野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」 第13回

ART SANTA FEを終えて

サンタフェでのアートフェアに出展させて頂き、帰国して一ヶ月が経ちました。
現地のお客様からは良いお言葉をたくさん頂く事ができ、一定の評価は得られる事ができたように思います。
この会場であなたの作品が一番素晴らしいとのお言葉も何人かの方から頂く事もでき、とても嬉しかったです。
ただ、出展した作品2点は今春と昨年完成させたもので、以前よりも客観視できる自分の作品に若干の甘さも見え、他の作家の力のある作品などを観て、まだまだ全然力不足だという事も改めて感じました。

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ただ、それは漠然と凹むというものでは無く、ちゃんと感じる事ができるものなので、自信を失うものではありませんでした。むしろ、やるべき事が以前よりもはっきりと見えたように思いました。

美術は他者と比べるものでもなく、競うものでも無いとは思いますが、どうせ人生を懸けるのならば、あなたの作品はこの会場で、いや世界で一番美しいと、いつか何処かで言われてみたいと思うので、これからも、命ある限りコツコツとがんばりたいと思います。

また、アメリカは過去にハワイとニューヨークは訪れた事がありましたが、その国土の広大さを目の当たりにしたのは今回が初めてでした。
それは狭い日本とあまりに違い過ぎて、そりゃ文化もモノの考え方や感じ方も違うよなと思い知りました。

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アメリカ滞在の最後に車で荒野の一本道を走り、スタッフの皆さんと一緒にゴーストランチなどを訪れる事ができ、そこで見た音さえ届かない遠くの雷まで見渡せるような広大な景色は、乾いていながらも美しかったですが、帰国して、夕暮れの電車から見た、成田空港から東京までの千葉県の田園風景は、乾いた土地にいた反動もあってか、トトロでもいそうな位本当に緑が豊かで美しく感じました。

狭い日本だからこそ、京町家の庭のように、狭い中でどれだけ美を表現できるのかという文化が栄えたわけで、アメリカ人のお客さんが京町家の庭を見て「パラダイスや」と言うのは、あの乾いた広大な国から来たからこそ逆に感じる、濃縮された美なのだと思います。
そんな日本らしい美しさも今後はもっと作品制作にも意識していければと思います。

そして、改めまして今回のART SANTAFE出展メンバーに選んで頂き、何から何までお世話になったときの忘れものの皆様に心より感謝致します。
人生で一度行ける機会があるかどうかもわからないような、遠くアメリカ ニューメキシコ州の土地を訪れる事ができ、色々な事を感じ、自分の目であの広大な風景を見る事ができた事は、必ず今後の作品制作に生きると思います。

次は10月の韓国ソウルでのアートフェアKIAFにときの忘れものさんのブースから、4年連続4回目の出展をさせて頂く予定ですので、作品制作がんばります。
のぐち たくろう

野口琢郎 Takuro NOGUCHI(1975-)
1975年京都府生まれ。1997年京都造形芸術大学洋画科卒業。2000年長崎市にて写真家・東松照明の助手に就く。2001年京都西陣の生家に戻り、家業である箔屋野口の五代目を継ぐため修行に入る。その後も精力的に創作活動を続け、2004年の初個展以来毎年個展を開催している。

●今日のお勧め作品は、野口琢郎です。
20150815_noguchi_23_HANABI-9野口琢郎
「HANABI #9」
2011年
箔画(木パネル、漆、金・銀・プラチナ箔、石炭、樹脂、透明アクリル絵具)
91.0x72.7cm
サインあり


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◆野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。