スタッフSの海外ネットサーフィン No.24 「On Kawara-Silence」
SOLOMON R. GUGGENHEIM MUSEUM
読者の皆様こんにちわ。雨が降って芯から冷えるかと思えば、上着を着ていると汗ばんでしまうほど暖かかったり、どうにも極端な天気な今日この頃、いかがお過ごしでしょうか? 季節の変り目と言うにはいささか早い気がしますが、お布団が恋しいのでもう少し寒い季節が続いて欲しいスタッフSこと新澤です。
昨年参加したアートフェアの結果を顧みた結果、今年のときの忘れものは海外重点の活動を行うことになりました。つきましては、ときの忘れものもついにアメリカのアートフェアに進出! …する予定です。今の所有力候補は七月にニューメキシコで開催されるART Santa Feですが、何でも最寄の空港から会場まで、荒野の中を100km行く必要があるとか。色んな意味でドッキドキですね。
と、同じアメリカ国内ということで話題に挙げさせて頂いた今後の展望は脇に置いて、今回の紹介イベントはニューヨーク、グッゲンハイム美術館より「On Kawara-Silence」です。ちなみに同じ国内とはいえ、サンタフェとニューヨーク間は車で移動すると約30時間、距離にして約3200kmあり、北海道から沖縄を含む日本の全長を超えています。デカすぎだろこの国…。

グッゲンハイム美術館(Solomon R. Guggenheim Museum)はアメリカの鉱山王・ソロモン・R・グッゲンハイム(1861年 - 1949年)がビジネスの第一線から退いた後、ドイツ貴族にして画家のヒラ・ヴォン・リベイの協力のもと集めた現代アートのコレクションを収蔵し、1937年に財団として設立され、2年後の1939年に開館しました。当初はマンハッタン東54丁目24番地に位置していましたが、1949年には5番街の現在地に移りました。その後、ニューヨーク近代美術館とともに現代美術の発展普及に大きな役割を果たしてきています。現在の美術館は1943年にフランク・ロイド・ライトに建築設計が依頼され、ライトは翌年には建築設計案を作成しましたが、工事に取り掛かるまでには紆余曲折があり、創立者のグッゲンハイムは没年の1949年になってようやくライトの設計案を承認したという経緯があります。それから建物の竣工までには更に10年間の歳月を要し、完工したのは1959年、ライトの死後半年後のことでした。ここまで時間がかかった原因の一つには、この前例のない特徴的な建築物に対し、ニューヨーク市当局が建築基準法に触れる為に許可を出すのを渋った事情からともいわれています。「かたつむりの殻」とよく形容される螺旋状の構造を持つこの建物は、中央部が巨大な吹き抜けになっており、見学者はまずエレベーターで建物の最上部に上がり、螺旋状の通路の壁面に掛けられた作品を見ながら順路を進む内に自然に階下へ降りるようになっています。美術館施設の概念を根本から覆した作品として、ライトの代表作に数えられている一方で、建築自体の自己主張が大きすぎ、床が傾斜しているため鑑賞者が落ち着かず、美術品の鑑賞をさまたげるという批判もあるようです。
それぞれの作品を制作した日付のみが描かれている河原温の「Today」シリーズ。
各カンバスは一日で仕上げられ、当日中に完成しなかった物は破棄されている。
そんなグッゲンハイム美術館で2月6日から5月3日まで開催されているのが、「On Kawara-Silence」です。コンセプチュアルアートの巨匠・河原温のあらゆるカテゴリの作品を網羅したこの展覧会では、作品の制作日を描いた「Today」シリーズ、当日の起床時間のみをポストカードに記して発送した「I Got Up」シリーズ、自らの生存のみを電報で知らせる「I Am Still Alive」シリーズなどが、実現されなかった作家のアイデアのドローイングと合わせて展示されています。他にも、紀元前998,031から紀元後1969年、作家がこのアイディアを考えついた年、と紀元後1980年から紀元後1,001,980年、という2種類の印刷されたリストを男女のペアが読み上げ続けるインスタレーション「One Million Years Past and One Million Years Future」も毎週日、水、金の3日間、午前11時から午後5時まで開催されます。
