会場写真家の柳沢信先生が、6月2日喉頭がんで死去されました。享年71。
今年の1月、ときの忘れもので久しぶりの個展を開かれたばかりでした。
長い闘病生活で、会場には来ていただくことは叶いませんでしたが、奥様を通じ展覧会の様子を知った柳沢先生は非常に喜んでくださり、次回の展覧会開催も快くお受けしていただきました。
柳沢先生は建築写真にも優れた写真をのこされています。
私たちは写真集「都市の軌跡」などにおさめられた写真のヴィンテージ・プリントを次回個展に展示したいと希望しておりましたが、柳沢先生は亡くなる直前までそれらの作品のセレクションにあたっておられたと聞き、胸がしめつけられるような思いです。
お元気なうちに実現したかったのですが、残念でなりません。

ときの忘れものが写真を本格的に扱い出したのはつい数年前からですが、昨春の細江英公先生の個展に続いて、今年一月に柳沢信先生の個展を開いたことは、私たちがどういう写真を扱って行きたいかを示したものでした。もっともっと柳沢先生の作品を展示したかった。

柳沢信1柳沢信
「ローマ」
1993 (ヴィンテージ・プリント)
Gelatin Silver Print
22.0×32.5cm signed

*この作品は、1993年にイタリア旅行をした際に撮影された作品で、初めて海外の町や人、空気を写し取り、今後の新しい展開が期待されるものでした。イタリアから帰国して直ぐに柳沢先生本人が焼いたもので、作品の裏にフルネームでサインがしてあります。しかし、その直後の喉頭癌と食道癌の手術によって、シャッターを切ることができなくなり、長い闘病生活に入られました。
柳沢信先生の最後の連作となってしまいました。
謹んでご冥福をお祈りします。