昨2010年10月号(300号)をもって、休刊になった雑誌『彷書月刊』の編集発行人・田村治芳さんがお正月1日に食道がんで亡くなられた。享年60。
古書店主らが1985年に創刊した『彷書月刊』はユニークな特集形式で、古書好きの人には人気のある雑誌だった。亭主も2008年10月号の特集「画廊回遊」に一度拙い文章を寄稿させていただいたが、とうとうご本人にはお目にかからず終いだった。
一昨年休刊を宣言した頃からご自身のがんの闘病日記を「ナナフシの散歩道」として連載されていたが、まさかこんなに早く逝かれるとは思ってもみなかった。
それに随分とお若い。ご冥福をお祈りいたします。
さて、板垣鷹穂といってももう知る人は少ないかも知れない。
参考までにコレクターの声でおなじみの中村恵一さんのブログにも面白い記事が書いてあります。
戦前から戦後にかけて、美術史家・美学者として教壇に立ちながら、建築・映画・演劇・写真などの芸術諸ジャンルで多彩な評論と実践を展開した、いわば知る人ぞ知る、守備範囲の広い研究者でした。
このたび筑波大学教授の五十殿利治さんたちによる『板垣鷹穂 クラシックとモダン』という初めての総合的な研究書が刊行されたのでご案内します。

五十殿利治編『板垣鷹穂 クラシックとモダン』
出版:森話社
発行:2010年11月
371ページ
21.4 x 15.4 x 3.2 cm
価格:5,775円(税込)
本書は、2003年に開催された板垣鷹穂シンポジウムを契機に生れたもので、古典的な世界に精通するとともに、新たな芸術を追求するモダニストの顔をもった板垣の全体像に迫ります。
◆目次
まえがき……五十殿利治 7
[I]評論家・板垣鷹穂
機械文明と映画教育……岩本憲児 15
板垣鷹穂の写真展月評・『アサヒカメラ』一九三三年~四二年 モダニズムとアマチュア写真……五十殿利治 43
レヴュー時代の静観者 板垣鷹穂とレヴュー……中野正昭 67
[II]プランナー・板垣鷹穂
批評の造形 「整本家」としての板垣鷹穂……川畑直道 91
板垣鷹穂と堀野正雄の共同実験……鬼頭早季子 103
板垣鷹穂と都市美協会……白政晶子 131
[III]美術史家・板垣鷹穂
板垣鷹穂・「新しき芸術」以後の合理主義……河田明久 157
モダニズム建築とナチス建築への視線 板垣鷹穂の戦前・戦中の西洋近代建築評論……安松みゆき 187
憧憬の建築 板垣鷹穂の「船」……鈴木貴宇 217
人格主義の美術史 児島喜久雄、板垣鷹穂と大正教養派……佐藤香里 241
表現的空間の渉猟者 長谷川堯が語る師の表情……長谷川堯/聞き手=鈴木貴宇 273
[IV]板垣鷹穂の私的圏域
直子と鷹穂 戦前・戦時下・占領期の連続と断絶……川崎賢子 297
父の手紙/父としての板垣鷹穂……竹内禮子/板垣哲子 311
板垣鷹穂の日記……安松みゆき 319
[資料]
板垣鷹穂年譜……安松みゆき 331
板垣鷹穂文献目録……安松みゆき/白政晶子 337
◆板垣鷹穂(いたがき たかお)(一八九四~一九六六)は今日では知名の美術史家あるいは美術評論家とはいえない。そもそも今日容易に手にとれる本はごく限られており、しかも専門書であって、一般読者には縁遠い存在である。また板垣鷹穂をどのように呼ぶのかも簡単ではない。先に美術史家、美術評論家としてみたが、いずれもそこからこぼれ落ちてしまう部分が大きいことは本書の目次をざっとみただけでも理解されよう。私は以前「視覚文化研究の先駆者」と形容してみたが、いかにも苦し紛れの形容である。そのこぼれ落ちてしまう部分をまずもってすくい取ることが先決である。
それゆえ本書は、もとより評伝を意図するものではない。板垣鷹穂が大正・昭和、戦前・戦後にどのような振幅をもって思考し、実践し、そして生活したかについて、若干の輪郭線を描いてみようと試みるものである。
そもそも本書の出発点は、板垣鷹穂が戦後になって教壇に立った早稲田大学文学部において二〇〇三年九月に開催された「板垣鷹穂シンポジウム」(同実行委員会、明治美術学会主催)にある。
**************
ときの忘れものでは本書を扱っています。
税込価格:5,775円のところ、5,500円(送料無料)で頒布します。
ご希望の方はメールにてお申し込みください。
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
◆ときの忘れものは、2011年1月15日[土]―1月29日[土]の会期で「没後20年 孤高のモダニスト福田勝治写真展」を開催します(※会期中無休)。

