2007年賀状

どうも歳のせいか、それとも生来の怠惰な性質が表面化したものか、新年のご挨拶をきちんとせぬ間に早2週間がたってしまいました。
あらためて、新年明けましておめでとうございます。
本年もよろしくご贔屓のほど、お願い申し上げます。

昨年は、何かに追いかけられるように展覧会を13本も組んでしまい、てんてこ舞いの一年でしたが、実はそれは無意識のうちに、遅れている種々のプロジェクトの言い訳にやっていたような気がしないでもありません。
それほど、お約束したプロジェクトの遅滞がおりのように溜まってしまいました。
今年は何としても、それらの遅れを取り戻し、また懸案だった事柄にも取り組んで行きたいと思う次第です。

先ず何といっても、磯崎新連刊画文集「百二十の見えない都市」第二期の完成が今年の至上命題です。
建築家・磯崎新の生涯のテーマである「見えない都市」を、書き下ろしのエッセイと版画で、それも120都市を描ききるという大プロジェクトは第一期12都市が2001年~2002年にかけて完成しました。ここまでは順調だったのですが、その後の第二期12都市の制作が何度か中断してしまいました。
その間、途中降板となった横浜トリエンナーレのディレクター就任問題があり、これも負け戦となった福岡オリンピック招致計画があり、その都度、磯崎新先生の精力がそちらに向かってしまい、なかなか落ち着いて画文集に集中していただけませんでした。
版元の私たちにできることは、磯崎新先生の目指すところに関連する資料を集め、いつでも先生が制作に入れるよう、版画工房と連携をとりつつ、ただひたすらスタンバイの毎日でありました。
やっと昨春、第二期12都市のうちの4都市を完成することができ、お待ちいただいているパトロンの皆様にお届けした次第です。
本来は、第二期12都市が全部完成してからお披露目する予定でしたが、第一期から余りにも時間がたってしまったため、とりあえず今回完成した4都市分を、いまギャラリーに展示しています(1月27日まで)。

2007年は何としても、残り8都市を完成していただきたい、ただただそれを祈るばかりです。
私は日本の現代版画が活力を失ってしまったのは、「連作」を忘れてしまったことも原因していると思います。
ゴヤ「ロス・カプリチョス」「戦争の惨禍」、ピカソ「ボラール・スーツ」「347銅版画」、シャガール「ダフニスとクローエ」「ラフォンテーヌ・寓話」、ミロ「バルセローナ」、ルオー「ミゼレーレ」、マチス「ジャズ」、広重「東海道五十三次」、北斎「富嶽三十六景」etc.,
古今東西の名作版画は例外なく連作の中から誕生しています。
版画は連作に尽きる、私はそう確信しています。
それらはすべて、作家と版元の長い長い根競べの末に完成したものです。
私たちの磯崎新連刊画文集「百二十の見えない都市」はいったい何年先の完成になるかはわかりませんが、とにかく今は第二期の完成に向けて全力を挙げたいと思っています。

尚、第二期12都市(限定35部、90万円)については、まだ席に余裕があります。
あらためてご購読の募集を行いますので、ご後援を心よりお願いする次第です。磯崎新 百二十たとう