小野隆生の「断片」をめぐって
その3.シャツと眼鏡―――しぐさの残像を切り取る
小野隆生男のいる部屋で3
 さて、画家が身に付けるモノ第3弾は、シャツと眼鏡です。白いYシャツをモチーフとした作品は、今回の個展では他に2点ほど展示されています。ただし、それらは黒いネクタイをしていて、おまけに正面を向いているので、どこかかしこまった印象を受けます。それに比べてこのシャツは、ノーネクタイでしかも斜めの角度から描かれているため、少しリラックスして見えます。シャツそのものを描いたというよりも、それを着る人(画家本人かどうかはわかりませんが)がそれまでとっていたしぐさの残像のようなものが浮かび上がってくる感じで、とても惹かれます。
 この作品で重要なのは、シャツの胸元に置かれた眼鏡です。眼鏡を外すという行為。
そこには、仕事や読書に集中していたときの張り詰めた気持ちからの解放といった意味合いがあるよう思うのです。
 スナップショットのように一瞬を切り取った「断片」。小野隆生のなかでは、珍しいタイプの作品といえるでしょう。
   (2008年7月8日 いけがみちかこ)

*掲載図版は小野隆生「男のいる部屋で Ⅲ」」池田20世紀美術館カタログno.12
1998年 テンペラ・板 52.0×92.0cm

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小野隆生シャツ左の写真は、池田20世紀美術館の展示スナップです。

◆6月26日~9月30日までの三ヶ月間、伊豆の伊東にある池田20世紀美術館で「小野隆生展 描かれた影の記憶 イタリアでの活動30年」が開催されています。展示の様子はスライドショーでご覧になれます(コチラをクリックしてください)。
小野隆生展表面小野隆生展裏面