福田勝治は、1899年山口県に生まれ、昭和を通して活躍した写真家です。今年2011年が没後20年にあたります。ときの忘れものでは、新春の特別企画として、代表作《心の小窓》《光りの貝殻》《静物》の3点と、1955年にイタリアで撮影された作品15点(未発表)の計18点を展観し、福田勝治の作品と、その功績をあらためて顕彰し、ご紹介いたします。
ホームページに出品リスト、及び価格表を掲載しましたのでご覧ください。
古書店主らが1985年に創刊した『彷書月刊』はユニークな特集形式で、古書好きの人には人気のある雑誌だった。亭主も2008年10月号の特集「画廊回遊」に一度拙い文章を寄稿させていただいたが、とうとうご本人にはお目にかからず終いだった。
一昨年休刊を宣言した頃からご自身のがんの闘病日記を「ナナフシの散歩道」として連載されていたが、まさかこんなに早く逝かれるとは思ってもみなかった。
それに随分とお若い。ご冥福をお祈りいたします。
さて、板垣鷹穂といってももう知る人は少ないかも知れない。
参考までにコレクターの声でおなじみの中村恵一さんのブログにも面白い記事が書いてあります。
戦前から戦後にかけて、美術史家・美学者として教壇に立ちながら、建築・映画・演劇・写真などの芸術諸ジャンルで多彩な評論と実践を展開した、いわば知る人ぞ知る、守備範囲の広い研究者でした。
このたび筑波大学教授の五十殿利治さんたちによる『板垣鷹穂 クラシックとモダン』という初めての総合的な研究書が刊行されたのでご案内します。

五十殿利治編『板垣鷹穂 クラシックとモダン』
出版:森話社
発行:2010年11月
371ページ
21.4 x 15.4 x 3.2 cm
価格:5,775円(税込)
本書は、2003年に開催された板垣鷹穂シンポジウムを契機に生れたもので、古典的な世界に精通するとともに、新たな芸術を追求するモダニストの顔をもった板垣の全体像に迫ります。
◆目次
まえがき……五十殿利治 7
[I]評論家・板垣鷹穂
機械文明と映画教育……岩本憲児 15
板垣鷹穂の写真展月評・『アサヒカメラ』一九三三年~四二年 モダニズムとアマチュア写真……五十殿利治 43
レヴュー時代の静観者 板垣鷹穂とレヴュー……中野正昭 67
[II]プランナー・板垣鷹穂
批評の造形 「整本家」としての板垣鷹穂……川畑直道 91
板垣鷹穂と堀野正雄の共同実験……鬼頭早季子 103
板垣鷹穂と都市美協会……白政晶子 131
[III]美術史家・板垣鷹穂
板垣鷹穂・「新しき芸術」以後の合理主義……河田明久 157
モダニズム建築とナチス建築への視線 板垣鷹穂の戦前・戦中の西洋近代建築評論……安松みゆき 187
憧憬の建築 板垣鷹穂の「船」……鈴木貴宇 217
人格主義の美術史 児島喜久雄、板垣鷹穂と大正教養派……佐藤香里 241
表現的空間の渉猟者 長谷川堯が語る師の表情……長谷川堯/聞き手=鈴木貴宇 273
[IV]板垣鷹穂の私的圏域
直子と鷹穂 戦前・戦時下・占領期の連続と断絶……川崎賢子 297
父の手紙/父としての板垣鷹穂……竹内禮子/板垣哲子 311
板垣鷹穂の日記……安松みゆき 319
[資料]
板垣鷹穂年譜……安松みゆき 331
板垣鷹穂文献目録……安松みゆき/白政晶子 337
◆板垣鷹穂(いたがき たかお)(一八九四~一九六六)は今日では知名の美術史家あるいは美術評論家とはいえない。そもそも今日容易に手にとれる本はごく限られており、しかも専門書であって、一般読者には縁遠い存在である。また板垣鷹穂をどのように呼ぶのかも簡単ではない。先に美術史家、美術評論家としてみたが、いずれもそこからこぼれ落ちてしまう部分が大きいことは本書の目次をざっとみただけでも理解されよう。私は以前「視覚文化研究の先駆者」と形容してみたが、いかにも苦し紛れの形容である。そのこぼれ落ちてしまう部分をまずもってすくい取ることが先決である。
それゆえ本書は、もとより評伝を意図するものではない。板垣鷹穂が大正・昭和、戦前・戦後にどのような振幅をもって思考し、実践し、そして生活したかについて、若干の輪郭線を描いてみようと試みるものである。
そもそも本書の出発点は、板垣鷹穂が戦後になって教壇に立った早稲田大学文学部において二〇〇三年九月に開催された「板垣鷹穂シンポジウム」(同実行委員会、明治美術学会主催)にある。
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ときの忘れものでは本書を扱っています。
税込価格:5,775円のところ、5,500円(送料無料)で頒布します。
ご希望の方はメールにてお申し込みください。
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◆ときの忘れものは、2011年1月15日[土]―1月29日[土]の会期で「没後20年 孤高のモダニスト福田勝治写真展」を開催します(※会期中無休)。

福田勝治は、1899年山口県に生まれ、昭和を通して活躍した写真家です。今年2011年が没後20年にあたります。ときの忘れものでは、新春の特別企画として、代表作《心の小窓》《光りの貝殻》《静物》の3点と、1955年にイタリアで撮影された作品15点(未発表)の計18点を展観し、福田勝治の作品と、その功績をあらためて顕彰し、ご紹介いたします。
ホームページに出品リスト、及び価格表を掲載しましたのでご覧ください。
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