野市、函館市、松山市 等。
「道」2001年
ブロンズ、鉄 12×260×36cm
「ベル」2001年
テラコッタ、鉄 12×10×20cm
[ 内間安瑆 展―版画掌誌第4号刊行記念展 ]
会期…………2001年11月 24日(土)〜12月4日(土)11:00〜19:00 日曜・月曜・ 祝日は休廊
概要…………同時代の優れた作家と、歴史の彼方に忘れ去られた作品を紹介するオリジナル版画入り大判美術誌、版画掌誌『ときの忘れもの』第4号が刊行されました。今回は、現代に具象を追及する意味を見い出し、新しい具象性を探る意欲に満ちた具象彫刻の作家北郷悟、伝統木版にモダンな色彩感覚を吹き込み、アメリカ美術界に確固たる地位を築いた内間安瑆 (うちまあんせい)を特集作家としてとりあげています。10月の北郷悟の企画展に続き、版画掌誌第4号刊行記念として内間安瑆 展を開催します。
 内間安瑆 は、意欲的な制作を続けるさなか、突然闘病生活を余儀なくされ、1980年代を最後に殆ど発表をせず、日本では忘れられた観のある在米画家でした。しかし、制作された作品の数々は、会った人間が愛してやまなかった作家の人間性と同様、印象深く瑞々しく語りかけています。つねにふたつの文化、国にまたがりながら、それらを超えたところに存在する自己の自由さと深さを表現したこの作家を、日本が忘れてはならないと思います。
 内間は、二世としてアメリカに生まれ、戦前から戦中にかけ早稲田大学で建築を学び、油彩にも取組みます。が、戦後、油絵制作の社会的必然性に疑問を抱く中、恩地孝四郎に巡り合い、版画の大衆性と 創作版画の意義に惹かれ、木版画の制作を始めます。帰米後、ニューヨークを拠点に制作活動を行い、代表作の「森の屏風Forest Byobu Seeries」などに展開される、深い知性に裏付けられ、理論的に考え抜かれた構成、自律的に色彩が演じる“視覚ダンス”の世界では、リズム感に富んだ豊かな色彩表現を確立しました。版木ベニヤ8面、水彩絵具で生漉奉書に手摺りで45度摺りを行うといった、浮世絵版画を思わせる手のこんだ技法のため、限定部数は多くはなく、数部が刷られたのみという作品も少なくありません。それら木版を中心に、15点を出品します。
内間安瑆 (うちま あんせい)………1921年アメリカに生まれる。父母は沖縄出身。1940年早稲田 大学に留学。創作版画の恩地孝四郎に巡り合い抽象木版に志す。1955年東京・養清堂画廊で初個 展。1960年ニューヨークに住む。1962・70年グッゲンハイム・フェローシップ版画部門で受賞。
 2000年 5月9日逝去(79歳)。
「Light Mirror,Water Mirror」1977年 木版 46.3×70.8cm Ed.50
[ リキテンスタイン展]
会期…………2001年12月 14日(金)〜12月29日(土)11:00〜19:00 日曜・月曜・ 祝日は休廊
概要…………コミックの登場人物の顔が、圧倒的なサイズに引き延ばされ、黒による縁取りと工業的な色、ハーフトーンを出すために商業印刷で使用されるペンティ・ドットを手法に引用し油彩画や版画を制作した作家、ウォーホルと並びポップアートを代表するロイ・リキテンスタインの展覧会を開催します。
消費や流通の活性にともない氾濫する、既存の二次元の複製物を主題に引用し、ディズニーのキャラクターからイエローページの小さな広告、メールオーダー・カタログの商品イラスト、大人向きのロマンスや戦争漫画を題材にしています。そして、芸術的霊感や思想とは相容れないものとして評価の低かったコマーシャル・アートの質の高さを最初に認識し、その商業的な描写・複製プロセスを引用した作品を制作しました。「私の作品はむしろ我々アメリカ人がイメージと視覚的コミュニケーションをどう定義しているかにかかわるものです。」「私はいつも、芸術である印と芸術でない印との違いを知りたいと思ってきました。」といったリキテンスタインの言葉からは、「高級」文化が洗練の独占権を持っていないことを理解し、何が芸術と考えられるべきかを再提示した作家といえます。今回は、代表的版画作品を中心に10点を出品いたします。
Roy Lichtenstein(ロイ・リキテンスタイン)………1923年ニューヨークに生まれる。10代半ばからデッサンや油絵を独習。1940年オハイオ州立大学美術学部に入学、召集により海軍入隊。終戦後復学、修士課程に進み講師の職を得る。1951年ニューヨーク・カールバック画廊で初個展。講師を解雇され、グラフィックや板金デザイナー等の仕事に就く。1957年教職に就く。1961年最初のポップ絵画を描き始める。1962年ニューヨーク・レーオ・カステリ画廊で個展。1964年絵画に専念。回顧展が世界を巡回し多数の個展が開かれる。1966年第33回ベニス・ビエンナーレ展アメリカ館に出品。その後、国内、国外数多く回顧展が巡回し、壁画、彫刻、映画等も手掛ける。1997年没。
「Crying Girl」1963年 オフセットリト 44.5×58.7cm Ed.300

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