難波田龍起聖堂

難波田龍起 Tatsuoki NAMBATA「聖堂」
 1978年 エッチング+アクアチント(3版4色)
 28.0×18.0cm
 Ed.35  Signed
 *レゾネNo.100

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◆「難波田龍起展 没後10年ー未発表版画を中心に」もいよいよ本日が最終日です。
この展覧会には難波田龍起先生ご自身が手彩色された銅版画の他に、色版を使ったカラー銅版画も数点出品しています。
難波田龍起先生の銅版画の作り方は、先ずグランドをひいた銅版に先生がニードルで描画され、それを他の作家(例えば木村茂先生)や工房に製版して貰い、それを刷り師が刷るという具合に進行しました。
最初はモノトーンの試刷りができるわけですが、難波田先生はすぐにそれに手彩色を加えて私たちに見せてくださる。それは嬉しいのですが、数部は手彩色できてもエディション全部、たとえば30部とかに一枚一枚手彩色するのは時間もかかるしたいへんです。
そこで、効率を考える版元としては、先生の手彩色を「色版」におきかえ、カラー銅版画として完成させたいと思うわけですね。
このときもそうでした。
先生がモノクロの試刷りに手彩色をしたものを原稿に色の数だけ「色版」をアクアチントで作ることになった。
ところが、刷りを担当してくれた山村兄弟版画工房の素夫・常夫の双子の兄弟は、工房のポリシーとして「うちは製版はしない(製版は作家の領分だ)。刷りだけをやる」という姿勢でした。
さて弱りました。
まさか、木村先生に色版まで頼むわけには行かないし、版画のプロではない難波田先生にアクアチントの版をつくることなど不可能です。
お名前を挙げませんが、そのとき救世主としてあらわれたのが、当時新進の銅版画家として注目されていたO先生です。O先生は、色版を含む、難波田先生の銅版の製版を引き受けてくださったのでした。
難波田龍起先生が後輩の作家たちに深く敬愛されていたからに違いありません。

かくして、版元の私としても会心の作「聖堂」を世に送り出すことができたのでした。