
商売柄、各種人名事典は必携の資料である。
分厚い枕になるようなものもあるが、ちょっとした暇を見つけて眺めるコンパクトな人名事典も何冊かある。
事務所と自宅にそれぞれおいて重宝しているのが、美術出版社の「20世紀の美術家500」と「世界の美術家500」の2冊。16×12.5cm、文字通り500人の美術家を各人1ページづつ代表作1点と実に簡単な略歴で紹介している。両方とも500ページちょっと。
翻訳書なのだが、訳者は美術書の翻訳では第一人者の木下哲夫さんです。
赤表紙の「世界の美術家500」は中世から現代まで美術史上欠かせない画家・彫刻家500人をABC順に収録しています。
さて、クイズです。
赤表紙の「世界の美術家500」に収録されている日本人は何人でしょう。
応えは5人(安藤広重、葛飾北斎、喜多川歌麿、イサム・ノグチ、藤田嗣治)。
まあ、納得の人選ですかね。
青表紙の「20世紀の美術家500」も同じく500人をABC順に収録しています。
収録されている日本人は、オノ・ヨーコ、河原温、白髪一雄、イサム・ノグチ、藤田嗣治、舟越桂、宮島達男、村上三郎、森村泰昌、吉原治良の10人。
こうなるとかなりの「独断」ですね。わが愛する草間彌生先生も入っていないし・・・・
人名事典の面白さはこういう人選の独自性にもあります。

さて、では日本にもこういう面白い美術家事典がないものかと思っていたら、やはり出ました。
三上豊編著「世界に誇れる日本の芸術家555」PHP新書、880円(税別)、340ページ
収録人数は555人と前掲書に似ていますが、内容はかなり違います。
カバー裏に書かれた内容紹介を全文引用しましょう。
<藤田嗣治、黒澤明、岡本太郎、荒木経惟、宮崎駿・・・ 海外でも評価される日本のアーティストたちは山ほどいる! ピカソやセザンヌだけが「芸術」ではない。本書は日本人なら覚えておきたい、大衆芸術の担い手たちを紹介。絵画や写真だけでなく、世界から注目されているマンガ、アニメ、映画など、幅広いジャンルを網羅。モダンアートの基礎が築かれ変貌しはじめた1930年から80年の時代を中心に、随所に図版を盛り込んで構成する。文化のみならず世相の変遷もが見えてくる、一家に一冊の芸術家小事典。>
「一家に一冊」は笑ってしまいますが、かなり大胆な人選です。
収録されているのは、1)竹内栖鳳(1864~1942 絵画)、2)小川芋銭(1868~1938 絵画)、3)横山大観(1868~1958 絵画)から始まって、553)高橋留美子(1957~ マンガ)、554)日比野克彦(1958~ グラフィックデザイン、イラストレーション)、555)岩井俊雄(1962~ メディアアート)まで555人。
前掲の美術出版社がオーソドックスな画家・彫刻家というジャンルからなのに比べ、PHP新書は先ず彫刻家は外しています。アニメやマンガ、映画などを含み、現代日本が発信している文化状況を正確に反映しています。
私の知らない人もたくさんいて、当分は寝しなに眺めようと思っています。
ときの忘れものの販売用本棚にも常備してあります、ご来廊のおりにでも手にとってください。
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