◆『ハインリッヒ・フォーゲラー展』図録、 リッカー美術館、24.5×22.0cm、
100ページ、
1979年1月7日~2月18日の会期で開催された展覧会の図録です。
当時、銀座6丁目、泰明小学校の前にあったリッカー美術館は浮世絵を中心に版画の展覧会を積極的に行っており、私達版画ファンにとってはとても居心地の良い小さな美術館でした。
この展覧会はヴォルプスヴェーデ資料館の協力を得て開催され、図録にはフォーゲラーの銅版画を中心に素描、水彩、蔵書票、スプーンなど153点の図版が掲載されています。
テキスト
塚越敏「ハインリッヒ・フォーゲラー ーその人と芸術ー」
海野弘「白樺・春・メルヒェンー
ハインリッヒ・フォーゲラーの生涯と作品」
岩下眞好「ヴォルプスヴェーデを訪ねて」
川島真仁郎「有保克也さんの出会ったヴォルプスヴェーデの風景」
略年譜、参考文献、他
この図録は、古本屋でもネットでも2,000円ほどで容易に入手できます。
銅版画が多数収録されており、テキストもしっかりしており、フォーゲラーを知るにはいい入門書になると思います。
◆坂崎乙郎『夜の画家たち 表現主義の芸術』平凡社 16×11cm
328ページ
著者の坂崎乙郎が自殺してもう20数年が経ちました。この名著が『エゴン・シーレ』とともに平凡社ライブラリーに入って、今の若い世代にも手軽に読みやすくなりました(1,200円)。
フォーゲラーを直接は取り上げていませんが、第4章<わがための祝いーパウラ・モーダーゾーン=ベッカー>で、ヴォルプスヴェーデに集ったひとりの女性作家を取り上げています。
当時、フォーゲラーたちが熱狂的に支持される中で、パウラ・モーダーゾーン=ベッカーは自分の夫にすら認められず31歳の短い生涯を終えましたが、果たして歴史の評価は、いまや彼女の上にある。
坂崎は<ヴォルプスヴェーデ自然派>について、
「かれらはバルビゾン派に遅れること半世紀で、その足跡を追った。彼らはミレー、ルソーを手本にして、せまいアトリエと既成絵画の似非自然主義に反逆し、曠野のまんなかで沈黙と孤独の制作活動を開始した。・・・(中略)しかし、彼らがその血脈のなかに牢固としていだきつづけてきた理想主義ーいいかえれば、つねに感情が凝視をくもらせるドイツ人の、感傷的・献身的な対自然感情は、ついに彼らをしてバルビゾン派が過去において達した地点にすら到達せしめなかった。ヴォルプスヴェーデの自然派は、同時代の画壇のあらゆる思潮に眼をふさぎ、甘んじて郷土芸術の一分派たるにとどまったのである。」と手厳しく断じています。
それに対して、彼らのなかでただひとりパウラ・モーダーゾーン=ベッカーについては、暖かに丁寧に論じています。 これが書かれたのが1960年ですから、坂崎の慧眼や畏るべしですね。
2005年伊丹市立美術館で「パウラ・モーダーゾーン=ベッカーとヴォルプスヴェーデの画家たち」という展覧会が開催され、日本での認識も深まってきたようです。この展覧会については後日ご紹介しましょう。
◆ときの忘れものでは4月4日~4月19日まで「フォーゲラーとその時代展」を開催中です。

ハインリヒ・フォーゲラー Heinrich Vogeler
「いばら姫」
1897 銅版 27.0x25.0cm
版上サイン
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