様々な言語の略称で描かれた無数の日付、それそのものは作家がその作品をその日に描いたという意味しか持ちませんが、例えばその作品を見た人にとってその日付が誕生日や何らかの記念日である場合、無数の作品の中でその一枚だけが個人にとって特別になります。また、日付の描かれた日、河原温はその作品を制作していた。では、それら日付絵画の描かれなかった日、河原温はどうしていたのだろう? 観客がそう考えることも作家の思惑だったとしたら、一連の絵画によって絵画の存在しない時間と空間、そして観客の思考さえ作品の一部としてしまうコンセプチュアルアートのスケールには感嘆せざるをえません。
以下の動画はグッゲンハイム美術館の公式動画です。内容は英語ですが、今展覧会の展示風景なども見ることができますので、是非ご覧ください。
グッゲンハイム美術館公式ページ:http://www.guggenheim.org/
On Kawara—Silence紹介ページ:http://www.guggenheim.org/new-york/exhibitions/on-view/on-kawara-silence
(しんざわ ゆう)
◆ジョサイア・コンドルの設計、国の名勝に指定されている旧古河庭園・大谷美術館で「石山修武銅版画展 窓の内、窓の外」が2月25日~3月1日開催されています。
展示される新作銅版画作品はときの忘れもののエディションです。
石山修武
13. 《自画像 1》
2014年 銅版
15.0x15.0cm
シートサイズ28.0x25.3cm
Ed.7 Signed
石山修武
14. 《自画像 2》
2014年 銅版
15.0x15.0cm
シートサイズ28.0x25.3cm
Ed.7 Signed
石山修武
15. 《電車の中の女》
2014年 銅版
15.0x15.0cm
シートサイズ28.0x25.3cm
Ed.7 Signed

16. 《マスクになった女》
2014年 銅版
15.0x15.0cm
シートサイズ28.0x25.3cm
Ed.7 Signed
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
SOLOMON R. GUGGENHEIM MUSEUM
読者の皆様こんにちわ。雨が降って芯から冷えるかと思えば、上着を着ていると汗ばんでしまうほど暖かかったり、どうにも極端な天気な今日この頃、いかがお過ごしでしょうか? 季節の変り目と言うにはいささか早い気がしますが、お布団が恋しいのでもう少し寒い季節が続いて欲しいスタッフSこと新澤です。
昨年参加したアートフェアの結果を顧みた結果、今年のときの忘れものは海外重点の活動を行うことになりました。つきましては、ときの忘れものもついにアメリカのアートフェアに進出! …する予定です。今の所有力候補は七月にニューメキシコで開催されるART Santa Feですが、何でも最寄の空港から会場まで、荒野の中を100km行く必要があるとか。色んな意味でドッキドキですね。
と、同じアメリカ国内ということで話題に挙げさせて頂いた今後の展望は脇に置いて、今回の紹介イベントはニューヨーク、グッゲンハイム美術館より「On Kawara-Silence」です。ちなみに同じ国内とはいえ、サンタフェとニューヨーク間は車で移動すると約30時間、距離にして約3200kmあり、北海道から沖縄を含む日本の全長を超えています。デカすぎだろこの国…。
グッゲンハイム美術館(Solomon R. Guggenheim Museum)はアメリカの鉱山王・ソロモン・R・グッゲンハイム(1861年 - 1949年)がビジネスの第一線から退いた後、ドイツ貴族にして画家のヒラ・ヴォン・リベイの協力のもと集めた現代アートのコレクションを収蔵し、1937年に財団として設立され、2年後の1939年に開館しました。当初はマンハッタン東54丁目24番地に位置していましたが、1949年には5番街の現在地に移りました。その後、ニューヨーク近代美術館とともに現代美術の発展普及に大きな役割を果たしてきています。現在の美術館は1943年にフランク・ロイド・ライトに建築設計が依頼され、ライトは翌年には建築設計案を作成しましたが、工事に取り掛かるまでには紆余曲折があり、創立者のグッゲンハイムは没年の1949年になってようやくライトの設計案を承認したという経緯があります。