1992年に50歳で亡くなった殿敷侃さんが、没後22年を経て注目を浴びています。
先日もご紹介したとおり、横浜で開催中の「ヨコハマトリエンナーレ2014」に殿敷侃の作品が出品されており(そのレポートはコチラ)、殿敷作品を扱う画廊としてはとても嬉しい。
そして京都造形芸術大学ギャルリ・オーブで開催中の「無人島にて「80年代」の彫刻/立体/インスタレーション」にも、殿敷侃の作品が出品されています。


「無人島にて「80年代」の彫刻/立体/インスタレーション」
会期:2014年9月26日(金)~10月19日(日)
会場:京都造形芸術大学ギャルリ・オーブ
時間:11:00~19:00 ※会期中無休
入場料:無料
主催:京都造形芸術大学
キュレーター:長谷川新
出展作家:上前智祐、笹岡敬、椎原保、殿敷侃、福岡道雄、宮﨑豊治、八木正
1980年代、オールオーバーで装飾的なインスタレーション、レリーフ的な絵画、あるいは絵画/彫刻の復権といった動向とは一線を画しつつも、しかし緩やかなる同時代性を帯びた作家たちの実践があった。建畠晢は彼らの一部を「時代の状況から鋭く孤立したところにそれぞれの拠点を定めた作家」と呼んだが、「関西ニューウェーブ」が席巻し、すべてが「インスタレーション」として呼びならわされていくその過程において、彼らはどのように自らの作品と向き合ってきたのだろうか。そこにはただ60年代や70年代との切断や急激な転換の痕だけが刻まれているわけではないはずである。
「ひとつの島が無人島でなくなるためには、なるほど、単に人が住むだけでは足りない。」―ジル・ドゥルーズが残した奇妙なテクストが私たちにヒントを与えてくれる。他者なきそれぞれの拠点=無人島において、本展の作家たちは自身の日常を信じつつも反転させ、制作を行ってきた。彼らの実践は、無人島になり続けようとする不断の過程なのかもしれないが、その創造性は、これまでの80年代美術のイメージに修正を促すものだ。
断片的に語られてきた彼らの創造性をつなぎとめる係留点をつくりあげることで、本展が「80年代」を再考する一契機になるとともに、それぞれの作家の実践を現在と結びつける場となれば幸いである。(同展HPより転載)
●トークイベント
10月11日(土)
会場:ギャルリ・オーブ
進行:長谷川 新
14:30~16:00 福岡道雄、宮﨑豊治、石崎尚[愛知県立美術館学芸員]
16:30~18:00 笹岡敬、椎原保、前田裕哉[Twitter ID@atashika_ymyh]
※予約不要、定員80名
~~~~
殿敷侃は1942年広島市に生まれました。45年8月6日の原爆投下で広島中央郵便局に勤務していた父は爆死。母は投下2日後に3歳の殿敷侃を背に、9歳の姉の手を引き、夫を探して爆心地に入り、二次被爆し5年後に病死します。
侃は26歳で画家を志し、77年久保貞次郎(1966年ヴェネチアビエンナーレ・コミッショナー、町田市立国際版画美術館初代館長などを歴任)の勧めにより銅版画の制作を始めます。 作家自身の被爆体験にもとづき、父母の形見の品や原爆ドームのレンガなどのをモチーフにした細密な作品で注目され、79、80年に安井賞連続入選。
1982年にヨーロッパやアメリカを旅行、ドクメンタ7でヨーゼフ・ボイスに衝撃を受け、以後、今までの絵画表現から離れ、古タイヤ、テレビ、自動車、傘、ゴミ回収袋などの廃棄物で会場を埋めつくすという過激な表現によるインスタレーションを行なうようになります。多数の人々をまき込んで行なうイベントを表現方法とし、現代社会とその中での人間の意識について厳しく問い続けました。
1991年第14回現代日本彫刻展では車椅子から指示を出しながら、立木18本にタイヤ800個をくくりつけ社会への強烈な批判的・挑発的なメッセージを発信しますが、原爆二次被爆に起因する肝臓がんで1992年2月11日50歳の短い生涯を閉じました。
ときの忘れものでは昨年8月に「殿敷侃 遺作展」を開催しました。
このブログでは「殿敷侃の遺したもの」を記録するため「久保エディション第4回~殿敷侃」はじめ、濱本聰さん(下関市立美術館)、山田博規さん(広島県はつかいち美術ギャラリー)、友利香さん、土屋公雄さん、西田考作さんらに寄稿(再録も含む)していただきました。こちらも合わせてご覧ください。
