磯崎新設計の北九州市立美術館が開館40周年を迎え、記念展を開催しています。

開館40周年記念 丘の上のタカラ箱

会期:2014年7月19日(土)~11月3日(月・祝)
会場:北九州市立美術館
主催:丘の上のタカラ箱展実行委員会(北九州市立美術館、朝日新聞社、TVQ九州放送)

北九州市立美術館は、1974年11月3日に、西日本における大規模美術館の先駆けとして誕生しました。当時、新進気鋭の建築家・磯崎新が手がけ注目を浴びたこのモダン建築の中には、7000点以上の作品からなる40年分のコレクションが大切に保存されています。
この展覧会では、コレクションがどのような意図や経緯で形づくられてきたのかを、さまざまなトピックをもとに辿っていきます。世界の巨匠たちの名品から、北九州だからこそ意味を持つ作品まで、唯一無二のコレクションを抱く「タカラ箱」の魅力をぜひ体感してください。(同館HPより)

●連続講演会
いずれも、会場は本館B1階講堂、先着順100名(13:00から講堂入口で整理券を配布します)、聴講無料
8月23日(土)14:00~ ヤノベケンジ氏(美術家)
9月20日(土)14:00~ 磯崎新氏(建築家)
9月28日(日)14:00~ 高橋秀氏(美術家)
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昨年6月このブログで映画「図書館戦争」のことを紹介しました。
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佐藤信介監督の映画「図書館戦争」の舞台になったのが磯崎先生設計の美術館と図書館でした。

北九州市立美術館
磯崎新設計
北九州市立美術館本館

北九州市立美術館

磯崎先生の美術館建築の初期を飾る名作ですが、もちろん先生自身によって版画化されています。
磯崎還元MUSEUM磯崎新
還元より「MUSEUM-II(北九州市立美術館)」
1983年
シルクスクリーン(刷り:石田了一)
イメージサイズ:55.0x55.0cm
シートサイズ:90.0x63.0cm
Ed.75 Signed
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北九州市立美術館は40年経っても健在ですが、磯崎建築の中には大分県医師会館はじめ既に取り壊されてしまったものもあります。
下にご紹介するのは福岡相互銀行大分支店の貴賓室のために特注された磯崎先生デザインの貴重な椅子です。建物は取り壊されてしまいましたが、そのとき破棄された調度備品の中から救い出されたのがこの椅子。
モンローチェア」のようにこれが量産されなかったのは背の強度が足りなかったからと磯崎先生には聞いたことがあります。
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磯崎新
「椅子(福岡相互銀行大分支店特注)」
1967年制作(天童木工)
幅63cm、奥行69cm、高さ99cm
※2脚あり(サインあり1脚、サインなし1脚)
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isozaki_30-3のちのモンローカーブを想起させる優雅な曲線。


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磯崎先生が来廊された折にサインしていただきました。

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自作の椅子に数十年ぶり(?)に再会し、ゴキゲンの磯崎先生

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座りごこち満点、ご満悦のスパイダーマン


 地方銀行の福岡相互銀行(現・西日本シティ銀行)を父親から継いだ四島司さん。専務になったばかりのころに出会い、いくつかの支店のデザインを頼まれた。
 大分支店は内部を人間の体内に見立て、天井やダクトを真っ赤に塗った。「これでは客は来ない」。激怒したのは大蔵省の監督官である。私は塗り替え用のペンキを持った職人を待たせ、「客が来るか来ないか開けてみてください」と負けずにタンカをきった。にらみ合う二人に「まあ、結果を見てみましょうよ」と四島さんが悠然と応じる。
 運良く大分へ工場の進出が相次ぎ、預金は急増。支店の写真が米「フォーチュン」誌の表紙を飾り、私も新人賞のたぐいをいただいてほっと胸をなで下ろした。四島さんも内心マズイなと思っていたはずだが、黙って若い私に賭けてくれたのだった。

(2009/5/10日本経済新聞・磯崎新「私の履歴書」より)
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磯崎新 Arata ISOZAKI(1931-)
建築家。1931年大分市生まれ。54年東京大学卒業。61年東京大学数物系大学院建築学博士課程修了。63年磯崎新アトリエを設立。代表作に[大分県立中央図書館][岩田学園][福岡相互銀行本店][つくばセンタービル][MOCA―ロサンゼルス現代美術館][バルセロナ市オリンピック・スポーツホール][ティーム・ディズニー・ビルディング][山口県秋吉台国際芸術村][トリノ冬季五輪アイスホッケーメーン会場]他。近年は頻繁にアジアに出向き、多数のプロジェクトに参加している。日本建築学会賞、RIBA賞、朝日賞、ヴェネツィア・ビエンナーレ金獅子賞、他受賞。著書『空間へ』『建築の解体』『手法が』『栖十二』『建築家捜し』など多数。