福田勝治出品作品のご紹介(4)

没後20年 孤高のモダニスト福田勝治写真展」も本日が最終日となりました。
出品作品の中から〈イタリア紀行〉の作品を引き続きご紹介いたします。

「私はパリやロンドンにも行かずにイタリアだけに滞在して、今に残るイタリアの伝統文化の数々を、そしてその風光明媚な太陽の国の風物をワイドアングルのキャノンレンズでとらえ、私のイタリア紀行を制作した。それはフランスの詩人ジャン・コクトオの言葉ではないが、〈美の海水浴〉に出かけて、すっかり日焼けして帰国した。」『ソノラマ写真選書19 頌歌』(朝日ソノラマ、1979年刊)

福田勝治は、1955年、コンテストの商品であるヨーロッパ旅行を獲得したわけですが、福田自身が、諸国を巡るのではなくイタリアだけの滞在を希望しました。それだけイタリアとその文化に強い憧憬を抱いていたのでした。〈イタリア紀行〉の作品からもその喜びが伝わってくるようです。
先日画廊に見えたお客様(福田勝治の「女の写し方」を見て写真を撮り始めたとおっしゃる83歳の方)のお話では、このコンテストはキャノンの28mmのレンズを使って撮影した作品を対象としたものであったそうです。その28mmのレンズは1951年に発売された「Serenar 28mm F3.5 I」のことだと思われますが、発売当時、もっとも明るい「超」広角レンズということで写真界では大きな話題になったともおっしゃっていました。価格も27,000円というかなり高価なものでした。
そのレンズを使って、イタリアの人、文化、歴史の魅力を余すところなく捉えようとした結果が5,000枚以上というネガの数になったのでしょう。そして、このイタリア旅行は日本の文化を見直すきっかけとなり、この後の「京都」「銀座」「隅田川」といったシリーズに繋がっていきました。

fukuda_11_romakuukou-tikaku-29.福田勝治 Katsuji FUKUDA
〈イタリア紀行〉より「ポンペイ
1955年 ゼラチンシルバープリント
14.7×21.3cm 裏面に遺族のサインあり

fukuda_13_ostia_310.福田勝治 Katsuji FUKUDA
〈イタリア紀行〉より「オスティア
1955年 ゼラチンシルバープリント
14.7×21.3cm 裏面に遺族のサインあり

fukuda_14_ostia-411.福田勝治 Katsuji FUKUDA
〈イタリア紀行〉より「オスティア
1955年 ゼラチンシルバープリント
14.7×21.4cm 裏面に遺族のサインあり

fukuda_16_ostia-612.福田勝治 Katsuji FUKUDA
〈イタリア紀行〉より「オスティア
1955年 ゼラチンシルバープリント
14.2×21.4cm 裏面に遺族のサインあり

fukuda_17_ostia-7福田勝治 Katsuji FUKUDA
〈イタリア紀行〉より「オスティア
1955年 ゼラチンシルバープリント
14.2×23.8cm 裏面に遺族のサインあり

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ときの忘れものは、2011年1月15日[土]―1月29日[土]「没後20年 孤高のモダニスト福田勝治写真展」を開催しています(※会期中無休)。
福田勝治展DM
福田勝治は、1899年山口県に生まれ、昭和を通して活躍した写真家です。今年2011年が没後20年にあたります。ときの忘れものでは、新春の特別企画として、代表作《心の小窓》《光りの貝殻》《静物》の3点と、1955年にイタリアで撮影された作品15点(未発表)の計18点を展観し、福田勝治の作品と、その功績をあらためて顕彰し、ご紹介いたします。

孤高を貫いたその生涯と作品については「飯沢耕太郎のエッセイ」をお読みください。

ホームページに出品リストを掲載しました。