20種もの鉛筆を駆使して人間を描く木下晋、微細な木口木版で独自の作風を展開する小林敬生と日和崎尊夫。黒線が織りなす細密の世界をご紹介します。
1. 展覧会名 「黒の迷宮 -凝視の刻- 木下晋・小林敬生・日和崎尊夫」
2. 会 期 2006(平成18)年1月4日(水)~2月5日(日)会期中無休
3. 開館時間 午前9時30分~午後5時(入館は4時30分まで)
4. 会 場 石川県立美術館
第7展示室 木下 晋-鉛筆画(ペンシルワーク)
第8展示室 小林敬生-木口木版
第9展示室 日和崎尊夫-木口木版
5. 主 催 石川県立美術館
6. 共 催 北國新聞社
7. 後 援 NHK金沢放送局、北陸放送、石川テレビ放送、テレビ金沢、北陸朝日放送
8. 展覧会概要 別項にて紹介
9. 入 場 料 一般 800円(600)、大学生 600円(400)、高中小生200円(100) ( )内は20名以上の団体料金
◎お問い合わせ
石川県立美術館 学芸主任 吉村尚子 学芸専門員 二木伸一郎
〒920-0963 石川県金沢市出羽町2-1
℡076-231-7580 fax076-224-9550
◎お知らせ
◆木下晋氏・窪島誠一郎氏(信濃デッサン館館主)の対談(入場無料)
日 時 平成18年1月8日(日)午後1時30分~
場 所 石川県立美術館ホール
演 題 「生命の炎を、みる」
◆小林敬生氏講演会(入場無料)
日 時 平成18年1月22日(日)午後1時30分~
場 所 石川県立美術館ホール
演 題 「私と木口木版、そしてヒワさんのこと」
◆学芸員によるギャラリートーク(観覧料必要)
日 時 1月15日、29日、2月5日、いずれも日曜午前11時~
場 所 企画展示室
◎展覧会概要
黒の迷宮 -凝視の刻- 木下晋・小林敬生・日和崎尊夫
黒はひと色で世界を表現しうる唯一の色です。黒から紙の白への無限のグラデーションは、モノクロ写真のようにリアルな世界を描くこともできますし、水墨画のように思惟に富んだ精神世界を描くこともできます。色はそれぞれ、ある特定の感情を見る者に喚起させます。しかし、色味をのぞいて無彩色の明暗の階調に世界を置き換えればどうでしょう。そこには客観性が生じ、幅広い表現を得ることが可能となります。この点黒は他の色とは性質を異にする、特殊な色といえましょう。
本展は、黒を用いて、人が視ることの限りを尽くし、そして描き込んだ、凝視の世界をご覧いただくものです。9Hから9Bまでの20種の鉛筆を駆使して人間を描きつづける木下 晋、木口木版で、微細なそして暗示に満ちた不可思議な世界を展開する日和崎尊夫と小林敬生、この三人の黒線が織りなす細密描写の魔宮は、写実と幻視の両洋にそびえ立ち、視る者に驚嘆と畏怖の念を起こさせます。視覚情報が満ちあふれ、ややもすれば視ることが惰性に流れがちな現代に、彼らの凝視の世界は、視ることは考えることであり、意志を伴うものであることを、強烈に語りかけるのです。本展を機に、視ることの意味を再確認いただければ幸いです。
◎作家及び出品作品のご紹介
木下晋(きのしたすすむ)
昭和22(1947)年、富山県富山市生まれ
独学で油絵やクレヨン画を制作し、16歳の時、自由美術協会展に初入選し、注目を浴びる。やがて、詩人の瀧口修造や美術評論家 洲之内徹氏に認められるが、以後しばらくは苦節の時代が続く。1980年頃から鉛筆画に魅せられ、独自の表現方法を確立。現在は、美術館や画廊で個展を開くなど、精力的に作品を発表している。老人、ホームレス、旅芸人などをモデルに、透徹した目でその人の人生を抉り出し、鉛筆のみで巨大な肖像画を描く。
■木下晋のペンシルワーク
“良いデッサンはモノトーンでも色を感じさせる”という考えにヒントを得、試行錯誤を繰り返しながら、従来のデッサン、ドローイングとは違った独自の鉛筆画を制作している。鉛筆には9Bから9Hまで二十種があり、それぞれの階調が持つ美しさを色として感じ、それらを使い分けることで、絵の具と同じように様々なトーンの表現ができる。モデルの皮膚の皺、髪の毛の一本一本まで細密に執拗に描き込み、見る側に迫ってくる。生々しいほどにリアルな画面からは、その人の生き様が刻みつけられているように感じられる
小林敬生(こばやしけいせい)
