堀江敏幸「仰向けの言葉」

亭主は本はまとめ買いして枕元に積んでおき、適当に読み始める(つまらないと直ぐに他に乗り換える)のですが、読むスピードはそう速くはない。
むしろ、枕元からいつの間にか勝手に抜き出して読んでいる社長の方が相当に早い、つまり買った亭主より早く、多く読んでしまっている。
嫁入り道具に蔵書のそう多くなかった社長がこんなに読者家だったとは気付きませんでした。
そのくせ自分では一切買わない、という不思議な読書家であります。
好みの異なる二人がともに愛読しているのが沢木耕太郎さんと堀江敏幸さん。
新刊が出るたびに買っています。
このたび刊行された堀江敏幸さんの『仰向けの言葉』には、ときの忘れものがエディションした大竹昭子さんのポートフォリオに寄稿してくださったエッセイも収録されています。
堀江敏幸『仰向けの言葉』
堀江敏幸『仰向けの言葉』
2015年
平凡社 発行
213ページ
21.8x15.6cm


駒井哲郎、菊池伶司、松本竣介、ギベール、ドアノー、モランディ、ビュフェ、ザボロフほか27篇。
「絵を観るとは、いったいどういうことなのか。絵について語るとは、どういうことなのか」
絵画、版画、彫刻、写真をめぐる、著者初の芸術論集
結局のところ、私は絵を見ているとき、その前にひろがる、沈黙もふくめた時間の堆積にあらがう人の影しか見ていないような気がするのだ。あるいは逆に、そのような空気を生み出す作品としか関係を結び得ないと言うべきだろうか。……一連の出会いは、なにも信じられない時代になお信じるものがありうることを示すために必要な、「存在のもつ神秘性」そのものだ。

(本書帯より転載)

目次(抄):
・いくつもの穴が掘られている土地―駒井哲郎
・北へ、あるいは、たどり着けないイマージュへ―菊池伶司
・二十六葉の記憶―清塚紀子
・三十七度七分と三十八度四分のあいだで―エルヴェ・ギベール
・深海魚の瞳―サイ・トゥオンブリー
・曇天の村道を行くアヒルの数を記すこと―鬼海弘雄
・近くて遠い場所から―ロベール・ドアノー I
・レンズの半過去形で―ロベール・ドアノー II
・記憶の山水画―高田美
・灰白質のありか―鈴木理策
・見えているものを夢想する人―ダレン・アーモンド
言葉はそこからはじまった―大竹昭子
・凪と爆風―木村尚樹
・なにが聞こえてくるのかは、だれにもわからない―松本竣介
・夢想の回転軸―吉村誠司
・樹木の高さの想い―棚田康司
・固くて柔らかくて白いものを投げあげる―内藤礼
・日々の散積貯蔵倉庫―ジョルジョ・モランディ
・継ぎ目に沿って埋められているもの―ベルナール・ビュフェ
・いつもおなじ入射角の光を見つめて―アルベール・アンカー
・如何なる眉毛の下に―猪熊弦一郎
・オリーヴの枝の蝸牛―瀧口修造
・箱の前に立つ私たちは、みな限りなくひとりになる―ジョゼフ・コーネル
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駒井哲郎鬼海弘雄ロベール・ドアノー大竹昭子松本竣介瀧口修造、ジョゼフ・コーネルなど私たちが深く敬愛する作家たちに寄せる文章が多く、枕頭の愛読書がまた増えました。
夜の会話
大竹昭子ポートフォリオ
Gaze+Wonder NY1980』より
「夜の会話」

駒井展082010年10月25日
資生堂ギャラリー
『駒井哲郎作品展 福原コレクション 生誕90年ー闇と光のあわいに』オープニングにて
左から亭主、堀江敏幸さん、社長、尾立麗子