◆種村季弘『ヴォルプスヴェーデふたたび』1980年 筑摩書房刊
21.2×15.8cm 290ページ
帯には「世紀転回期、ドイツの寒村に花開いた、フォーゲラー、パウラ・ベッカー、リルケなど芸術家たちの審美的共同体、その激しくも悲劇的な運命を活写する紀行的評伝。」とあります。
さらに「よどみすえ、老化した前世紀末の美術界。アカデミーの死臭をかなぐり捨てて、人びとの生きている現場で、生を美化し、美を生きようとする青年芸術家運動が生まれる。ユーゲントシュティール(青年のスタイル)、アール・ヌーヴォー、モダン・アートと名づけられて、それは、またたく間に世界各地に燃えひろがった。けれども、自由な生と新しい美を求めて旅立った芸術家たちの行手には、めくらむような天国と地獄が。」
巻末には「年譜」はもちろん、詳細な「人名索引」がつけられています。
フォーゲラーとヴォルプスヴェーデ派を論じた名著です。どうしてこんな面白い本があまり売れないんでしょうかね。古本屋で3.000円ほどで入手できます。
◆海野弘『世紀末のイラストレーターたち』 1976年 美術出版社
21.8×15.8cm 280ページ
巻末にはこれも「人名索引」がつけられています。
「十二人のイラストレーターを訪ねてゆくうちに、これらの人々がそれぞれの世紀末と特別のかかわりをもっていること、すなわちイラストレーションにとって世紀末は特別な時代であったとこが、あらためて感じられた。世紀末のイラストレーションは一目でわかる独特の姿態と雰囲気をもっている。(中略)十九世紀の象徴主義的芸術のイコノロジーをとらえるために、世紀末のイラストレーションは貴重な手がかりとなるだろう。まなざしが純粋視覚だけではなく、精神史的なコンテクストをはらむとすれば、絵を読むことの意味がもう一度考えられなければならないし、その時、イラストレーションは新たな意味を持ちはじめるだろう。」(同書あとがきより)
ウォルター・クレインからレオン・バクストまで12人の作家を取り上げていますが、図版も豊富。フォーゲラーだけでも40点あまりある。
夢二についても論及しています。
「フォーゲラーの絵の女たちはどこか夢二をおもわせるが、くらべてみると、夢二にはほとんど自然がないことに気づくだろう。フォーゲラーの絵は、その中の人物を消しても風景画としての力を失わないが、夢二の絵では、背景は添えものにすぎない。フォーゲラーにとって、風景はそれ自体、まなざしの中央にしっかりと据えられるべきものだった。(中略)フォーゲラーにとって風景とはなんだったのだろう。」
上記2冊は、フォーゲラーのファン必読の書と思います。
◆ときの忘れものでは4月4日~4月19日まで「フォーゲラーとその時代展」を開催中です。

ハインリヒ・フォーゲラー Heinrich Vogeler
「春の夕べ」
1897 銅版
19.8x11.8cm
版上サイン
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