昭和19(1944)年、島根県松江市生まれ
広島県で幼少年期を過ごし、10歳の時に、滋賀県大津市に移り住む。高校卒業後京都と東京で美術を学ぶ中で、木口木版画の魅力にとりつかれ、その第一人者として高い評価を受けるようになる。木口木版画は本来、小画面で小さな作品が多いが、1980年代後半より、版木を10枚以上も繋ぎ合わせ、非常にスケールの大きい、ダイナミックな作品を制作している。小林の作品には、自由に飛翔したり、泳ぎ回る鳥や魚、昆虫などの生き物、画面いっぱいに繁茂する植物が絡み合う幻想的な光景が登場する。近年のテクノロジーの進歩とともに築かれてきた文明社会への警鐘、そして、人間が本来あるべき自然との共生というテーマが作品に流れている。
■鏡貼り
小林の作品は雁皮紙(がんぴし)を使うが、非常に薄いが強い雁皮紙の特性を生かし、同一の版木で刷った紙を裏返しにして張り合わせ一つの作品に仕上げている。まるで鏡に映したような効果が生まれる。小林独自の技法である。
日和崎尊夫(ひわさきたかお)
昭和16(1941)年、高知県高知市生まれ 平成4(1992)年没
高校卒業後、武蔵野美術学校で西洋画を学ぶ。この頃から、木版画の講習を受けたことがきっかけで版画制作を行うようになり、衰退していた木口木版画に興味を持つ。独学でその技法を習得し、2年後には日本版画協会展で新人賞を受賞して注目される。以後、この技法で精力的に創作活動を行い、フィレンツェ国際版画ビエンナーレ展での金賞を初めとして数々の賞を受賞する。故郷高知で生育した椿の木、その年輪が刻まれた木口の断面を手でさすり、対話しながら即興で彫り込んでいった。闇の中から光を求めるがごとく、深淵なる小宇宙を生涯彫りつづけた。


■木口木版画について
木口木版は、堅い木を水平に輪切りにした面(木口)を、銅版用のビュランやノミで彫って版を作る。従来、本の挿絵の印刷技術として西洋で発達した木口木版画を、日和崎尊夫は自らのメッセージを伝える素材として着目し、これを芸術として蘇生させた。日和崎の作品に影響された小林敬生ら幾人かの版画家によって独創的な芸術表現の手段として制作されるようになった。

1. 展覧会名 「黒の迷宮 -凝視の刻- 木下晋・小林敬生・日和崎尊夫」
2. 会 期 2006(平成18)年1月4日(水)~2月5日(日)会期中無休
3. 開館時間 午前9時30分~午後5時(入館は4時30分まで)
4. 会 場 石川県立美術館
第7展示室 木下 晋-鉛筆画(ペンシルワーク)
第8展示室 小林敬生-木口木版
第9展示室 日和崎尊夫-木口木版
5. 主 催 石川県立美術館
6. 共 催 北國新聞社
7. 後 援 NHK金沢放送局、北陸放送、石川テレビ放送、テレビ金沢、北陸朝日放送
8. 展覧会概要 別項にて紹介
9. 入 場 料 一般 800円(600)、大学生 600円(400)、高中小生200円(100) ( )内は20名以上の団体料金
◎お問い合わせ
石川県立美術館 学芸主任 吉村尚子 学芸専門員 二木伸一郎
〒920-0963 石川県金沢市出羽町2-1
℡076-231-7580 fax076-224-9550
◎お知らせ
◆木下晋氏・窪島誠一郎氏(信濃デッサン館館主)の対談(入場無料)
日 時 平成18年1月8日(日)午後1時30分~
場 所 石川県立美術館ホール
演 題 「生命の炎を、みる」
◆小林敬生氏講演会(入場無料)
日 時 平成18年1月22日(日)午後1時30分~
場 所 石川県立美術館ホール
演 題 「私と木口木版、そしてヒワさんのこと」
◆学芸員によるギャラリートーク(観覧料必要)
日 時 1月15日、29日、2月5日、いずれも日曜午前11時~
場 所 企画展示室
◎展覧会概要
黒の迷宮 -凝視の刻- 木下晋・小林敬生・日和崎尊夫
黒はひと色で世界を表現しうる唯一の色です。黒から紙の白への無限のグラデーションは、モノクロ写真のようにリアルな世界を描くこともできますし、水墨画のように思惟に富んだ精神世界を描くこともできます。色はそれぞれ、ある特定の感情を見る者に喚起させます。しかし、色味をのぞいて無彩色の明暗の階調に世界を置き換えればどうでしょう。そこには客観性が生じ、幅広い表現を得ることが可能となります。この点黒は他の色とは性質を異にする、特殊な色といえましょう。
