美しいと呼べない人に、ぼくは遭ったかとがない。誰でも人生のある時期には、どこかしら美しいところがある。
アンディ・ウォーホル


先月19日から開催してきた「わが友ウォーホル~氏コレクションより」は本日が最終日です。
今回の展示は「アンディ・ウォーホル展:永遠の15分」(これも本日が最終日)を開催している森美術館から昨年夏以来いくどか取材を受け、亭主がエディションした「KIKU」シリーズのことや、1983年に企画したアンディ・ウォーホル全国展のことを久しぶりに記憶の底から拾い出したことがきっかけですが、偶然というか必然というか、1970年代のウォーホル将来に尽力されたXさんのコレクションが私どもに託されたことで実現しました。
いくら昔エディションしたからといっても、いまやウォーホル作品は亭主のごとき貧乏画商が直ぐに手がでる価格ではなくなっています。
Xさんのおかげでウォーホルとその時代の作家たちの素晴らしい展示ができました。
本日は通常とおり12時~19時まで開廊していますので、どうぞお出かけください。

最後にご紹介するのはジョン・ケージの作品です。
音楽家、作曲家、詩人、思想家、キノコ研究家とさまざまな貌をもつジョン・ミルトン・ケージ・ジュニア(John Milton Cage Jr.、1912年9月5日~1992年8月12日)が制作した希少な版画作品は実は日本でつくられました。
プロデュースしたのは名人刷り師・岡部徳三さんです。
実験音楽家としてジョン・ケージは前衛芸術全体に大きな影響を与え、独特の音楽論や表現によって、音楽の定義をひろげた20世紀の巨人といっていいでしょう。「沈黙」をも含めたさまざまな素材を作品や演奏に用いており、代表的な作品に『4分33秒』があります。
ジョン・ケージ「Fontana Mix」(Light Grey)ジョン・ケージ
John CAGE

《Fontana Mix》(Light Grey)
1982
シルクスクリーン、紙フィルム4枚組
Image size: 50.0x70.0cm
Sheet size: 56.5x76.5cm
Ed.97
鉛筆サインあり
刷り:岡部徳三

岡部さんが刷ったこの作品、図版だけではよくわからないでしょう。
まるでジョン・ケージの楽譜のような複雑さですが、この作品は4つのパーツから成り立っています。

1)一番下側の紙(56.2×76.5cm)には、曲線が刷られています。
紙の上に3枚の透明なフィルムが重ねてあります。
それぞれサイズが違うので、セッティングの仕方で、絵柄が変化します。

2)大きいフィルム(56.5×76.0cm)には水玉が刷られています。
3)中サイズのフィルム(23.0×74.0cm)には格子縞が刷られています。
4)小サイズのフィルム(6.0×79.0cm)には直線が刷られています。

つまり、1)の紙と2)の大判フィルムはほぼ同じサイズですので、セッティングしても皆同じですが、
3)と4)はそれぞれ細長いので、セッティング(置き方)の仕方で、見え方が違ってくるわけです。
ジョン・ケージの音楽を思わせる版画作品です。

◆「わが友ウォーホル~氏コレクションより」は本日が最終日です。
ウォーホル展DM
日本で初めて大規模なウォーホル展が開催されたのは1974年(東京と神戸の大丸)でした。その前年の新宿マット・グロッソでの個展を含め、ウォーホル将来に尽力された大功労者がさんでした。
アンディ・ウォーホルはじめ氏が交友した多くの作家たち、ロバート・ラウシェンバーグ、フランク・ステラ、ジョン・ケージ、ナム・ジュン・パイク、萩原朔美、荒川修作、草間彌生らのコレクションを出品します。

本日のウォーホル語録

<美しいと呼べない人に、ぼくは遭ったかとがない。誰でも人生のある時期には、どこかしら美しいところがある。たいていはそれぞれ異なった度合で。赤ちゃんのとき可愛かったのが、大きくなったらそうでもなくなって、また年をとったら、きれいになったりすることがある。あるいは、太ってるけど、きれいな顔をしてたりとか。O脚なのに、美しいボディを持ってるとか。美女ナンバーワンなのに、全然おっぱいがないとか。ハンサムナンバーワンなのに、あなたも何だかわかるものが、小さかったりとか。美に関する人々のセンスはまちまちだ。まったく似合わない、ぞっとするような服を着ている人を見ると、ぼくは彼らが「これはすてきだ。気にいった。これを買おう」と思って、その服を買っているところを想像してみる。えび茶色の、ポリエステルのワッフル焼き型模様のズボンとか、アクリル製のタンクトップで、胸に光る文字で「マイアミ」なんて書いてあるのを買わせる、何が彼の頭をよぎったのか、想像もつくまい。何がきれいじゃなかったといって、彼らは服を買うのをためらったかな? アクリルのタンクトップに「シカゴ」と書いてあったらやめたかな?
―アンディ・ウォーホル>


4月19日~5月6日の会期で「わが友ウォーホル」展を開催していますが、亭主が企画し1988年に全国を巡回した『ポップ・アートの神話 アンディ・ウォーホル展』図録から“ウォーホル語録”をご紹介してきましたが、この語録の再録も本日が最後です
毎日のご愛読を感謝いたします。