●殿敷侃カタログのご紹介
『殿敷侃 遺作展』カタログ
2013年
ときの忘れもの 発行
15ページ
25.6x18.1cm
執筆:濱本聰
図版:21点
編集:尾立麗子(ときの忘れもの)
デザイン:北澤敏彦(株式会社DIX-HOUSE)
価格:864円(税込)
※送料別途250円
『殿敷侃 遺されたメッセージ・アートから社会へ』展カタログ
1993年
下関市立美術館 発行
47ページ
29.7x20.8cm
執筆:山本和弘、渡部誠一、濱本聰
図版:89点
価格:1,620円(税込)
※送料別途250円
殿敷が亡くなった翌年に下関市立美術館で開催された展覧会のカタログです。
『殿敷侃 Reversing Reality 逆流する現実』
1990年
SOS PLAN 発行
168ページ
29.5x26.0cm
執筆:リン・ガンパート
限定:3,000部
価格:10,800円(税込)
※送料別途250円
『殿敷侃 タイヤの生る木』
1991年
SOS PLAN 発行
28ページ
29.5x21.1cm
執筆:山本和弘
編集:佐藤毅、殿敷侃
限定:2,000部
価格:2,160円(税込)
※送料別途250円
●今日のお勧め作品はもちろん殿敷侃です。
《ドームのレンガ》(1)
1977年 銅版、雁皮刷り
23.2×32.3cm
Ed.50 サインあり
殿敷侃
「ノコ」(3)
銅版
Image size:23.3x32.0cm
Sheet size:35.4x42.5cm
Ed.30 サインあり
殿敷侃
「地中の虫」
リトグラフ
Image size:21.2x35.9cm
Sheet size:36.2x45.1cm
Ed.30 サインあり
作家と作品については、「久保エディション第4回~殿敷侃」をお読みください。
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
先日もご紹介したとおり、横浜で開催中の「ヨコハマトリエンナーレ2014」に殿敷侃の作品が出品されており(そのレポートはコチラ)、殿敷作品を扱う画廊としてはとても嬉しい。
そして京都造形芸術大学ギャルリ・オーブで開催中の「無人島にて「80年代」の彫刻/立体/インスタレーション」にも、殿敷侃の作品が出品されています。


「無人島にて「80年代」の彫刻/立体/インスタレーション」
会期:2014年9月26日(金)~10月19日(日)
会場:京都造形芸術大学ギャルリ・オーブ
時間:11:00~19:00 ※会期中無休
入場料:無料
主催:京都造形芸術大学
キュレーター:長谷川新
出展作家:上前智祐、笹岡敬、椎原保、殿敷侃、福岡道雄、宮﨑豊治、八木正
1980年代、オールオーバーで装飾的なインスタレーション、レリーフ的な絵画、あるいは絵画/彫刻の復権といった動向とは一線を画しつつも、しかし緩やかなる同時代性を帯びた作家たちの実践があった。建畠晢は彼らの一部を「時代の状況から鋭く孤立したところにそれぞれの拠点を定めた作家」と呼んだが、「関西ニューウェーブ」が席巻し、すべてが「インスタレーション」として呼びならわされていくその過程において、彼らはどのように自らの作品と向き合ってきたのだろうか。そこにはただ60年代や70年代との切断や急激な転換の痕だけが刻まれているわけではないはずである。
「ひとつの島が無人島でなくなるためには、なるほど、単に人が住むだけでは足りない。」―ジル・ドゥルーズが残した奇妙なテクストが私たちにヒントを与えてくれる。他者なきそれぞれの拠点=無人島において、本展の作家たちは自身の日常を信じつつも反転させ、制作を行ってきた。彼らの実践は、無人島になり続けようとする不断の過程なのかもしれないが、その創造性は、これまでの80年代美術のイメージに修正を促すものだ。
断片的に語られてきた彼らの創造性をつなぎとめる係留点をつくりあげることで、本展が「80年代」を再考する一契機になるとともに、それぞれの作家の実践を現在と結びつける場となれば幸いである。(同展HPより転載)