本展は、黒を用いて、人が視ることの限りを尽くし、そして描き込んだ、凝視の世界をご覧いただくものです。9Hから9Bまでの20種の鉛筆を駆使して人間を描きつづける木下 晋、木口木版で、微細なそして暗示に満ちた不可思議な世界を展開する日和崎尊夫と小林敬生、この三人の黒線が織りなす細密描写の魔宮は、写実と幻視の両洋にそびえ立ち、視る者に驚嘆と畏怖の念を起こさせます。視覚情報が満ちあふれ、ややもすれば視ることが惰性に流れがちな現代に、彼らの凝視の世界は、視ることは考えることであり、意志を伴うものであることを、強烈に語りかけるのです。本展を機に、視ることの意味を再確認いただければ幸いです。
◎作家及び出品作品のご紹介
木下晋(きのしたすすむ)
昭和22(1947)年、富山県富山市生まれ
独学で油絵やクレヨン画を制作し、16歳の時、自由美術協会展に初入選し、注目を浴びる。やがて、詩人の瀧口修造や美術評論家 洲之内徹氏に認められるが、以後しばらくは苦節の時代が続く。1980年頃から鉛筆画に魅せられ、独自の表現方法を確立。現在は、美術館や画廊で個展を開くなど、精力的に作品を発表している。老人、ホームレス、旅芸人などをモデルに、透徹した目でその人の人生を抉り出し、鉛筆のみで巨大な肖像画を描く。
■木下晋のペンシルワーク
“良いデッサンはモノトーンでも色を感じさせる”という考えにヒントを得、試行錯誤を繰り返しながら、従来のデッサン、ドローイングとは違った独自の鉛筆画を制作している。鉛筆には9Bから9Hまで二十種があり、それぞれの階調が持つ美しさを色として感じ、それらを使い分けることで、絵の具と同じように様々なトーンの表現ができる。モデルの皮膚の皺、髪の毛の一本一本まで細密に執拗に描き込み、見る側に迫ってくる。生々しいほどにリアルな画面からは、その人の生き様が刻みつけられているように感じられる
小林敬生(こばやしけいせい)
昭和19(1944)年、島根県松江市生まれ
広島県で幼少年期を過ごし、10歳の時に、滋賀県大津市に移り住む。高校卒業後京都と東京で美術を学ぶ中で、木口木版画の魅力にとりつかれ、その第一人者として高い評価を受けるようになる。木口木版画は本来、小画面で小さな作品が多いが、1980年代後半より、版木を10枚以上も繋ぎ合わせ、非常にスケールの大きい、ダイナミックな作品を制作している。小林の作品には、自由に飛翔したり、泳ぎ回る鳥や魚、昆虫などの生き物、画面いっぱいに繁茂する植物が絡み合う幻想的な光景が登場する。近年のテクノロジーの進歩とともに築かれてきた文明社会への警鐘、そして、人間が本来あるべき自然との共生というテーマが作品に流れている。
■鏡貼り
小林の作品は雁皮紙(がんぴし)を使うが、非常に薄いが強い雁皮紙の特性を生かし、同一の版木で刷った紙を裏返しにして張り合わせ一つの作品に仕上げている。まるで鏡に映したような効果が生まれる。小林独自の技法である。
日和崎尊夫(ひわさきたかお)
昭和16(1941)年、高知県高知市生まれ 平成4(1992)年没
高校卒業後、武蔵野美術学校で西洋画を学ぶ。この頃から、木版画の講習を受けたことがきっかけで版画制作を行うようになり、衰退していた木口木版画に興味を持つ。独学でその技法を習得し、2年後には日本版画協会展で新人賞を受賞して注目される。以後、この技法で精力的に創作活動を行い、フィレンツェ国際版画ビエンナーレ展での金賞を初めとして数々の賞を受賞する。故郷高知で生育した椿の木、その年輪が刻まれた木口の断面を手でさすり、対話しながら即興で彫り込んでいった。闇の中から光を求めるがごとく、深淵なる小宇宙を生涯彫りつづけた。


■木口木版画について
木口木版は、堅い木を水平に輪切りにした面(木口)を、銅版用のビュランやノミで彫って版を作る。従来、本の挿絵の印刷技術として西洋で発達した木口木版画を、日和崎尊夫は自らのメッセージを伝える素材として着目し、これを芸術として蘇生させた。日和崎の作品に影響された小林敬生ら幾人かの版画家によって独創的な芸術表現の手段として制作されるようになった。

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