

連休前の慌しい時間を縫って、戦後にできた建築物としては初めて国の重要文化財に指定されることになった広島の二つの建築を見に行ってきた。
丹下健三設計の「原爆資料館」、村野藤吾設計の「世界平和記念聖堂」。
広島には何度も行ったことがあるのに、仕事ばかりで、建築をちゃんと見る余裕がなかった。
ノーベル平和賞のような政治的配慮を感じさせる選定だったが、解体、取り壊しの続く日本の近代建築への評価見直しになればいいなあと思う。
「世界平和記念聖堂」はいきなり訪問したにも拘わらずシスター(?)の方に親切にしていただいた。「パンフレットはドイツ語、英語、どちらになさいますか?」と、また外人に間違えられた。
片や重文指定を受け手厚く(?)保護されるものもあれば、他方、御茶ノ水の文化学院(西村伊作)や銀座の親和銀行(白井晟一)のように取り壊されていくものもある、恐らく所有者はこれらの建物の価値を十二分に理解されているに違いない。
だがしかし、土地本位制という経済原理の前には、なすすべも無いのだろう。
東京の一等地にあることの悲劇で、これが辺境のど田舎にあったら間違いなく生き延びるだろう。
そんなことを考えていたら、青森からすばらしいプレゼントが届いた。
「A haus」(アーハウス)という鄙には稀なる本格的建築雑誌の第3号である。
昨年出た創刊号が「前川國男と弘前」特集、第2号が「青森・モダニズム残影」特集だった。
いまどきこんなに贅沢な雑誌、大丈夫なのかしらと心配したが、昨秋の弘前建築ツアーの折に、編集チームの皆さんに御会いして、その力まない自然体の姿勢に安心した。のんびり出せるときに出すという雰囲気でした。
980円、安い!!!
青木淳さんの設計された「青森県立美術館」が巻頭特集だが、「産業がつれてきた建築 青森の近代化遺産から現役工場まで」という特集がいい。
壮大なる夢の港湾都市構想を掲げた事業家登場(鈴木誠作)
わずか5年の操業で頓挫した巨大工場
使われることなく60年立ち続けるアーチ鉄橋(幻の大間鉄道)
などなど見出しを読んだだけでわくわくするでしょ。
北端の地に立つ工場、橋梁、打ち捨てられた廃墟の中に、近代日本の勃興期の息吹が伝わってくる。
きっと解体する費用の方が高くつくんだろうな。
かくして、廃墟が生き延び、やがて重文指定を受ける(なんてことにはならないか)・・・ご一読ください。
http://www.a-haus.net
Ahaus編集部ファックス:017-776-1745
雑誌はときの忘れものにも置いてありますので、ご希望の方はどうぞ。
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