台風18号の接近する10月3日、社長と二人で空路那覇に飛びました。
社長は初めて、亭主は実に30数年ぶりの沖縄でした。
沖縄県立美術館で開催中の「色彩のシンフォニー 内間安瑆の世界」を見るためです。
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平成26年度 沖縄県立博物館・美術館企画展「沖縄ルーツシリーズ2」
ANSEI UCHIMA Symphony of Colors and Wind
色彩と風のシンフォニー/内間安瑆の世界

会期:2014年9月12日(金)~平成26年11月9日(日)
会場:沖縄県立博物館・美術館
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風の噂で内間安瑆先生の回顧展が始まったとは聞いていたのですが、先月末ご遺族の内間洋子さんが東京に来られ、帰米する束の間のひとときをご一緒することができ、沖縄での開催の経緯、展示の様子を詳しく伺うことができました。
洋子さんとは2001年7月31日、私どもで開いた「内間安瑆・俊子ご夫妻を偲ぶ会」以来のことでした。
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那覇空港からモノレールにのりました。

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ホテル最寄の牧志駅から見る市内

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壺屋小学校

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夜の国際通りで入ったお店、しまらっきょうの天麩羅が絶品でした。沖縄唯一の日本酒「黎明」もおいしくいただきました。社長ゴキゲン。

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孫たちにお土産を買いました。

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ホテルの朝食、バイキングですが、とにかく品数豊富、朝からたいへんなご馳走でありました。
上着に注目(琉球人になったつもり)

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朝一番で沖縄県立博物館・美術館に到着。

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沖縄県立博物館・美術館の正面。
2007年石本建築事務所の設計により竣工。
沖縄のグスク(城)から引用した緩やかなカーブで連続する外壁が特徴

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入り口を入ると移築(?)されたらしい民家が迎えてくれました。

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一階が内間安瑆展、二階が常設展、沖縄の現代美術の凡その流れが展示されていました。

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(会場写真は内間洋子さん提供)

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(会場写真は内間洋子さん提供)
カタログもないので詳しく報告できませんが、出品リストによれば内間作品が116点、夫人の内間俊子さんの作品が2点の計118点がいくつかの部屋にわかれて展示されていました。

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(会場写真は内間洋子さん提供)
初期(1955年)から制作が途絶した1982年までの多色木版が中心ですが、墨絵、水彩、コラージュ、パステル、油彩、エッチングも展示。

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(会場写真は内間洋子さん提供)
ご遺族が大切に守ってきた版木、スケッチブック、彫刻刀やバレンなどの道具類なども豊富に展示され、内間先生がいかに緻密な計画を立て、独自の木版世界を構築していったかがわかります。

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(会場写真は内間洋子さん提供)
亭主は内間先生が1980年前後に到達した「Forest Byobu(森の屏風)」シリーズを偏愛するあまり、今までは初期や中期の作品にあまり注目してきませんでした。

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(会場写真は内間洋子さん提供)
ところが今回、亭主のよく知らなかった1950年代、1960年代の空間シリーズなど初めての作品に接し、認識をあらたにしました。

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(会場写真は内間洋子さん提供)
試行錯誤ではなく、それぞれの時代に優れた作品を遺していることを今さらながらですが再確認することができ、画商として不勉強を恥じるとともに、次の仕事(内間作品の顕彰)に一層の意欲がわいてきました。

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(会場写真は内間洋子さん提供)
最後の部屋(Forest Byobu連作18点、油彩大作3点)は圧巻でした。

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展示室を出ると、細長い廊下があり、内間先生の略歴が掲示されていました。

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同じく、略歴。

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社長は一休み。

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版画掌誌第4号も資料展示されていました。

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内間先生のポートレートと。

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シーサーにご挨拶してさようなら。

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亭主が生きているうちにこれだけの大展示を再び見ることができるでしょうか。名残りおしい展覧会でした。
台風接近、空もあやしくなってきました。

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那覇国際空港のカフェで、韓国の光州ビエンナーレから帰国したばかりの画廊沖縄の上原誠勇さんと会う。

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かたや典型的な琉球人の顔つき(右)。かたや亭主は生粋の上州人。いつも電話とメールでばかりですが、私たちの付き合いも30数年を数えます。
上原さんの画廊のホームページをぜひ読んでいただきたいのですが「画廊主のつぶやき」など、沖縄の美術界に対して歯に衣着せぬ発言を続けています。
奥様は沖縄を代表する織物作家の上原美智子さんです。

