小川信治　Shinji OGAWA「WITHOUT YOU "TO CATCH A THIEF"（泥棒成金）」
　1997　油彩・キャンバス
　45.2×56.0cm（10号）
　裏面にサイン付シール貼付

◆誰でもが知っている（既知の）映画や名作絵画の一場面から、登場人物を一人消しさり、残された（描かれた）人物とシーンだけで場面を成立させた[WITHOUT YOU]シリーズの初期を飾る秀作です。
豊田市美術館「空き地」（2000年）や大阪の国立国際美術館の個展（2006年）で、一躍その存在がクローズアップされた小川信治ですが、考え抜かれたコンセプトを卓抜な描写力で表現する様は見る人を圧倒します。
名古屋を中心に活動していた小川信治が、東京で初めて発表したのは、1997年6月のときの忘れものの個展でした。
そのときの個展では、「市民ケーン」「カサブランカ」「或る夜の出来事」「オリエント急行殺人事件」「荒野の決闘」「知りすぎた男」などの映画をモチーフとした作品を展示しました。いわば歴史の捏造ともいうべき絵画です。
小川自身は、「私たちが信じて疑わないもの、普通だと確信しているものが既に異形のものへと変化し始めているという直観につき動かされて制作を始めた」と言っています。
極めて伝統的な技法を用いながら、小川の精緻な描写力をもって初めて可能である大胆な試みといえるでしょう。