「フォーゲラーとその時代展」は本日が最終日です。
画廊では私どもの手元にあるフォーゲラー関連の書籍も展示し閲覧できるようにしています。
最後に先日ご紹介した坂崎乙郎『夜の画家たち 表現主義の芸術』で高く評価されたパウラ・モーダーゾーン=ベッカー(1876~1907)についての文献を紹介してこの連載を終了します。
◆佐藤洋子『パウラ・モーダーゾーン=ベッカー 表現主義先駆けの女性画家』
2003年 中央公論美術出版
21.7×15.5cm 264ページ
定価2,800円(+税)
<再評価される画家のわが国初の本格評伝>と帯にあります。
<女性画家パウラ・モーダーゾーン=ベッカーに対する評価の高まりは、近年多角的な成果を生んでいる。夭折のあとの「発見」から、生誕百年にあたる1976年までは、その絵画世界の独自性より、ヴォルプスヴェーデに連なる異分子的な見方が主流だった。生前の孤立と芸術潮流の変遷が、彼女の絵画史上における位置を不鮮明にしてきた。
1980年代後半からドイツにも及んだフェミニズムの解釈によるパウラ像は、この女性画家の姿を、時代と人びとに近しいものにした。関心は一挙に拡大した。詩人リルケと、同時代の造型芸術とのかかわりや、先達、ケーテ・コルヴィッツとの対比のなかで、女性画家パウラの息づかいは、ゆたかな今日性を帯びてきた。>(本書より)
著者は早稲田大学大学院日本語教育研究科教授。


◆『パウラ・モーダーゾーン=ベッカーとヴォルプスヴェーデの画家たちー素描と版画1895-1906-』展図録(2冊組)
2005年 伊丹市立美術館
本体(左)独語版 27×20cm 150ページ
日本語訳(右) 26×19cm 40ページ
テキスト=ヴルフ・ヘルツォーゲンラート(序文)、カタリーナ・エーリング
「日本におけるドイツ2005 / 2006」の一環として、2005年に伊丹市立美術館で単独開催された「パウラ・モーダーゾーン=ベッカーとヴォルプスヴェーデの画家たち」展は、<31歳で夭折した悲劇の女性画家>(図録挨拶より)をわが国で本格的に取り上げた初めての展覧会でした。
*********
パウラ・モーダーゾーン=ベッカー(1876-1907)は、独自の絵画表現に自らの生を燃焼させた、ドイツ表現主義絵画の先駆者として知られています。
澄みきった自然の中で、いのちあるものに慈しみのまなざしを投げかける一方、パウラはセザンヌやゴッホ、ゴーギャンなど、最先端のパリ美術界からも刺激を受けます。研ぎ澄まされた土着性と近代感覚は、やがて単純化したフォルムによる独自の色彩言語へと結実しました。自ら「ざわめく音、あふれる量感、喚起するもの、つまり力強いものに色彩を与えたいのです」と語るように、彼女の作品からは、対象が放つ力強い生命力と、その普遍性が見てとれます。
本展では、素描と版画という生活に密着した表現媒体を通じて、パウラをはじめハインリヒ・フォーゲラー、フリッツ・マッケンゼン、オットー・モーダーゾーンら、この芸術家村の住人たちの作品を辿ります。さらにはドイツ近代美術に一条の光を投じたこのグループと、詩人ライナー・マリア・リルケらとの交遊も浮き彫りにします。生と芸術、文学と絵画、市民性と地方性といった総合芸術の魅力が、わが国で本格的に紹介されるのは初めてのことです。この好機に、北ドイツの寒村に花開いた芸術家村・ヴォルプスヴェーデの世界に、ぜひ触れてみてはいかがでしょうか。(同館HPより)
**********
この図録(2冊組)は、3,000円で今でも同館で買えるようです。
ところで、伊丹市美の展覧会はifa(Institur fur Auslandsbeziehungenドイツ対外文化交流研究所)が組織した国際巡回展でしたが、この作品が日本に来ているというので、伊丹で展示した作品に油彩などを加えた、いわば拡大版の展覧会「儚くも美しき祝祭 パウラ・モーダーゾーン=ベッカー 時代に先駆けた女性作家」展が2005~2006年にかけて宮城県美術館、神奈川県立近代美術館葉山館、栃木県立美術館で開催されました。
下がその図録の表紙です。

