福田勝治出品作品のご紹介(1)

ただいま開催中の「没後20年 孤高のモダニスト福田勝治写真展」から出品作品をご紹介してまいります。
まずは、代表作の2作品から。

「心の小窓(藤田泰子)」は、昨年末に東京都写真美術館で開催された「二十世紀肖像展」のメインイメージとしてフライヤーにも使われ、大きく引き伸ばされて美術館の建物に掲げられました。
モデルの藤田泰子さんは、吉村公三郎監督に見出されて松竹の女優となりますが、「偽りの盛装」などに出演した後、数本の映画に出ただけで結婚引退したので、今ではほとんど知られていません。それでも絶妙のライティングによって暗闇に浮かぶ美しいその顔は、永遠の美を約束されたかのようです。実は、白目の部分は、プリントを引っ掻いて白さが際立つようにしてあります。ぜひ実物のプリントをご覧ください。
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福田勝治 Katsuji FUKUDA
心の小窓(藤田泰子)」
1949年 ゼラチンシルバープリント
36.4×27.0cm サインあり

福田勝治は、その初期から静物の作品を多く制作しており、後にバウハウスの影響を受けてモダニズム溢れる作品を生み出します。
「静物写真は写真家の美意識の反映であると同時に、才能の赤裸な公開である。静物写真によって写真家は自己の詩的世界を自由に創作できるのである。静物写真こそ、美の少宇宙であり、私の美のドラマである。」『ソノラマ写真選書19 頌歌』(朝日ソノラマ、1979年刊)
この作品は1952年、すでに写真界は「リアリズム写真運動」に席捲された中にあって、自分の制作態度を貫き、このような静謐で、光と影が織り成す小宇宙を作り上げたのでした。
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福田勝治 Katsuji FUKUDA
Still Life 静物
1952年頃 ゼラチンシルバープリント
40.5×32.0cm
裏面に遺族のサインあり

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ときの忘れものは、2011年1月15日[土]―1月29日[土]「没後20年 孤高のモダニスト福田勝治写真展」を開催しています(※会期中無休)。
福田勝治展DM
福田勝治は、1899年山口県に生まれ、昭和を通して活躍した写真家です。今年2011年が没後20年にあたります。ときの忘れものでは、新春の特別企画として、代表作《心の小窓》《光りの貝殻》《静物》の3点と、1955年にイタリアで撮影された作品15点(未発表)の計18点を展観し、福田勝治の作品と、その功績をあらためて顕彰し、ご紹介いたします。

●孤高を貫いたその生涯と作品については「飯沢耕太郎のエッセイ」をお読みください。

ホームページに出品リストを掲載しました。