沖縄移民の二世としてアメリカに生まれ、アメリカ市民としてNYで生涯を閉じられた内間先生は私たちが最も敬愛する作家でした。
今回の沖縄県立美術館の大回顧展に先立つこと12年前の2002年、那覇市の「画廊沖縄」で、「内間安瑆展 米国で花ひらいた沖縄移民二世の画家」が開催されました(会期:2002年3月15日~31日)。
主催した上原誠勇さんは来年35周年を迎える沖縄きっての老舗画廊で、沖縄の現代美術の画廊として孤軍奮闘しています。
いわば内間先生の沖縄における顕彰活動の最大の貢献者です。
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クリックしてください。

2002年の画廊沖縄での回顧展は沖縄ゆかりということで地元のメディアも大きく取り上げてくれ、『沖縄タイムス』 3月14日号には針生一郎先生が<内間安瑆の再評価を>と題して寄稿されました(上掲、画面をクリックすると読めます)。
もうひとつの地元新聞、『琉球新報』には亭主が拙い文章を掲載させていただきました。以下、再録します。
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「内間安瑆展に寄せて 伝統版画に新風吹き込む」

綿貫不二夫(『琉球新報』2002年 3月26日号、文化欄)


 18年の闘病生活のすえ一昨年79歳で死去した内間安瑆の沖縄初の回顧展が開かれている。沖縄からの移民だった親の勧めで、開戦直前の日本に留学し早稲田大学で建築を学んだ。アメリカと日本と二つの祖国をもった内間は戦後は木版画家として活躍する。アメリカに帰ってからは大学で教える一方、浮世絵の伝統技法を深化させ「色面織り」と呼ぶ独自の技法を確立し、現代感覚にあふれた瑞々しい作風により、現代美術のメッカ・ニューヨークで高い評価を獲得した。アメリカの代表的美術館には多数の作品が収蔵されている。
 木版画というのは文字通り「版の絵」である。色ごとに彫られた版木に絵の具をおき、ばれんで一枚一枚摺りあげる。特に現代においては少ない版数で簡潔な表現がもとめられる。色数が多いほど、逆に版の面白さが消えてしまうからである。ところが内間の代表作となったのは、伝統的な手摺りで45度摺を重ねた『森の屏風 Forest Byobu』連作である。鮮やかな色彩のハーモニー、微妙なぼかしが入った色面が幾重にも重なる複雑な構成、多色にもかかわらず画面全体には静かな気品が漂う。父母から受け継いだ沖縄の豊かな色彩感覚が反映しているのではないだろうか。
 私が親炙した80年代の内間は『森の屏風』によって自分は独自の表現を獲得したのだという自信にみち溢れていた。スマートな立ち居振る舞い、深い学識に裏付けられた木版への確固とした信念には会う度に圧倒された。しかし83年突然の不幸が作家を襲い、絶頂期で制作が中断されてしまった。残念である。
 生前には遂に実現されなかった父祖の地での回顧展で、たくさんの人が内間芸術の神髄に触れて欲しいと願っている。
(わたぬきふじお)
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2014年9月12日付ブログ用画像_03
1982年6月18日
内間安瑆先生
NYの自宅アトリエにて

内間「Early Summer Rain 五月雨」内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Early Summer Rain
(五月雨)"

1961年  木版
50.5×38.cm
A.P. Signed

内間「Forest Byobu (森の屏風・秋)」内間安瑆 Ansei UCHIMA
"Forest Byobu
(森の屏風・秋)"

1979年  木版
45.5×76.0cm
A.P. Signed

内間「Forest Weave (Bathers-Fall)」内間安瑆 Ansei UCHIMA
"FOREST WEAVE
(Bathers-Fall)"

1982年  木版
75.8×41.0cm
A.P. Signed

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CIMG601610月4日夕刻、
上原さんと別れ、那覇空港で最後の一杯。
一泊二日、内間先生の世界に身をひたし、おいしい酒と肴で浮世のいやなことを忘れさせてくれた旅でした。
ときの忘れものでは開廊当初から内間作品を紹介してきましたが、今回の沖縄の回顧展を機にこのブログで何回かにわたり、内間芸術の世界を概観したいと思います。
次回は10月14日のブログに水沢勉先生(神奈川県立近代美術館館長)の内間安瑆論を掲載します(再録)。どうぞお読みください。