◆『パウラ・モーダーゾーン=ベッカー展』図録
2005年 美術館連絡協議会
26.7×19.7cm 240ページ
テキスト=ヴォルフガング・ヴェルナー、水沢勉、佐藤洋子、西村勇晴、木村理恵子、後藤文子
◆「フォーゲラーとその時代展」はいつもの通りひっそりとした展覧会でしたが、こういう時にしかいらっしゃらないお客様もいて、いかにもときの忘れものらしいと自画自賛しております。
次回企画は、4月22日~5月2日まで「アンドレ・ケルテス写真展」です。どうぞご期待ください。
画廊では私どもの手元にあるフォーゲラー関連の書籍も展示し閲覧できるようにしています。
最後に先日ご紹介した坂崎乙郎『夜の画家たち 表現主義の芸術』で高く評価されたパウラ・モーダーゾーン=ベッカー(1876~1907)についての文献を紹介してこの連載を終了します。
◆佐藤洋子『パウラ・モーダーゾーン=ベッカー 表現主義先駆けの女性画家』2003年 中央公論美術出版
21.7×15.5cm 264ページ
定価2,800円(+税)
<再評価される画家のわが国初の本格評伝>と帯にあります。
<女性画家パウラ・モーダーゾーン=ベッカーに対する評価の高まりは、近年多角的な成果を生んでいる。夭折のあとの「発見」から、生誕百年にあたる1976年までは、その絵画世界の独自性より、ヴォルプスヴェーデに連なる異分子的な見方が主流だった。生前の孤立と芸術潮流の変遷が、彼女の絵画史上における位置を不鮮明にしてきた。
1980年代後半からドイツにも及んだフェミニズムの解釈によるパウラ像は、この女性画家の姿を、時代と人びとに近しいものにした。関心は一挙に拡大した。詩人リルケと、同時代の造型芸術とのかかわりや、先達、ケーテ・コルヴィッツとの対比のなかで、女性画家パウラの息づかいは、ゆたかな今日性を帯びてきた。>(本書より)
著者は早稲田大学大学院日本語教育研究科教授。


◆『パウラ・モーダーゾーン=ベッカーとヴォルプスヴェーデの画家たちー素描と版画1895-1906-』展図録(2冊組)
2005年 伊丹市立美術館
本体(左)独語版 27×20cm 150ページ
日本語訳(右) 26×19cm 40ページ
テキスト=ヴルフ・ヘルツォーゲンラート(序文)、カタリーナ・エーリング
「日本におけるドイツ2005 / 2006」の一環として、2005年に伊丹市立美術館で単独開催された「パウラ・モーダーゾーン=ベッカーとヴォルプスヴェーデの画家たち」展は、<31歳で夭折した悲劇の女性画家>(図録挨拶より)をわが国で本格的に取り上げた初めての展覧会でした。
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パウラ・モーダーゾーン=ベッカー(1876-1907)は、独自の絵画表現に自らの生を燃焼させた、ドイツ表現主義絵画の先駆者として知られています。
澄みきった自然の中で、いのちあるものに慈しみのまなざしを投げかける一方、パウラはセザンヌやゴッホ、ゴーギャンなど、最先端のパリ美術界からも刺激を受けます。研ぎ澄まされた土着性と近代感覚は、やがて単純化したフォルムによる独自の色彩言語へと結実しました。自ら「ざわめく音、あふれる量感、喚起するもの、つまり力強いものに色彩を与えたいのです」と語るように、彼女の作品からは、対象が放つ力強い生命力と、その普遍性が見てとれます。
本展では、素描と版画という生活に密着した表現媒体を通じて、パウラをはじめハインリヒ・フォーゲラー、フリッツ・マッケンゼン、オットー・モーダーゾーンら、この芸術家村の住人たちの作品を辿ります。さらにはドイツ近代美術に一条の光を投じたこのグループと、詩人ライナー・マリア・リルケらとの交遊も浮き彫りにします。生と芸術、文学と絵画、市民性と地方性といった総合芸術の魅力が、わが国で本格的に紹介されるのは初めてのことです。この好機に、北ドイツの寒村に花開いた芸術家村・ヴォルプスヴェーデの世界に、ぜひ触れてみてはいかがでしょうか。(同館HPより)
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この図録(2冊組)は、3,000円で今でも同館で買えるようです。
ところで、伊丹市美の展覧会はifa(Institur fur Auslandsbeziehungenドイツ対外文化交流研究所)が組織した国際巡回展でしたが、この作品が日本に来ているというので、伊丹で展示した作品に油彩などを加えた、いわば拡大版の展覧会「儚くも美しき祝祭 パウラ・モーダーゾーン=ベッカー 時代に先駆けた女性作家」展が2005~2006年にかけて宮城県美術館、神奈川県立近代美術館葉山館、栃木県立美術館で開催されました。
下がその図録の表紙です。

◆『パウラ・モーダーゾーン=ベッカー展』図録
2005年 美術館連絡協議会
26.7×19.7cm 240ページ
テキスト=ヴォルフガング・ヴェルナー、水沢勉、佐藤洋子、西村勇晴、木村理恵子、後藤文子
◆「フォーゲラーとその時代展」はいつもの通りひっそりとした展覧会でしたが、こういう時にしかいらっしゃらないお客様もいて、いかにもときの忘れものらしいと自画自賛しております。
次回企画は、4月22日~5月2日まで「アンドレ・ケルテス写真展」です。どうぞご期待ください。
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