光嶋裕介のエッセイ 第2回

第二便:『壁のあったベルリンという街に住む』(II/VIII)


僕は学生時代にバックパックを背負って
欧州の街々を一人旅しました。
目的はとにかく生身の身体で建築を体験すること。
それが何よりの教科書だと思い、
日々建築巡りをしました。

そして、
旅では物足りなくなり、生活を求めて
大学院の卒業と共に
トランク一つでまたヨーロッパへ。
リスペクトする建築家5人に手紙を書き
面接してもらって就職したのが、
ベルリンにある第二希望の設計事務所、
ザウアブルッフ・ハットン・アーキテクツだった。

4年弱、必死で働きました。
社会人として初めてお仕事したのがドイツだったんです。
しかし、仕事もさることながらベルリンという街の魅力は
なかなか言葉にできるものではありません。

でも一つ言えることは
ベルリンが積層した沢山の時間を
そのままに抱えこみつつ
新しくうごめくエネルギーでもって
どんどん更新していくような街であるということです。
それを可能にしているのは、
いろんな人たちが同時に存在し、
思わぬ化学反応を起こしながらも
同居している状態があるからだと思っています。
つまり色んな人がベルリンという磁石に引っ張られ
集まって住んでいるということが全ての原動力だと思います。

そこでの生活を通して僕は
差異を認め、排除しないことが
多様性を担保するということを体感しました。
夜な夜な銅版画を彫っている時にも
そうした考えを下敷きにして
重力やスケールに自由な街の風景を描いています。

(こうしまゆうすけ)

koshima_landscape_005"Landscape at Night NO.005"
2008年
エッチング、アクアチント
イメージサイズ:12.0x30.0cm/シートサイズ:27.0x39.5cm
Ed.8 サインあり


画面が小さくて、光嶋さんの絵の面白さがわかりにくいかも知れません。
コチラをクリックしてのぞいてみてください。

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