先日の瑛九展のギャラリートークの興奮の余韻さめやらぬ日々ですが、早いもので今年ももう半ば、東京は梅雨入りしました。
ふりかえってみれば松本竣介展(1月)、銀塩写真の魅力第Ⅳ回展(2月)、具体展(3月)、野田英夫・北川民次・国吉康雄展(4月)、そして第23回瑛九展(5月)と、出品作家は亭主よりはるかに年配の方や既に物故された方々で、まことに「ときの忘れもの」らしいラインナップ。

ではありますが(ときの忘れものは若い作家たちをやらないのか、と影の声あり)・・・・・

ときの忘れものにもイキのいい作家たち、たくさんおります。
私たちが期待する若い世代の作家たち9人によるコレクション展を開催します。

6月の画廊コレクション展~9人の作家たち
会期:2013年6月7日[金]―6月22日[土]
※日・月・祝日休廊
魔方陣上段左から:
秋葉シスイ、渡辺貴子、永井桃子
中段左から:
君島彩子、宇田義久、光嶋裕介
下段左から:
根岸文子、若宮綾子、野口琢郎

渡辺貴子さんは今年のお正月、かつて陶芸を学んだイギリスでグループ展に参加されました。轆轤を使わない「ひもづくり」技法による不思議なオブジェを制作しています。

永井桃子さんは、ときの忘れもので何度も個展を開いていますが、卓抜な描写力に加え、極力輝きを抑えた独自の美しい色彩によって、水分を一杯に含んだ植物の葉や茎、そして花を描き続けています。

根岸文子さんもときの忘れもので何度も個展を開催しています。大学を出たあと直ぐにスペインにわたり地中海文化に接する中で「鏡の向こうのもう一つの世界」をテーマに独特の風景画を制作しています。

光嶋裕介さんは内田樹さんの自宅兼道場「凱風館」の設計で大きな注目を浴びている建築家です。昨年はドローイング集の刊行、ときの忘れものでの初個展などで大ブレーク。今秋ソウルのアートフェアにはスケールの大きな新作を引っさげて参戦の予定。

野口琢郎さんは京都西陣の箔屋野口の五代目。若いときには写真家・東松照明さんの内弟子となって修行。帰京後は「箔画」と名づけた独自の技法で作品を制作しています。昨秋の個展でその煌くような作品に魅了された方も多いでしょう。個展がほぼ完売状態だったため今回は新作をお願いしました。

君島彩子さんはエッセイ「墨と仏像と私」の連載を始めました。昨夏の個展で山下裕二先生が「伝統に寄り添うことなどさらさらなく、お稽古事的な水墨画の約束事ともまったく無縁」の「無国籍の水墨画」と評した如く、従来の水墨画とは全く異なる現代表現で注目を集めています。

若宮綾子さんは布(トリコット)や柔らかな素材でつくった立体作品をインスタレーション的に展示することによって、独特の浮遊感溢れる空間を生み出しています。作家自身のエッセイもぜひお読みください。

秋葉シスイさんは、人物が佇む暗澹とした風景や、遠くに何かの気配が存在する風景、又それすら何もない風景を描き続けています。ときの忘れものではグループ展やアートフェアに出品していますが、寡作なこともあって展示するたびに売れてしまい(嬉しいことですが)、いつも在庫ゼロ。今回は無理を言って新作を出品していただくことになりました。

宇田義久さんはときの忘れもの初登場です。盛岡在住で、VOCA展(2003年)などの出品歴はありますが東京ではあまり発表していません。糸による線条と透明感ある色彩が生み出すミニマルな世界はきっと皆さん新鮮な驚きを感じることでしょう。

9人は平面、立体、オブジェ、素材や技法は異なりますが、それぞれの分野で次代を切り拓いてゆく可能性いっぱいの作家たちです。
今回は皆さんから近況報告を兼ねたメッセージを寄せていただきました。
このブログで順次ご紹介します。

会期は、6月7日[金]―6月22日[土]までと長めですが、日曜、月曜は休廊です。
ぜひご来場のうえ、コレクションしてください。
出品リストは7日にホームページに掲載しました。

●明日のブログは、土渕信彦のエッセイ「瀧口修造の箱舟」第10回を掲載します。