今日のお薦め写真作品は、4月24日まで開催中の「The NUDE」展より、ロバート・メイプルソープ「America」をご紹介します。

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mapplethorpe_03_america-manロバート・メイプルソープ
"America"リトグラフ3点組
(各)
1988年
リトグラフ
75.5×63.5cm
スタンプサイン
stamp

この作品は、ロバート・メイプルソープが1988年に撮影した写真をもとに制作された3点組のリトグラフです。試刷りにOKを出してサインをしたものの、その後病状が悪化し、メイプルソープが亡くなる2ヶ月前、1989年の1月4日に彼の面前でスタンプサインが押されたというものです。リトグラフですが、イメージはひじょうに精細で、単色のバックは、その中のモノクロの被写体が浮き上がってくるような効果をあげていて、スタイリッシュな作品になっています。

メイプルソープは、いろいろな意味で逸話の多い写真家です。「伝説」とも言えるかもしれません。富豪のサム・ワグスタッフに見出されて写真家としてデビューを飾り(この辺りのいきさつは昨年公開されたドキュメンタリー映画「メイプルソープとコレクター」で知ることができます)、歌手のパティ・スミスと同棲しながら、ゲイであることを隠すことなく、片や厳格な構図で静謐な静物やヌードの写真を撮るかと思えば、同性愛やSMの性向をあからさまに写した作品を発表するなど、毀誉褒貶相半ばする作家でした。しかし、彼の作品がアートシーンに与えた影響は大きく、現在も高い評価を受けています。
昨年、フィレンツェのアカデミア美術館で、メイプルソープの展覧会が開催されたのは画期的な出来事と言ってよいと思います。日本では、彼の写真集のわいせつ性を争う裁判が起きるなど、まだ生々しい事件がありますが、今後、「伝説」が消えた後、遺された作品の評価はますます高くなることでしょう。

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◆ときの忘れものは、2010年4月13日[火]―4月24日[土]「The Nude 写真展」を開催しています。
NUDE展DMロバート・メイプルソープ、細江英公、マン・レイ、植田正治、ジョック・スタージス、イリナ・イオネスコ、カリン・シェケシー、エレン・フォン・アンワース、中島秀雄、大坂寛、井村一巴、五味彬、服部冬樹、菅原一剛たちのヌード作品をご紹介します。