ForestByobu (Fragrance)_600出品No.24)
内間安瑆
「FOREST BYOBU(FRAGRANCE)」
(森の屏風<芳香>)
1981年
木版(摺り:米田稔)
Image size: 76.0x44.0cm
Sheet size: 83.6x51.0cm
Ed.120 Signed
*現代版画センターエディション


AUG 17, 1981
綿貫さん
東京での個展の際御激励いただきありがとうございました。
ストライプハウスの五人展(*)には8点出品です。そのうち「森の屏風(芳香)」は新作で、お願いできましたら現代版画のEditionにしたいと思います。すでに米田さんには御連絡しています。版木は二、三日のうちに彼の方え発送する予定です。いづれ試摺りが出来ましたら綿貫さんへ御通知があると思いますが、その前には米田さんと私との間で二、三回のお手紙のやりとりを予測しています。始めてのことですのである程度の手間がかかるものと想像しています。
何分、よろしくお願いします。

内間安瑆

*「今日の作家5人展(内間安瑆、重田良一、澄川喜一、堂本尚郎、松本旻)」
1981年9月8日~9月30日、ストライプハウス美術館

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SEPT 14, 1981
綿貫さん
お便りありがとうございました。
このたびのエディションに関して僕の考えは次の通りです:
・現代版画センターとの始めてのエディションですのでお宅の條件に出来るだけ合せたいと思います。
・「森の屏風(芳香)」の売値は6万にしましたが、このPRICEは保っていただけるでせうか。
・僕の希望をあえて申し上げれば…最近ドルEXCHANGE RATEの條件が変ってきましたので(ドル高)120枚のエディションにしていただけたらと思っていますが如何でせうか。
以上です。
版木は御通知しました通り、目下、米田さんのところに行っています。米田さんからはまだ御連絡ありませんが、彼のことですからきっと試摺りと取り組んでおられることでせう。

内間安瑆

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SEPT 24, 1981
綿貫様
お手紙ありがとうございました。
ゆきちがいに私の手紙も着いたと思います。お忙しいところストライプハウスの展覧会にいらしていただきありがとうございました。友人からの知らせで五人展の展示が良かったと言ってきています。
さて、エディションの件について…
米田氏からはまだお便りありませんが試摺りをお進めしていること、想像しています。
ストライプハウスに出品した「森の屏風(ヴァミリヨンブレンド)」のエディションの可能性に関してですが、現在まで五、六枚のAPしか摺っていませんので、勿論、この作品も結構です。また、これに関連した作品で「森の屏風(秋―芳香)」(同封スライド御参照)も同じく数枚程度のAPで、版画センターのエディションとしても可能です。この作品は養清堂のときに発表したものでこれと上記の「森の屏風(ヴァミリヨンブレンド)」(どちらも各々5万円の売値です)とはいいペアになるものと思います。もしお好みでしたらお知らせ下さい。
サインのことに関しては、今のところ結論はありませんが往復の郵送は不便でそちらへ行った方が賢明かも知れません。その場合、何点かまとめたエディションが用意されていた方がデザインよいと思います。
米田氏にもいづれはこちらへお出かけいただこうとも思っています。プロダクションが一応軌道にのってからのことで、それまでにはこちらの準備のタイミングも整えたいと思います。
何分、今後共よろしくお願いします。

内間安瑆

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上掲の3通の手紙は1981年夏から秋にかけてNYの内間先生から送られてきたもので、ご遺族のお許しを得て、公開させていただきます。
亭主は現代版画センターを主宰していた1974~1985年の間に90作家724点のエディションを刊行しましたが、この内間先生の『Forest Byobu(Fragrance)』(74.3×44.0cm Ed.120)は460番目のエディションとして1981年12月に発表しました。
技法については先生ご自身が<版木=Birchベニア板8面、絵具=Winsor-newton,Gouache水彩絵 具、摺り度数=約45度摺、用紙=福井県岩野氏による生漉奉書ド-サ引き、以上をバレンと木版用絵具刷毛を使用して伝統的手摺りの方法で制作>と書かれています(『版画藝術』第38号)。

内間先生が1977年頃から始まる「色面織り」の方法を深化させ、遂に『Forest Byobu』シリ-ズに行き着いたとき、自分は木版で遂に独自の表現を獲得したのだという自信にみち溢れていました。その気品に満ちた作品に接して、ぜひエディションしたいと依頼すると、「いまは次から次へと新しいイメ-ジがわいて来て、それを彫り込んで数部を摺り上げると、直ぐ次の作品に取り掛かるんだ、とても君の希望する50部、100部を摺っている時間はないよ」と一度は断られたのですが、それなら日本で摺り師を用意しますから、版木を送ってくださいと懇望した結果、初めて他人(摺り師)との協働による『Forest Byobu』の唯一のエディションが実現したのでした。
亭主が手がけた724点のエディション群の中でもベスト10に入れたい会心の作でした。

