「再発見!プリントの美」より、今日は、マン・レイの「白と黒」をご紹介します。
マン・レイは、もともとアメリカで油彩やオブジェ作品を制作していましたが、マルセル・デュシャンとの出会いにより、ダダに加わります。その後、デュシャンを追うようにパリに渡り、ダダのメンバーとの交流が始まります。パリに移ってすぐにモデルのキキと出会い、同棲を始めます。自分の作品を撮影するために持っていたカメラで、食べていくための手段として、他の作家の作品や上流階級の人々のポートレイトを撮っているうちに、それがいつの間にか写真家マン・レイとなります。面白いものです。現像の失敗から偶然レイヨグラフの手法を発見したとか、リー・ミラーが現像中に誤って明かりをつけたためソラリゼーションを発見したとか、真偽のほどは定かでありませんが、逸話もいろいろあります。マン・レイは、1925年ごろからファッション写真を撮るようになりますが、この「白と黒」という作品が初めて発表されたのは、なんとヴォーグ誌上だったようです。端正で色白なキキの顔とアフリカのお面との対比が美しい(キキもこの頃が最も美しかったのでは)作品で、マン・レイの代表作としてだけではなく、作品自体がもはやアイコンとなっていて、マン・レイを知らなくてもこの作品は見たことがあるという方も多いはずです。また、今回出品したプリントは、ピエール・ガスマンによるもので、裏にスタンプがあります。ガスマンは、マン・レイのほか、ブレッソン、アジェ、ブラッサイ、ロニ、キャパら錚々たる写真家のプリンターとして名を馳せた人です。たまに写真を写真に撮ったデュープが出回ったりするので、ガスマンのスタンプは、それがあるかないかで、そのプリントの価格に大きく関わってくるくらい、重要なファクターとなります。
などと、能書きはいくらでも書くことが出来ますが、実際にプリントをご覧いただけば、言葉など無用であることをご理解いただけると思います。
ここまで書いておいてたいへん申し訳ありませんが、この作品はすでにお買い上げいただいた方の許に行ってしまいました。今展示しているのは、2002年にプリントされたものです。ご希望がありましたら、他にガスマンのプリントしたマン・レイ作品がありますので、そちらをご覧いただけます。
マン・レイ「白と黒」マン・レイ「白と黒」
1926年(ピエール・ガスマンによる後年のプリント)
ゼラチンシルバープリント
21.5×28.1cm
裏面にアトリエ、およびピエール・ガスマンのスタンプあり

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