建築のみならず、他の分野との交流、対話の場を意識的に作り続けてきた磯崎新のライフワークともいうべき連刊画文集《百二十の見えない都市》は、60年代以来の伴走者・植田実の企画・編集で、1年で12都市、10年で120都市を、オリジナル版画と書き下ろしエッセイで描ききるという壮大なプロジェクトです。
第一期12都市は順調に滑り出したのですが、第二期に入り、思わぬ渋滞を生じ、パトロン(予約購読者)の皆様には多大なご心配をおかけしました。深くお詫びするとともに、遂にというべきか、予想通りというべきか、構想も新たに力強い第二期12都市の制作が終盤にさしかかっていることをご報告致します。
既に挿入する版画36点(当初はい1都市2点づつの版画の予定だったのですが、エンジン全開の磯崎先生は、版元の財布も構わず、銅版2点と、シルクスクリーン大作(40×120cm)1点を各都市に挿入)の版はほぞ完成し、エッセイの執筆も急ピッチで進行しています。
狼少年といわれながら、「必ず磯崎先生はやってくれる」と私は信じておりました(泣)。
先日、弘前建築ツアーの帰途、岩手県立美術館でルオー展を見て、版元ヴォラールの死により宙に浮いた版画連作を、20数年かかって完成させたルオーの執念と情熱に脱帽しました。磯崎先生の自作にかける執念と情熱もルオーに勝るとも劣らない、盛岡の美味しい蕎麦を食べながらしみじみ思ったことでした。