上掲の手紙からわかるように、この後も摺り師との協働による現代版画センターのエディションに先生は積極的でいくつかの試作も送ってくださったのですが、突然の病がすべてを中断してしまいました。
18年にわたる闘病生活の後、2000年5月にお亡くなりになり、献身的に内間先生を支えた俊子夫人(旧姓・青原俊子さんも素晴らしい作家でした)も後を追うように2000年12月に亡くなられました。
見事な摺りで内間先生と私たちの期待に応えてくださった摺り師の米田稔さんも既に鬼籍に入っており、老いた亭主としては『Forest Byobu』連作のほとんどが僅か数部づつしか摺られなかったことが今でも残念でなりません。

2014年9月12日付ブログ用画像_08
1982年
内間安瑆先生と俊子夫人


“森の屏風”について

内間安瑆


 “森”というのは、ニューヨーク市のアトリエより、車で一時間、北にある仕事場の窓から見えるもので、四季のタペストリーを展開してくれる。
 物体と空間、主と従の統合——色面の組み合せを、織りたい。各色の位置づけと奥行きに秩序をとるため、必然的に構成建築が、縦パネル式のものになり、屏風の連想に到る。
 画面の二次元的性格を保つため、奥への空間ポケットを出来る丈浅く、焦点を外へ広げ、色合の相互関連によって、それらの呼吸、光と空気、更に或る程度の流動性と、透明性がつかめれば、と思っている。
 外へ散る焦点が、再び中心へと向きつつある傾向が、ごく最近の仕事に現われつつある。その過程にチャレンジがまっている。

(現代版画センター機関誌『PRINT COMMUNI-CATION』78号[1982年3月]所収)

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内間安瑆(うちまあんせい)
2000年5月9日夕刻(現地時間)、米国ニューヨーク市の病院で死去。享年79。
1921(大正10)年、沖縄県出身の両親が移住した米国カリフォルニア州ストックトンに生まれる。1940(昭和15)年に来日、44年早稲田大学で建築を学び、絵画を独学する。戦後、木版画制作をはじめる。54年デモクラート美術協会の青原俊子を結婚。55年銀座、養清堂画廊で初個展を開催、日本版画協会会員となる。58年1月、東京銀座の養清堂画廊で泉茂、吉田政次と版画三人展、同年10月、同画廊で利根山光人、駒井哲郎、浜田知明等と「版画八人集」展開催。
59年アメリカに戻りニューヨークに住む。以後、日米両国での個展のほか、70年の第35回ヴェネチア・ビエンナーレ、72年のイタリアで開催された第2回国際現代木版画トリエンナーレなど、国際展にも出品をつづけた。しかし、82年に病に倒れ、以後制作は中断していた。代表作となった「Forest Byobu」(81年)にみられるように、多色木版画によって、色彩の豊かさと変化を、繊細な感覚で表現した。これは、浮世絵の伝統的な木版画技法を活用して、多色刷りの「色面織り」と称する独自の技法によって表現されたもので、米国、日本で高く評価された。

◎パブリック・コレクション
メトロポリタン美術館、ホイットニー美術館、東京国立近代美術館、ワシントン国会図書館、フィラデルフィア美術館、アムステルダム国立美術館、ホワイトハウス、ブルックリン美術館、ナショナル・ギャラリー、大英博物館、シカゴ美術館、ウォルセスター美術館、ホノルル・アート・アカデミー、ローゼンウォールド・コレクション、沖縄県立美術館、他。

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ときの忘れものの通常業務は平日の火曜~土曜日です。日曜、月曜、祝日はお問い合わせには返信できませんので、予めご了承ください。

◆ときの忘れものは2015年8月25日[火]―9月5日[土]「内間安瑆展」を開催しています(*会期中無休)。
uchima_DM内間の代表作となったのは、伝統的な手摺りで45度摺を重ねた〈森の屏風 Forest Byobu〉連作です。鮮やかな色彩のハーモニー、微妙なぼかしが入った色面が幾重にも重なる複雑な構成、多色にもかかわらず画面全体には静かな気品が漂います。1950年代の初期から80年代の Forest Byobu 連作まで、多色木版約20点ご覧いただきます。

●作家と作品については「内間安瑆の世界」をお読みください。
出品リストはホームページに掲載しました。
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◆ときの忘れものは「ART FAIR ASIA/FUKUOKA 2015」に出展します。
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会期:2015年9月4日(金)- 9月6日(日)
会場:ソラリア西鉄ホテル 11階
今回は老兵二人(綿貫令子、不二夫)で参加、瑛九、松本竣介、野田英夫、元永定正、磯崎新の作品をご紹介します。
詳しくはホームページをご覧ください。