それから建物の竣工までには更に10年間の歳月を要し、完工したのは1959年、ライトの死後半年後のことでした。ここまで時間がかかった原因の一つには、この前例のない特徴的な建築物に対し、ニューヨーク市当局が建築基準法に触れる為に許可を出すのを渋った事情からともいわれています。「かたつむりの殻」とよく形容される螺旋状の構造を持つこの建物は、中央部が巨大な吹き抜けになっており、見学者はまずエレベーターで建物の最上部に上がり、螺旋状の通路の壁面に掛けられた作品を見ながら順路を進む内に自然に階下へ降りるようになっています。美術館施設の概念を根本から覆した作品として、ライトの代表作に数えられている一方で、建築自体の自己主張が大きすぎ、床が傾斜しているため鑑賞者が落ち着かず、美術品の鑑賞をさまたげるという批判もあるようです。
それぞれの作品を制作した日付のみが描かれている河原温の「Today」シリーズ。各カンバスは一日で仕上げられ、当日中に完成しなかった物は破棄されている。
そんなグッゲンハイム美術館で2月6日から5月3日まで開催されているのが、「On Kawara-Silence」です。コンセプチュアルアートの巨匠・河原温のあらゆるカテゴリの作品を網羅したこの展覧会では、作品の制作日を描いた「Today」シリーズ、当日の起床時間のみをポストカードに記して発送した「I Got Up」シリーズ、自らの生存のみを電報で知らせる「I Am Still Alive」シリーズなどが、実現されなかった作家のアイデアのドローイングと合わせて展示されています。他にも、紀元前998,031から紀元後1969年、作家がこのアイディアを考えついた年、と紀元後1980年から紀元後1,001,980年、という2種類の印刷されたリストを男女のペアが読み上げ続けるインスタレーション「One Million Years Past and One Million Years Future」も毎週日、水、金の3日間、午前11時から午後5時まで開催されます。
様々な言語の略称で描かれた無数の日付、それそのものは作家がその作品をその日に描いたという意味しか持ちませんが、例えばその作品を見た人にとってその日付が誕生日や何らかの記念日である場合、無数の作品の中でその一枚だけが個人にとって特別になります。また、日付の描かれた日、河原温はその作品を制作していた。では、それら日付絵画の描かれなかった日、河原温はどうしていたのだろう? 観客がそう考えることも作家の思惑だったとしたら、一連の絵画によって絵画の存在しない時間と空間、そして観客の思考さえ作品の一部としてしまうコンセプチュアルアートのスケールには感嘆せざるをえません。
以下の動画はグッゲンハイム美術館の公式動画です。内容は英語ですが、今展覧会の展示風景なども見ることができますので、是非ご覧ください。
グッゲンハイム美術館公式ページ:http://www.guggenheim.org/
On Kawara—Silence紹介ページ:http://www.guggenheim.org/new-york/exhibitions/on-view/on-kawara-silence
(しんざわ ゆう)
◆ジョサイア・コンドルの設計、国の名勝に指定されている旧古河庭園・大谷美術館で「石山修武銅版画展 窓の内、窓の外」が2月25日~3月1日開催されています。
展示される新作銅版画作品はときの忘れもののエディションです。
石山修武13. 《自画像 1》
2014年 銅版
15.0x15.0cm
シートサイズ28.0x25.3cm
Ed.7 Signed
石山修武14. 《自画像 2》
2014年 銅版
15.0x15.0cm
シートサイズ28.0x25.3cm
Ed.7 Signed
石山修武15. 《電車の中の女》
2014年 銅版
15.0x15.0cm
シートサイズ28.0x25.3cm
Ed.7 Signed

16. 《マスクになった女》
2014年 銅版
15.0x15.0cm
シートサイズ28.0x25.3cm
Ed.7 Signed
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
コメント