私たちは東京と埼玉の境目に住んでおり、所沢に近い。
所沢市というのは随分裕福とみえて、立派な市民文化センターがあり、大中小、三つもホールがある。そのひとつで、<ミューズ・シネマ・セレクション 世界が注目する日本映画たち>という催しがあり、昨日小津安二郎監督の「東京物語」と緒方明監督の「いつか読書する日」のニ本を楽しんできました。
二本とも前に見たことがあるので、筋を追わなくて済み、映像の端から端までじっくりと眺め回すことができました。
「東京物語」では尾道と東京の昭和20年代の風景、街の風俗、人々の暮らしぶり、特に郊外住宅や職住一体の下町の美容院、女性の独り暮しのアパートの空間などが実に丁寧に描かれており、いまさらのようにこの映画が名作だと実感しました。
そして出演者たちの日本語の美しさ。
それぞれのシーンの実際の撮影場所についても詳しい考証がなされているようで、下記のサイトが参考になりました。
http://www.tokyo-kurenaidan.com/ozu-tokyo1.htm
映画の上映に先立って主催者だか企画者だかの女性のおしゃべりがあったのですが、蛇足で、「原節子さんと香川京子さん以外はみんなお亡くなりになって」などと言われるとこちとらへそ曲がりなもので、映画は主役の人たちだけのものじゃあないだろう、長男(山村聰)の子供達二人はどうした、次女(香川京子)の教え子や近所の子供達は健在だろうとちゃちを入れたくなる。
もう一本の緒方明監督の「いつか読書する日」は昨年、渋谷のユーロスペースで上映され随分評判の良かった映画です。私も社長に内緒で、こっそり画廊を抜け出して見に行ったのですが、50歳になった中年男女のラブストーリーで牛乳配達の大場美奈子(田中裕子)がいいですね。
題名の通り、緒方監督はヒロインの部屋の本棚にはずいぶんと凝ったようで、ハヤカワミステリーなど一冊一冊を吟味して東京から大量の本を撮影地の長崎に運んだようです。
そんなに本や、活字、町の看板などに凝ったにしては、画廊のシーンがちょっと・・・・
ヒロイン美奈子の同級生・高梨槐多(岸部一徳、明らかに村山槐多を意識してつけられた名前ですね)が父親(画家で美奈子の母と事故死した)の絵を風呂敷に包み画廊に売りに行くシーンがあります。
明るいギャラリーの壁にはラッセン、ヤマガタ風の作品がずらり展示され、さらに槐多の父親の絵というのがどうにもひどいもので、商売柄なんとも陳腐な感想をもちました。
名作映画がその時代の鏡とするならば、深読みすればわが国の美術状況の貧困さを如実にあらわしているシーンなのかも知れません。
オットー・プレミンジャー監督、サガン原作の「悲しみよこんにちは」の画廊シーンが当時新進の画家だった菅井汲先生の個展(実写)だったことを考えると、なんか寂しいですね。あれは間違いなく1950年代のパリの象徴的シーンでした。
所沢市というのは随分裕福とみえて、立派な市民文化センターがあり、大中小、三つもホールがある。そのひとつで、<ミューズ・シネマ・セレクション 世界が注目する日本映画たち>という催しがあり、昨日小津安二郎監督の「東京物語」と緒方明監督の「いつか読書する日」のニ本を楽しんできました。
二本とも前に見たことがあるので、筋を追わなくて済み、映像の端から端までじっくりと眺め回すことができました。
「東京物語」では尾道と東京の昭和20年代の風景、街の風俗、人々の暮らしぶり、特に郊外住宅や職住一体の下町の美容院、女性の独り暮しのアパートの空間などが実に丁寧に描かれており、いまさらのようにこの映画が名作だと実感しました。
そして出演者たちの日本語の美しさ。
それぞれのシーンの実際の撮影場所についても詳しい考証がなされているようで、下記のサイトが参考になりました。
http://www.tokyo-kurenaidan.com/ozu-tokyo1.htm
映画の上映に先立って主催者だか企画者だかの女性のおしゃべりがあったのですが、蛇足で、「原節子さんと香川京子さん以外はみんなお亡くなりになって」などと言われるとこちとらへそ曲がりなもので、映画は主役の人たちだけのものじゃあないだろう、長男(山村聰)の子供達二人はどうした、次女(香川京子)の教え子や近所の子供達は健在だろうとちゃちを入れたくなる。
もう一本の緒方明監督の「いつか読書する日」は昨年、渋谷のユーロスペースで上映され随分評判の良かった映画です。私も社長に内緒で、こっそり画廊を抜け出して見に行ったのですが、50歳になった中年男女のラブストーリーで牛乳配達の大場美奈子(田中裕子)がいいですね。
題名の通り、緒方監督はヒロインの部屋の本棚にはずいぶんと凝ったようで、ハヤカワミステリーなど一冊一冊を吟味して東京から大量の本を撮影地の長崎に運んだようです。
そんなに本や、活字、町の看板などに凝ったにしては、画廊のシーンがちょっと・・・・
ヒロイン美奈子の同級生・高梨槐多(岸部一徳、明らかに村山槐多を意識してつけられた名前ですね)が父親(画家で美奈子の母と事故死した)の絵を風呂敷に包み画廊に売りに行くシーンがあります。
明るいギャラリーの壁にはラッセン、ヤマガタ風の作品がずらり展示され、さらに槐多の父親の絵というのがどうにもひどいもので、商売柄なんとも陳腐な感想をもちました。
名作映画がその時代の鏡とするならば、深読みすればわが国の美術状況の貧困さを如実にあらわしているシーンなのかも知れません。
オットー・プレミンジャー監督、サガン原作の「悲しみよこんにちは」の画廊シーンが当時新進の画家だった菅井汲先生の個展(実写)だったことを考えると、なんか寂しいですね。あれは間違いなく1950年代のパリの象徴的シーンでした。
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