那須

2008年が明けました。
皆様によきことの多かれと祈る次第です。
掲載した写真は随分前になりますが、わが露天風呂愛好会の例会で那須の山深く分け入り北温泉に行った折の写真です。
ご覧のようにプールのごとき露天風呂で、入ったは良いのですが、広すぎて、つまりぬるい。出るに出られず、上半身はがたがた震えていたという、その様を愛好会会長の石田了一さん(刷り師)が撮影してくれたものです。因みにこの時社長は後方本館二階の左端の部屋でコタツに入りながら熱燗で一杯やっておりました。

こんな写真を掲げたのは、ときの忘れものはまだ冬眠中でありまして、スタッフもそれぞれ故郷に帰ったり、家族揃ってスキー場暮らしだったりで、かくいう私たちも明日から故郷群馬の秘境の温泉に浸かり、しばし英気を養いたいと思っているからです。
そんなわけで、あと数日はこのブログも休ませていただきます。
本日は年賀状をチェックするために出勤した次第です。営業は8日からです。

さて、ときの忘れものは昨年は(も)積み残し案件が多く、心苦しい思いで新年を迎えました。
版画掌誌第6号の刊行はついにならず、皆さんのご期待に添えませんでした。
何より辛かったのは、大勢のパトロン(予約購読者)によって支えられている磯崎新先生の連刊画文集「百二十の見えない都市」の第二期が途中でストップしていることです。
二つともそれぞれ理由のあることなのですが、今年は何とか実現できるよう力を尽くすつもりです。

私個人にとって昨年の一番の教訓は「歳をとった」ということでした。
仕事の(実務の)スピードは極端に落ち、記憶力もとみに落ち、昔だったらおかすはずのないミスを連発し、我ながらその情けなさにしばしば呆然としました。
そのかわりといっては何ですが、実務は若い者に任せ(ることができるようになり)、できないことはやらないという早期決断(断念)ができるようになりました。
まあ、じたばたしなくなったということでしょうか。老いては子に従いとつくづく思う次第です。
今年の初詣のお御籤には「悠々と所信に向つて活歩して下さい。周辺に起る変化にとらはれる要はない」とありました。都合よく解釈するならば、私たちにしかできない仕事がある限り、何とか皆様のご後援にすがって続けて行きたい、そう思っています。
お正月早々、不景気な書き込みで恐縮です。

私の盟友であるデザイナーの北澤敏彦さんからの年賀のメッセージに「真当に息吹き込みて泡銭」とありました。
少し注釈すると、昨年北澤さんは、クライアントに無理難題をふっかけられて遂にきれて(温厚な北澤さんには、いまだかつて無かったことだそうですが)二つも仕事を断ったそうです。
景気の良かった時代は、デザインは「アイミツ」(複数の事務所から見積もりを取る)で決まっていたのですが、バブル崩壊後はアイミツどころではなく、「これでやってくれ、いやだったらほかに出す」という一方的な宣言でデザイン料が決まるようになってしまった。
もともと数量化できないデザイン料をそういう無茶苦茶な論理で査定されたら、弱小の事務所はたまったものではない。
良い仕事をしたい、それにはそれに見合うペイが必要だ、とはならない理不尽な時代になってきたのですね。

北澤さん曰く<真っ当な仕事をして、あぶく銭を稼ぎたいよね>。
同感です。
ときの忘れものも、きちんとした作品をきちんと評価して紹介して行きたい。

人間、好きなことしかできない(しない)というのが、昔からの私の傲慢な信念です。
残り少ない人生を、友人たちと夫婦揃って楽しみ、もし「ときの忘れもの」があればスタッフともども拾い続けよう。
2008年のささやかな抱負であります。