●トークイベント
10月11日(土)
会場:ギャルリ・オーブ
進行:長谷川 新
14:30~16:00 福岡道雄、宮﨑豊治、石崎尚[愛知県立美術館学芸員]
16:30~18:00 笹岡敬、椎原保、前田裕哉[Twitter ID@atashika_ymyh]
※予約不要、定員80名
~~~~
殿敷侃は1942年広島市に生まれました。45年8月6日の原爆投下で広島中央郵便局に勤務していた父は爆死。母は投下2日後に3歳の殿敷侃を背に、9歳の姉の手を引き、夫を探して爆心地に入り、二次被爆し5年後に病死します。
侃は26歳で画家を志し、77年久保貞次郎(1966年ヴェネチアビエンナーレ・コミッショナー、町田市立国際版画美術館初代館長などを歴任)の勧めにより銅版画の制作を始めます。 作家自身の被爆体験にもとづき、父母の形見の品や原爆ドームのレンガなどのをモチーフにした細密な作品で注目され、79、80年に安井賞連続入選。
1982年にヨーロッパやアメリカを旅行、ドクメンタ7でヨーゼフ・ボイスに衝撃を受け、以後、今までの絵画表現から離れ、古タイヤ、テレビ、自動車、傘、ゴミ回収袋などの廃棄物で会場を埋めつくすという過激な表現によるインスタレーションを行なうようになります。多数の人々をまき込んで行なうイベントを表現方法とし、現代社会とその中での人間の意識について厳しく問い続けました。
1991年第14回現代日本彫刻展では車椅子から指示を出しながら、立木18本にタイヤ800個をくくりつけ社会への強烈な批判的・挑発的なメッセージを発信しますが、原爆二次被爆に起因する肝臓がんで1992年2月11日50歳の短い生涯を閉じました。
ときの忘れものでは昨年8月に「殿敷侃 遺作展」を開催しました。
このブログでは「殿敷侃の遺したもの」を記録するため「久保エディション第4回~殿敷侃」はじめ、濱本聰さん(下関市立美術館)、山田博規さん(広島県はつかいち美術ギャラリー)、友利香さん、土屋公雄さん、西田考作さんらに寄稿(再録も含む)していただきました。こちらも合わせてご覧ください。
●殿敷侃カタログのご紹介
『殿敷侃 遺作展』カタログ2013年
ときの忘れもの 発行
15ページ
25.6x18.1cm
執筆:濱本聰
図版:21点
編集:尾立麗子(ときの忘れもの)
デザイン:北澤敏彦(株式会社DIX-HOUSE)
価格:864円(税込)
※送料別途250円
『殿敷侃 遺されたメッセージ・アートから社会へ』展カタログ1993年
下関市立美術館 発行
47ページ
29.7x20.8cm
執筆:山本和弘、渡部誠一、濱本聰
図版:89点
価格:1,620円(税込)
※送料別途250円
殿敷が亡くなった翌年に下関市立美術館で開催された展覧会のカタログです。
『殿敷侃 Reversing Reality 逆流する現実』1990年
SOS PLAN 発行
168ページ
29.5x26.0cm
執筆:リン・ガンパート
限定:3,000部
価格:10,800円(税込)
※送料別途250円
『殿敷侃 タイヤの生る木』1991年
SOS PLAN 発行
28ページ
29.5x21.1cm
執筆:山本和弘
編集:佐藤毅、殿敷侃
限定:2,000部
価格:2,160円(税込)
※送料別途250円
●今日のお勧め作品はもちろん殿敷侃です。
《ドームのレンガ》(1)1977年 銅版、雁皮刷り
23.2×32.3cm
Ed.50 サインあり
殿敷侃「ノコ」(3)
銅版
Image size:23.3x32.0cm
Sheet size:35.4x42.5cm
Ed.30 サインあり
殿敷侃「地中の虫」
リトグラフ
Image size:21.2x35.9cm
Sheet size:36.2x45.1cm
Ed.30 サインあり
作家と作品については、「久保エディション第4回~殿敷侃」をお読みください。
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
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