7779b64f.jpgこのところ、トリシャ・ブラウンさんの個展の準備で、大童である。
未発表のドローイング41点よりなる日本初の展覧会である。額縁やさんがしゃかりきになって特注の額を製作している。案内状もできた、来週には発送したい。
まともな(堅実な)画商さんなら1年から2年先の企画を決めている。ときの忘れものみたいに、数ヶ月先はもちろん来月の日程さえ定かではないなんて画商界では珍しい、社長はそれじゃあ困るという顔をしていおるが、亭主はその日暮らしのやくざな商売と居直っている。
そこでトリシャ・ブラウンである。ときの忘れものを長年支えてくださっているお客様も「なに? いつからそんなこと考えていたの」と呆れ顔である。
私もつい数ヶ月前まで、まさかポスト・モダンダンスを代表するトリシャ・ブラウンさんの個展を開くはめになるとは夢にも思わなかった。
すべては昨秋10月14日のジョナス・メカスさんの個展オープニングに始まった。
このとき学生多数を引き連れて岡崎乾二郎先生が訪れ、メカスさんに突撃インタビューを敢行した。悠揚迫らぬ泰然たるメカスさんの話しぶりは聞く人の心を撃った。
その後しばらくして、岡崎先生とぱくきょんみさんが、突然トリシャ・ブラウン展を開かないかと話をもちかけてきてくださった。
昔から、来る人拒まず、去る人追わず、流れに任せることにしている。
一所懸命な人の情熱は必ずその周りに人の渦をつくり、風を、ときには嵐を招きよせる。岡崎先生とぱくさんの何とかトリシャ・ブラウンさんの偉大な業績と素敵なダンスの世界を日本の人々に知らしめたいという熱意にほだされた。
いい加減な動機かも知れないが、まあ画廊というのはそういう突拍子もない夢が突然実を結ぶ場所であってもいいのではないか。
1年先、2年先がきちんと決まっているのもすばらしいが、そればっかりじゃ息苦しい、そう思う日々であります。